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台北 会話の陰に潜む悲哀

2009年11月08日

 「日本人は本音を言わない」と指摘される。台湾の人はどうか。ある学者から聞いた。「デリケートな問題をあまり話題にしない」

 台湾住民の多くは、17世紀以降、中国の福建省などから移住し戦前に定住した「本省人」と、戦後、国共内戦に敗れて国民党とともに中国から逃れた「外省人」だ。

 普段、本省人や外省人を意識することはまずない。ただ、長らく続いた国民党独裁に対する歴史的な評価をめぐり、外省人は肩身の狭い思いをする。対中感情では双方が時折激しく対立する。

 外省人二世の学者は「外省人の中には、やむなく台湾に来た人もいるし、独裁政権の被害に遭った人もいる」と話す。

 しかし、政治的な問題を議論しだすと不愉快になるばかりだから「話さない」ことが体に染み付いたという。台湾の悲哀は、今も見えないところに潜んでいる。 (栗田秀之)