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カイロ 操縦慣れ 古妻に未練

2009年10月03日

 カイロのタクシーはたいていオンボロ車である。製造から30年たった車さえ珍しくないが、もうじき姿を消すことになった。

 排ガス抑制のため、製造から20年経過したタクシーを順次、新車にする方針を政府が決めたためで、既に切り替えが始まった。

 運転手は、政府の補助によって格安で新車を買える。これまで白と黒のツートンカラーで、パンダのようにも見えたデザインも変わり、新車の色はほとんど真っ白になる。

 従来の車に冷房はなく、夏は窓を全開にして排ガス混じりの生暖かい風を浴びた。内側の取っ手が壊れていて、降りる時は窓から手を伸ばして外から開けるドアも珍しくなかった。手間のかかる車だったが、なくなると聞くとちょっと寂しい。

 ある中年運転手に聞いたら、やはり複雑な心情らしい。「急に新しい嫁をもらえと言われてもなあ。長年一緒に苦労した女房にも愛着はあるんだよ」 (内田康)