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ボルドー

ボルドー フランス シャトーで至福の一杯

落ち着いたたたずまいのサンテミリオンの町と遠くまで広がるブドウ畑=いずれもフランス・ボルドー地方で

落ち着いたたたずまいのサンテミリオンの町と遠くまで広がるブドウ畑

 どこまでも広い青空の下、一面の緑が光るブドウ畑は、朝早くから人でにぎわっていた。等間隔に整然と並ぶ木から、つみ手が果実をひと房ふた房、はさみで切り取って収穫する。つやめいた紫色のブドウを満載して、トラクターが次々と醸造所へ向かっていった。

 昨秋のフランス南西部。大西洋にほど近いボルドー地方一帯は、ローマ時代から港を拠点に交易で栄えた町で、現在はこの国最大のワイン生産量を誇る。ボルドー市から「グランクリュ(特級)街道」の通称を持つ県道を北上すれば、マルゴー、オー・メドック、サンジュリアンへ。南下すればペサック、グラーブへ。東へ向かえばサンテミリオン-と、名だたるワイン産地が密集している。

 車で走り抜けると、沿道には数えきれないほどのシャトー(醸造元)が次々と現れる。ラベルにも描かれる優美な建物を観賞し、醸造所やカーブ(貯蔵庫)で造り手たちの話に耳を傾け、試飲ルームでルビー色に輝く液体を飲み干す。五感でワインを味わうシャトー訪問は、ボルドーならではの観光だ。

 
ブドウの色や甘さ、粒の大きさを見て房をより分ける人

ブドウの色や甘さ、粒の大きさを見て房をより分ける人

 畑を歩くと、足元の土は小石だらけでやせていた。ブドウの粒は食用よりもはるかに小さく、芳醇(ほうじゅん)なイメージにはほど遠い。サンジュリアンで案内役のマダムに印象をそのまま伝えると、「じゃあ、食べてみれば」と促され、枝からもぎとった1粒を軽くかむ。驚くほどに甘い。「これが自然の恵みなの。2010年は色づきも甘みもまずまずね」と笑って説明してくれた。

 オー・メドックの代々一族だけで経営する小さな造り手のカーブでは、前年に仕込んだワインをたるから振る舞われた。本来、発酵途中だと飲めたもんじゃないらしい。ところが、「2009年は特別。今の時点で十分おいしい。こんなこと初めてだよ。2011年秋の出荷までにすごいワインに育つよ」と醸造担当の男性が興奮気味にしゃべった。

 
「シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン」のセラー。たるの中でワインを1年以上、熟成させる=いずれもフランス・ボルドー地方で

「シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン」のセラー。たるの中でワインを1年以上、熟成させる=いずれもフランス・ボルドー地方で

 ペサックの名門シャトーでは、住宅地が続く中に突然畑が登場してくる。さらには畑の真ん中を鉄道が横切る。「こんな場所で高級ワインが生み出されるなんて」と不思議がっていると、従業員のレティシア・デュボさんから「シャトー創立は16世紀。畑はその当時からあるの。町ができたのはここ数十年のことよ」と歴史を誇る言葉が返ってきた。

 心ゆくまでシャトー訪問を楽しんだ後は、ユネスコの世界遺産に指定されている町、サンテミリオンで過ごすことにした。

 11世紀、石灰石の岩をくりぬいて地下に造られたモノリット(1枚岩)教会は、世界でも類をみない貴重なランドマーク。英国とフランスとの百年戦争(1337~1453年)の時に壊されたままという壁も。かつては英国領にもなり、スペインの聖地へ行く巡礼者が数多く訪れた土地。歴史の断片があちこちに残る町は、ぶらぶら歩いているだけでも、中世にタイムスリップした気分になる。

 急な坂道を上って教会の裏手に回り、眺めのいいテラスに立つ。眼下には、すすけた感じの石造りの家がびっしりと並び、その間を細い石畳の道が血管のように通っている。建物の向こうに、遠くまで広がる緑が見渡せる。ブドウ畑の海に町ごと浮かんで揺られている錯覚にとらわれそうだ。

 町中の広場で、この旅最後の一杯をかたむける。ワインの甘い香りとともに、今回見聞きした光景が1つ1つ頭の中で鮮やかによみがえり、「至福」という言葉をかみしめた。

 文・写真 坂口千夏

 (2011年1月28日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
成田、羽田、関西国際空港からパリのシャルル・ドゴール空港まで直行便で約12時間余。
ボルドー市へは、パリから飛行機で約1時間、列車(TGV)で約3時間。

◆問い合わせ
フランス観光開発機構=電03(3582)6965=や
ボルドー・ワイン委員会は、日本語ホームページで基本情報を提供している。

おすすめ

ランタンダン

ランタンダン

★シャトー巡り
個人で訪問する場合、事前に電子メールや電話で予約を入れるのがマナー。
試飲は無料の所も多い。
移動手段は列車もあるが本数が少ないため、ボルドー市でタクシーを
チャーターするのが無難。8時間で350ユーロ(約4万円)程度。

各町村のワイン案内所「メゾン・デュ・ヴァン」では、
当日訪問できるシャトーなどを調べてくれる。英語も通じる。
ボルドー市観光局主催のバスツアー(半日、1日コース)も
ほぼ毎日、実施されている。

★プチトラン「ぶどう畑電車」
サンテミリオンの町や畑などを、遊園地で見かけるような
白い小型列車で手軽に一周する。
所要時間35分。1人6ユーロ(約700円)。

★ランタンダン
ボルドー市内でも有名なワインショップ。
4層分の高さの吹き抜けに、ワイン棚が螺旋(らせん)を描くように
連なった内装が特徴。ボルドー地方の良質なワインが厳選されている。

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