四国の高松港を出たフェリーはなだらかな讃岐の島々を遠くに見つつ、瀬戸内の海原を進む。甲板に出ると風は冷たいが、気持ちいい。「このへんの島はやわらかい形しとるでしょ。逆の岡山側はごつごつしとるんよ」と一緒に乗り込んだ地元女性。約1時間で直島(香川県直島町)の宮浦港に到着した。
直島は周囲16キロ、人口約4000人の小さな島で、自転車で見て回るのにちょうどよい。近年は廃棄物リサイクル施設を建設するなど循環型社会のモデル地域を目指している。一方で、島には10年以上前から宿泊施設や美術館が整備され、自然と一体になった「現代アートの島」として海外から訪れる人も多い。
海沿いに散歩に出た。小高い丘で3枚の正方形の板が並んだアートを見つけた。無機質なステンレス素材だが、海を背にして風景になじんでいる。さらに歩を進めると、目の前には真っ赤な夕日。吸い込まれそうな美しさにしばし見とれた。その日は島で宿泊した。
翌日はレンタサイクルで「地中美術館」や古民家など7カ所とアーティストの作品が調和した「家プロジェクト」へ。各拠点はそれぞれ自転車で5~20分だ。
地中美術館は景観を壊さぬよう地面の下に造られ、入り口のコンクリート壁以外に建物は見当たらない。中に入り、どんどん地下へ下る。薄暗い室内から吹き抜けになった開口部を見上げると青い空がまぶしい。
館内に展示されている3作家の作品のうち、クロード・モネの5つの作品は真っ白で広大な空間に展示され、見る人を異次元に連れていく。自然光を取り入れているので、太陽の向きや天気によっても作品の印象が変わり、昼間と夕刻に見た「睡蓮(すいれん)」の、色を塗り替えたような空気感の違いにはドキリとさせられた。
家プロジェクトのある本村地区への道のりでは、人の2、3倍の高さがありそうな巨大なごみ箱のアートを発見した。大きさに思わず笑ってしまう。森の中や丘の上、海岸などにひょっこり現れるアートを見つけながら行くのは、宝探しのようで楽しかった。
家プロジェクトでは、それぞれの家屋でスタッフが制作エピソードや作品の特徴などを教えてくれる。
真っ暗闇の中で徐々に光を感じていく体験型のユニークな作品では、自分の手さえも見えないほどの暗闇に恐怖さえ覚えた。それぞれの家屋でのアート体験は非日常の連続だ。




















