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上海 ほとぼり冷めてから

2019年01月16日

 イタリアのファッションブランド「ドルチェ&ガッバーナ」(D&G)の広告動画が、中国を侮辱したと問題になった直後の週末、上海市内にあるD&Gの店舗を訪れた。

 昼下がりの人出の多い時間帯だったが、客はゼロ。店の前で記念撮影をしている老夫婦がいたくらいだ。すぐ近くにあるシャネルなど別ブランドの店には多くの客が訪れ、入店制限もしているのに…。

 若い男性店員は「例のことがあってからずっとこんな感じ」と手持ち無沙汰の様子。がらんとした店内には異様な感じが漂う。「これからどうなるのか分からない」と不安も口にした。

 日本人の私は平気で入店できるが、中国人が入りにくいのはよく分かる。動画は中国人の自尊心を傷つけただけに、今、店に入ってだれかに写真を撮られ、ネット上で拡散されたら、袋だたきに遭うのは必定だからだ。買いたい人は、ほとぼりが冷めるのを待っているのだろう。

 「返金を求めてくる人はいるの?」と聞いたあたりで、相手は私が記者と気づいたようで、明らかに警戒している。「一人もいない」と言ったが、本当かどうか。 (浅井正智)