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モスクワ 行き過ぎ お互いさま

2009年11月19日

 「私の祖父もバカにするのか」。先日、ある記者会見で斜め前に座っていたロシア人の男性記者が突然、声を荒らげた。

 会見していたのは退役軍人を批判した記事を書き、愛国派団体の「脅迫」にあったというジャーナリスト。言論の自由を訴えつつ「旧ソ連の体制を支えた責任がある」と軍人批判を繰り返したのが、一部記者たちのかんに障ったらしい。

 「祖父は軍人ではないが、教師として祖国を支えた。それも悪いことなのか」とくだんの男性記者。別の女性記者は「退役軍人たちに謝罪してはどうか」と迫った。

 むろん、記者個人にも意見はあろうが、「取材は冷静、客観を旨とすべし」という常識は、この国では必ずしも通用しないようだ。

 ロシアでは政権によるメディアへの圧力がしばしば問題視されるが、問題があるのは政権の側ばかりではないのかもしれない。 (酒井和人)