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パリ 水位見守る兵士の像

2018年05月08日

 年明けから大雨や大雪で公共交通機関が大幅に乱れたフランスのパリ。大雨で中心部を流れるセーヌ川の水位が増すと、注目を集める石像がある。シャンゼリゼ通りの凱旋門(がいせんもん)にほど近いアルマ橋の橋脚に沿って立つ「ズアブの像」だ。

 ズアブとは、フランスの植民地だった北アフリカで、19世紀にアルジェリア人らによって組織された軽歩兵連隊。増水すると石像を望む橋のたもとはさながら観光名所、市民が来ては写真を撮っていく。像のどこまで水が来たのかを見るためだ。

 「まだ膝あたりだから、大丈夫」。1月末の夕方、帰宅途中に立ち寄った男性(52)が写真を撮りながら言った。30年ぶりの高水位になった2016年は太ももあたりだったという。歴史をひもとくと、パリ中心部が水没した1910年は肩近くまで水が来た。

 日本ではなじみの薄いズアブだが、フランスに限らず欧州では知られた言葉であるらしい。写真を撮っていた男性によると「ゴッホにもズアブ兵を描いた絵が数枚あるんだよ」という。帰宅後に探した絵には見覚えがあった。「ズアブの像」が少し身近に思えた。 (竹田佳彦)