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京丹後

京丹後 京都府 山陰の奇観や味 満喫

漁の終わりを待ちかねたように海鳥たちが飛んできた

漁の終わりを待ちかねたように海鳥たちが飛んできた

 漁の終わりを待ちかねたように、たくさんの海鳥たちが船の周りを飛び始めた。「おこぼれを狙っとるんです。でも、漁師の仕事の邪魔は絶対にしない。あとでちゃんともらえるって、分かっとりますからね」

 京都府京丹後市の竹野(たかの)漁港。西口敏明さん(67)の船で日の出前に出港し、定置網漁の様子を見学させてもらった。網を引き揚げると、サクラダイやホウボウ、ヒラメなどが、ピチピチばたばたと、おいしそうにはねた。

 これは、おもてなしプロジェクト「京丹後龍宮(りゅうぐう)の玉手箱」の体験プログラムのひとつ。漁師や旅館のおかみ、観光ガイドらが集まって企画、今春からスタートした。さまざまな体験ができる45のプログラムが用意されている。

 「浦島太郎が丹後の国の若者だったという言い伝えから名付けました」と、中心メンバーで旅館おかみの池田香代子さん(59)。「今回のプログラムは、玉手箱のように京丹後の自慢の人や物が、もくもくといっぱい出てきますよ」と続けた。

とれたての魚がそのまま旅館へと運ばれる

とれたての魚がそのまま旅館へと運ばれる

 海から揚がったばかりの魚は港から池田さんの旅館へ。早速、さばいてもらい、自分で握っておすしにして食べた。シャリの具合はプロと比べものにならないものの、漁師さんの顔の見える“とれぴちの魚”の甘みと歯応えは格別だった。

 この豊かな海の幸を育み、漁業を発展させた日本海の海岸地形は「山陰海岸ジオパーク」として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が支援する世界ジオパークネットワークに2010年、加盟認定された。人々の営みや文化と密接に結び付いた地質や地形をひとつの遺産として学び、楽しむのがジオパークの目的だ。

 山陰海岸ジオパークは、京丹後市の東端から鳥取市の西端まで、京都、兵庫、鳥取の三府県にまたがっている。京丹後市内の見どころを案内してくれたのは、観光ガイドとして活躍するまちづくりサポートセンター理事長の中江忠宏さん(72)だ。

 「ジオパークは4年ごとに審査がある。14年に再認定されたが、これからも気が抜けない。環境整備に加え、地元の人間がジオパークをしっかり理解し、観光客の皆さんに説明できるようにしなければと、頑張っています」と中江さんは言う。

 まずは、“鳴き砂”で有名な琴引浜へ。歩くと足元でキュッキュッキュと砂が鳴く。砂の下に岩盤が通っていて太鼓浜(ドラムビーチ)と呼ばれる場所では、ジャンプするとドンドンと音が響く。砂浜には水着で入る無料の露天風呂もあり、海水浴客に人気なのだとか。

風の強い日には鬼の叫び声のような音が聞こえるという立岩(右)=いずれも京都府京丹後市で

風の強い日には鬼の叫び声のような音が聞こえるという立岩(右)=いずれも京都府京丹後市で

 次は立岩。高さ20メートル、周囲約1キロ。1500万年前、地下のマグマが固まってできた。柱状に規則性のある割れ目ができた「柱状節理」も見られる。大きすぎて、岩というより小島のようだ。丹波の大江山で暴れた鬼が閉じ込められたとの伝説も。確かに鬼の1匹や2匹は閉じ込めていそうな、納得の迫力がある。「風の強い日や波の高い日には、鬼の叫び声が聞こえるんだとおじいさんに脅されてね。小さいころは、気味が悪くてそばを通れんかったですよ」と中江さんが話してくれた。

 その立岩を見下ろす高台にあるのが大成古墳群。古墳時代後期(6世紀末から7世紀初め)にかけての豪族のものと思われるという。この高台は、12万年前の地殻変動で海底が隆起してできた海岸段丘。遊歩道が整備され、日本海を一望しながら気持ち良く歩くことができる。

 ほかにも海面からそそり立つような屏風岩、風光明媚(めいび)な丹後松島などの名所を巡っていたら、あっという間に2時間がすぎた。海岸沿いを車で走っているだけで海風が心地良く、体と心が「ぐーん」と伸びたような気がした。

 文・写真 四方さつき

(2015年6月19日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
京丹後市へは、JR京都駅から山陰線の特急で約2時間30分。
車は、京都市から京都縦貫道(7月に全線開通予定)、鳥取豊岡宮津自動車道を経由し、与謝天橋立ICから約25分。

◆問い合わせ
京丹後市観光協会=電0772(62)6300

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★京丹後龍宮の玉手箱
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内容により料金は異なる。
事務局=電0772(75)2639

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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