鳥取県の東南部、智頭(ちづ)町の「ひな荒らし」や鳥取市用瀬(もちがせ)町の「ひな流し」は旧暦の3月3日に行われる。今年は新暦4月16日。春遅い千代川(せんだいがわ)上流域の“ひなの里”でも、そのころ花の盛りを迎えるという。
トンネルの連続する智頭急行で岡山と接する県境を越えると智頭はすぐ。中国山地を発した千代川が町中を横切って、日本海に向かう。大きな門構えの屋敷や古風なたたずまいの町屋、和洋折衷の館、火の見やぐら。因幡(いなば)街道と備前街道が重なる要所で物資が集積し、藩政以来近代まで繁栄したことがよく分かる。
その象徴が近代和風建築の「石谷家住宅」で、昨年12月、国の重要文化財に指定されたばかり。部屋数40余り。智頭町に寄贈され、一般公開されている。その豪壮な屋敷内で1月末に、ひな飾りを始めた。
巨大な梁(はり)組みの母屋の大玄関に緋毛氈(ひもうせん)を敷いた7段飾りが据えられた。自在かぎのいろり、たたきの土間に炊事場まであり、杉など山林材の商談の場でもあった大空間だから見事な7段のひな飾りでさえ小ぶりに見える。ほかにも何部屋かに石谷家に伝わるひな人形や町内から寄せられた内裏びなが、展示用の一つの蔵にもひな道具、市松人形などが飾られている。
「久しぶりにうちでも飾ってみようかしら」と年配の来訪者。いくつになってもおひなさまは女心を刺激するものらしい。彼女は地元出身ということから「ひな荒らし」を懐かしむ。節句当日、お供えやごちそう目当てに家々を回る。そして「ハロウィーンみたいに。子どもの世界はどこも共通ですね」とも。




















