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上海 一方的な物語に疑問

2019年01月10日

 上海には、戦前にユダヤ難民2万人が暮らしていた古い建物が残っている。上海を占領していた日本が、1943年に指定したユダヤ人の居住区だ。

 今ここに住む中国人のおじいさんは「オレはユダヤ人など見たことないぞ。政府はうそつきだ」と息巻くが、それもそのはず。戦後、米国やイスラエルなどに移って行き、上海に残った人はほとんどいない。

 居住区にある「ユダヤ難民記念館」を見学した。ウィーンに駐在し、ユダヤ人に大量のビザを発給した外交官、何鳳山(かほうざん)の活躍を詳しく説明している。日本については、通行証申請に来たユダヤ人に日本人役人が抜刀、ひげを切ったエピソードがことさら強調されている。

 横暴な日本人がいたのは事実だろう。移動は制限され、住環境も劣悪だった。それでも日本はユダヤ人虐殺などには加担しておらず、居住区では強制労働も行われていない。

 彼らが生き延びられた背景には、ナチス・ドイツとは一線を画す日本のユダヤ人政策、救助活動があった。「野蛮な日独」対「人道的な中国」のストーリーを一方的に宣伝する展示には違和感を感じた。 (浅井正智)

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