
山寺の最上部からの絶景。左は五大堂
1015段の石段を上りつめ、山形市の「山寺」のほぼ最上部、「五大堂」に立った時、眼前に広がる大パノラマのすばらしさは、苦行の疲れをすべて忘れさせてくれた。
足元に立谷川。川をはさんで門前町が広がる。左前方の山あいに沿って集落が延び、二口峠に続く。そこを越えると、宮城県だ。
320年前、俳聖・松尾芭蕉も同じ光景を目にしたのだろうかと思うと、何とも言えぬ満足感に充(み)たされた。
「閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉(せみ)の声」
三十数年前、初めて「奥の細道」に触れた時から、いつか訪ねてみたいと念願していた。
「山寺」という味わいのある響きは通称で、正しくは「宝珠山立石寺(ほうじゅさんりっしゃくじ)」。天台宗の霊場で、860年、慈覚大師(円仁)による創建と伝わる。
芭蕉は奥の細道をたどる途中、尾花沢からわざわざ南へ足を向け、この地を訪ねたという。季節は7月中旬ごろ。そして、希代の名句を残した。
この句をめぐる解釈はさまざまだが、「やかましいばかりのセミも、心澄ませば静寂に聞こえる」という禅的境地にとどまらず、究極の死生観にまで踏み込んだ「閑寂さ」が詠み込まれているという。
その境地に近づこうと、石段上りの苦行にチャレンジした。




















