シラビソなどの常緑針葉樹の間を縫う乗鞍高原の散策道を歩いていたら、弾むように下って来た夫婦連れのトレッキング客とすれ違った。「良かった。最高。いろいろな名瀑(ばく)を見てきたが、これほどのスケールを楽しめる滝はほかにない」と興奮気味。期待に胸が躍り、自然と歩くペースが速くなった。つり橋を渡り、所々に岩が露出した斜面を足場を選びながらひと登りすると、息をのむ圧倒的な光景が眼前に現れた。
名勝「三本滝」は「日本の滝百選」の一つ。三つの沢がそれぞれ落差50~60メートルの滝になり、直下で流れが一つに合流している。並んで見える三つの滝の右側がクロイ沢の滝。清流が黒色の溶岩上をなめるように落ち、華麗なカーテンのようだ。中央の本沢の滝は直線的に落下する豪快な姿。左奥にある無名沢の滝は木々に隠れるようにひっそりと流下している。
滝つぼ近くから仰ぐと、ごう音とともに激しく巻き上がる水煙に雲間から漏れる西日が反射し、まるで後光が差しているような荘厳さにうっとり。乗鞍信仰の修験者たちが行をしていた神聖な場所だったということもうなずけた。近くの「三本滝レストハウス」で店番をしていた黒岩禎富(ひろみ)さん(46)は「例年より上流部の降雪が多かった分、今年は滝の水量も豊富で見応えがある」と話した。
乗鞍高原は、火山である乗鞍岳から流出した溶岩が、標高1200~1800メートルにかけて形成した溶岩原だ。乗鞍岳は3026メートルの主峰(剣ケ峰)のほか、いくつかのピークがあり、2872メートルの摩利支天岳頂上には旧乗鞍コロナ観測所がある。乗鞍高原を通り長野、岐阜の県境を越えて「乗鞍エコーライン」が畳平へ通じている。県境で標高2716メートル地点を通る。岐阜県側から畳平への道は「乗鞍スカイライン」。二つの道ともマイカーは制限されている。




















