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パガニカ 希望を供するカフェ

2009年07月16日

 約300人が死亡したイタリア中部の大地震。震源地パガニカは、人口約7千人の高原の村だ。多くの建物が崩れた中で、小さなカフェが震災当日から店を開けていた。

 ガスが止まって食事は出せない。「閉店」の張り紙があった。それでも次から次へと村人がやって来て、エスプレッソやビールを引っかけた。

 住まいを失った男性客(29)がこぼした。「僕は(1980年にイタリア南部で発生した)イルピニアの大地震の被害にも遭ったんだ」。同じ年ごろの女性客は「今回の地震も運の悪いこの人のせいなのよ」と合いの手。

 ボケとツッコミのようなやり取りで、気力を保っているらしい。飲み物は無料。店主のジョバンニさん(37)は「こんな時、金を取る気になれない」と照れくさそう。

 地震の揺れで酒瓶がすべて落ちて割れてしまった棚に、ガラスのマリア像が無傷で残っていた。 (清水俊郎)