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逆さ富士

逆さ富士 静岡県 湖面も染まり「最高!」

茜色に染まった富士山と田貫湖面に映った逆さ富士

茜色に染まった富士山と田貫湖面に映った逆さ富士

 茜(あかね)色に染まった富士山と、鏡のような湖面に映った逆さ富士。すっきりと晴れ渡った風のない静寂の中で、至福の時がすぎていった。

 静岡県富士宮市の田貫(たぬき)湖畔にある小さなテラス。湖は富士山の西に位置し、周囲4キロほどの人造湖。戦後、農業用ため池として造られた。岸辺を一周する遊歩道が整えられ、テラスも遊歩道の一画に。その正面に富士山がどっしりと座る絶好の眺望スポットだ。

 年の瀬も近い師走。東京を出て午後3時すぎ、テラスに着くと太陽は西に傾いて富士山を照らし、六合目まで雪をかぶった富士山が、雲一つない冬空に凜(りん)として輝いていた。

 到着した時、逆さ富士はさざ波で揺れ、形がはっきりしなかったため、風が収まるのを待った。ほどなくして気持ちが天に通じたのか、風がやむと湖面の揺れがとまり、綿帽子をかぶった富士山が壮麗な姿を浮かび上がらせた。「すごい」、「最高っ」-。テラスにいた写真愛好家から歓声が上がった。

 太陽が沈むにつれ、富士山全体が濃い茜色に染まった。地元では「紅(べに)富士」と呼んでいる。湖面に映る逆さ富士のほうが幾分、濃い赤みを帯びているように思えた。時間にすれば十数分間。日没とともに色は失われ、鉛色に変わっていった。

 三脚を据え撮影していた米国人写真家のデーブ・ヒグネットさん(56)は「いい一日になった」と感動した様子。日本の景色に魅せられ、京都、奈良、富士山などの撮影旅行を続けているという。

 天候を気にしていたテラスそばにある宿泊施設、休暇村「富士」の嶋田哲也さんは、「今日は久しぶりに天気に恵まれました。ラッキーでしたね」と笑顔を見せた。

 この日は、さらにラッキーが続いた。満月をややすぎた明るい月が昇り、湖面に映った。深夜になっても無風状態。月が中天に昇ったので、寒さをこらえてテラスへ出てみた。湖面には、青白い月明かりに浮かび上がった逆さ富士が神秘的な姿を映していた。

 田貫湖は、「ダイヤモンド富士」を望む場所としても知られる。ダイヤモンド富士は、富士山の山頂部と太陽が重なってできる光の現象で、太陽がダイヤモンドの輝きのように美しく見える。ここでは毎年4月20日と8月20日のそれぞれ前後3日間だけ見られ、シャッターチャンスは10秒もない。今年も4月20日前後の同休暇村は、すでに多くのカメラマンらの予約でほぼ満室という。

 
落差約25メートルの名瀑「音止めの滝」には虹がかかった=いずれも静岡県富士宮市で

落差約25メートルの名瀑「音止めの滝」には虹がかかった=いずれも静岡県富士宮市で

 翌日、田貫湖から車で十数分の「白糸の滝」と「音止めの滝」へ。好天に恵まれ、2つの名瀑(めいばく)には虹がかかっていた。

 富士宮市の隣町、山梨県富士河口湖町に2010年4月にグランドオープンした「西湖いやしの里 根場(ねんば)」へも足を延ばした。かつて台風で壊滅的な被害を受けた茅葺(かやぶ)き民家20棟が再現されている。

 日本一の優美な山を望み、日本の原風景をよみがえらせた里が、静かなたたずまいを見せる富士山麓。国内はもとより、海外から訪れる人たちをも引き付けて魅了する“オーラ”を放っている。

 文・写真 草間俊介

 (2011年1月7日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
田貫湖(休暇村富士前)まではJR身延線富士宮駅からバスかタクシーで。
車なら東名高速道路富士ICから西富士道路経由で約50分。

◆問い合わせ
富士宮市観光協会=電0544(27)5240、
休暇村富士=電0544(54)5200

おすすめ

西湖いやしの里 根場

西湖いやしの里 根場

★お宮横丁
富士宮やきそばの老舗「すぎ本」など、富士宮市のB級グルメ店が集まる。
午前10時~午後5時半。

★西湖いやしの里 根場
こんにゃく懐石や手打ちそばなどの食事や紙すき体験などができる。
入館料大人350円、小中学生150円など。
3月までは午前9時半~午後4時半、水曜日休館。
電0555(20)4677

★ニジマス
富士宮市は富士山の伏流水を利用してニジマス養殖が盛ん。
市単位では日本一の生産量。

★富士田貫湖温泉
休暇村「富士」が昨年2月、温泉の掘削に成功し、4階に大浴場を設置。
大浴場の正面に富士が見える。
日帰り入浴は火曜日を除く午前11時~午後2時、大人650円、子ども300円。
宿泊客優先で制限されることも。アルカリ単純泉。

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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