
空がほんのり赤く染まり、夜が明け始めた鞆の浦。きらめく港に漁船が戻ってきた=広島県福山市鞆町で
夜明け前、細い路地を上がり白み始めた弓状の湾を高台から見下ろす。朝日が空を赤く染めだすと、きらめく水面(みなも)に線を引いて漁船が戻ってきた。忙しそうに水揚げする漁師たちの周りを、トビやカモメがおこぼれにあずかろうと潮風に舞う。情緒あふれる鞆(とも)の浦(広島県福山市鞆町)の夜が明けた。
瀬戸内海のほぼ中央に位置する「潮待ち、風待ちの港」。東西の潮流がぶつかる海上交通の要衝で、古来潮の満ち引きを待つ船が集まったことから、こう呼ばれた。その静かな漁師町が今脚光を浴びている。海沿いのがけの上に住む少年と魚の女の子との心の交流を描いた宮崎駿監督のアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の影響だ。
かつてここを訪れた宮崎監督が気に入り、2005年春に古民家を借り切って約2カ月間滞在。港町を散歩したりして過ごしながら、同映画の構想を練ったという。
鞆の浦観光情報センター(鞆町鞆)で見つけたポニョマップなるものを片手に、名監督になった気分で町並みを散策すると、海沿いにある保育園やスーパーなど、映画をほうふつとさせる光景が次々と現れた。
監督の描いたスケッチが設計図の基となった旅館「御船宿いろは」ののれんをくぐると、運営する民間非営利団体(NPO)「鞆まちづくり工房」代表の松居秀子さん(58)が出迎えてくれた。「監督は鞆の浦がモデルとは言っていないが、海に沈むシーンは高台から見たこの町にそっくり。遊び心が感じられました」と、作中に込められたメッセージを受けとめた。
「例年、年配の旅行者が多いが、昨年7月の映画公開以降から小さい子ども連れの家族や若いカップルが目立つようになりました」とマップを製作した観光情報センター事務局長の片岡明彦さん(45)。2倍近くに増えたという観光客に顔をほころばせ「これを機に歴史にも目を向けてくれれば」と期待している。




















