今年オープンした川棚温泉交流センター=山口県下関市豊浦町で
「山口県の川棚(かわたな)温泉を知っていますか」。昨年秋に名古屋出身のピアニストで、パリにあるエコール・ノルマル音楽院教授の中沖玲子さんから聞かれた。「そこにできた新しいホールのこけら落としで演奏するんです」。そのホールは、日本人留学生も多いエコール・ノルマル音楽院を創設した世界的なピアニスト、アルフレッド・コルトーが晩年に来日した折、川棚温泉が気に入った縁で完成したという。「いいところらしいですよ」の言葉に誘われ、1月の演奏会は行けなかったが、コルトーが愛した“日本”を訪ねた。
川棚温泉へ向かう山陰線は1時間に1本。海、山に近く、自然に抱かれた温泉街は思っていたよりもこぢんまりとして静かだった。時間もゆったり流れている気がした。
下関の奥座敷といわれる川棚温泉の歴史は約800年と山口県最古で、江戸時代には城下町の萩と下関を行き来した毛利の殿様の御殿湯があり湯治客でにぎわった。湯は透明の塩化物泉。昭和に入ると放浪の俳人、種田山頭火がこの地を気に入り100日ほど滞在。「花いばらここの土とならうよ」など、随所に建てられた句碑から山頭火の川棚への思いがうかがえる。




















