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豊岡市

豊岡市 兵庫県 威容誇る大地の息吹

規則正しくしなやかな曲線を描く「青龍洞」。自然の造形美が訪れる人々を魅了する

規則正しくしなやかな曲線を描く「青龍洞」。自然の造形美が訪れる人々を魅了する

 日本海に面した兵庫県北部の但馬(たじま)地方の中心都市・豊岡市。JR豊岡駅から城崎(きのさき)温泉方面に車で8キロほど走ると、豊岡盆地の中央を流れる円山(まるやま)川右岸の山肌に、壮大な大地の息吹を感じさせてくれる玄武岩の洞窟「玄武洞」が威容を誇っていた。

 幾重もの板状や柱状の岩石が、縦、横、斜めに整然と走り、見る者を今にものみ込みそうな迫力だ。160万年前の火山活動で流れ出たマグマが冷えて固まる時、規則正しい割れ目を作り出した柱状節理の岩石。一帯には規模や形の異なる5つの洞窟が点在する。洞窟は、石切り場だったころの採掘跡だ。

 その中で最も大きいのが、高さ35メートル、幅70メートルの玄武洞。「玄武岩」の学名は、この洞にちなんでつけられた。力強い玄武洞以上に目を奪われたのが、青龍洞(高さ33メートル、幅40メートル)だ。青みがかった灰色石柱の束が、伸び上がるようにしなやかな曲線を描き、手前の池に映る姿は天に昇る竜を連想させる。脇の斜面からは、六角形の石柱がところてんを押し出して固めたように突き出し、自然の怪しげな造形美に魅せられた。

 
「コウノトリの郷公園」の公開ケージで、餌をついばむコウノトリ

「コウノトリの郷公園」の公開ケージで、餌をついばむコウノトリ

 豊岡駅から東へ7分ほど離れた谷あい。人工繁殖を通じてコウノトリを自然に返す拠点施設「県立コウノトリの郷公園」を訪ねた。この日は鳥インフルエンザ感染予防のため、1月下旬から中止されていた一般公開が2カ月ぶりに再開。公開ケージには市民らが詰めかけ、純白の体に黒い風切り羽を広げ、とがった大きなくちばしで餌をついばむ端正な姿に、「元気だった」と温かい声をかけていた。

 1971(昭和46)年、国内最大の生息地だった同市を最後に、幸福を運ぶといわれる野生のコウノトリが国内の空から姿を消し、同施設が2005年の自然放鳥にこぎつけるまで34年かかった。3月下旬~4月上旬は産卵期。今シーズンは市内21カ所の湿地などに建てられた高さ12メートルの人工巣塔のうち4カ所で、ペアが入れ代わり立ち代わり抱卵する姿が見られる。これまでに野生化した41羽が同市をはじめ九州から東北地方で観察されており、コウノトリ文化館名誉館長の松島興治郎さん(69)は「(生息地が)点から線、そして面になる日が待ち遠しい」と期待する。

 「(汽車の)公害を心配した地元の反対などで鉄道が通らなかった」。JR八鹿(ようか)駅から車で山を越え、市南東部の出石(いずし)町に向かう途中、市観光課の加藤勉さんが教えてくれた。「時代の流れに乗れなかったことが幸いし、昔の町並みが残った」とも。内堀の石垣に立つ高さ13.5メートルの物見櫓(やぐら)「辰鼓楼(しんころう)」が、ゆったりとした時間が流れる出石藩5万8000石の城下町を見下ろす。櫓は1871(明治4)年に建てられ、2時間に相当する「辰刻(しんこく)」ごとに太鼓を打った。81年に地元医師が大時計を寄付してからは時計台として親しまれ、今は3代目の時計が時を刻む。

城下町・出石のシンボルになっている「辰鼓楼」。設置当時は、2時間ごとに太鼓で時を告げた=いずれも兵庫県豊岡市で

城下町・出石のシンボルになっている「辰鼓楼」。設置当時は、2時間ごとに太鼓で時を告げた=いずれも兵庫県豊岡市で

 城崎温泉の夜は、7つの外湯(共同浴場)を巡る浴衣にげた履きの若者たちでにぎわっていた。柳並木がしっとりとした情緒を醸し出す同川支流の大渓(おおたに)川を挟んで、木造3階建ての10~20室のこぢんまりとした旅館が立ち並ぶ。1925(大正14)年5月の北但(ほくたん)大震災(震度6)で壊滅した温泉街を復興する際、各旅館が敷地の1割を道路拡張に充てたため、3階建てが多いという。震災前から湯治で訪れていた小説家志賀直哉(1883~1971年)が投宿した老舗旅館「三木屋」も地震で全壊したが、27(昭和2)年に3階建てで再建。同旅館の片岡大介さんは「『街全体で一つの旅館』の雰囲気を大切にしながら、家族意識で温泉を支えている」と話す。

 国内で絶滅寸前のコウノトリを復活させ、85年余り前の大震災で大きな痛手を負った温泉街を復興させた豊岡。崖っぷちに立たされても、不屈の精神力で大自然に挑み続けた同市(旧日高町)出身の冒険家植村直己さん(1941~84年)のひたむきな姿と重なった。

 文・写真 奥田啓二

 (2011年4月15日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
豊岡市へは、JR京都駅から山陰線の特急「きのさき号」で豊岡駅下車、約2時間15分。
JR新大阪駅からは福知山線の特急「こうのとり号」(途中から山陰線)で約2時間40分。
コウノトリ但馬空港-大阪国際空港(伊丹)間は約35分で1日2往復。

◆問い合わせ
豊岡市観光課=電0796(21)9016、兵庫県立コウノトリの郷公園=電0796(23)5666

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かばんの自動販売機

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★カバンストリート
全国のビジネス、旅行かばんの7割を生産する豊岡の情報発信基地。
JR豊岡駅近くの宵田商店街通りには、かばんの製造販売店をはじめ、修理やクリーニングの専門店が並ぶ。
上部の口が開いた25センチ四方の袋に2本の持ち手をつけた手提げかばん(トートバッグ、計15種、各1500円)をプラスチック容器に詰めた珍しいかばんの自動販売機も置かれている。
HPは「カバンストリート」で検索。

★出石皿そば巡り
出石城主の家紋である銅銭「永楽通宝」3枚を1680円で購入。
出石町内のそば屋1軒で銅銭1枚が使え、1回につき小盛りのそば3皿をネギ、ワサビのほか、鶏卵、山芋で味わえる。

★永楽館
出石町で1901(明治34)年に開館した近畿最古の芝居小屋で、2008年に復活。
入館料は大人300円、高校、大学生200円、中学生以下無料で午前9時半~午後5時。
第2、4木曜日、12月31日と1月1日休館=電0796(52)5300

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