2009年10月08日
パリの小学校の教壇に立つ機会をいただいた。教室に座っていたのは、新聞やテレビの役割について授業で学んだばかりという十歳児三十人。外国人記者の仕事を丁寧に説明するつもりが、五分間足らずで話が続かなくなった。緊張のあまり、もともと上手でないフランス語がいっそうしゃべれなくなってしまったのである。質疑応答に切り替えた。
「なぜ記者に?」
「人前でしゃべるのが苦手だから」
「この国に来て苦労しているのは?」
「フランス語」
それでも子どもたちは優しかった。私が気を取り直してひと言ふた言しゃべるたび「分かるよ」「大丈夫」とうなずいてくれた。
この夏、パリ市役所が住民に「もっと笑顔を」と呼び掛けている。景気後退で観光客が前年比17%減。外国人に無愛想なパリっ子のイメージを変えて巻き返そうとの企画だ。
私の小さな先生たちは、頼もしい戦力になるに違いない。 (清水俊郎)