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田辺市

田辺市 和歌山県 陽光浴びて岩から眺望

ヒキガエルの群れが天に向かっているように見えるという奇岩が並ぶ「ひき岩群」=いずれも和歌山県田辺市で

ヒキガエルの群れが天に向かっているように見えるという奇岩が並ぶ「ひき岩群」=いずれも和歌山県田辺市で

 世界遺産・熊野古道の入り口として知られる和歌山県中南部の都市、田辺市へ向かった。「口熊野」以外の魅力を探しに。

 市街地から北へ約5キロ。県立自然公園区域になっている「ひき岩群国民休養地」に向かう。総面積97.3ヘクタールの休養地内には、北側が絶壁、南側はなだらかな斜面の岩山が連なる「ひき岩群」が広がる。たくさんのカエルが天を仰いでいるように見えることが名の由来という。

 ひき岩群内を通る自然観察路のアップダウンが厳しい道を約20分間歩いて、中央展望地にたどり着いた。涼しい風がほてった体を冷ましてくれた。地元でつくっている梅の炭酸飲料を飲むと、甘酸っぱさが口の中で広がった。

 一息つけた後、周囲を見回した。目を凝らしても、正直いって岩山はカエルには見えなかった。しかし、標高100メートル程度なのに、田辺市街地はおろか、湾を挟んだ隣町白浜町の白浜温泉まで望める眺めは歩いたかいがあった。展望地から元来た道を戻る途中、食虫植物モウセンゴケの食事シーンを見ることができた。後半生を田辺市で過ごした博物学者、南方熊楠(みなかたくまぐす)(1867~1941年)も粘菌などの採集のため、ひき岩群内をよく歩いていたという。

 同市は日照時間が全国十指に入り、陽光に恵まれた地。ひき岩群から東へ車で15分ほどの秋津野地区では、里山の斜面にミカンをはじめとしたかんきつ類の果樹園約300ヘクタールが広がっている。地元生産者の原和男さん(70)に早朝の果樹園を案内してもらった。同地区のかんきつ類栽培の特徴は多品種だ。地区全体では約80種。原さん自身、約2.6ヘクタールの果樹園で40を超す品種を育てている。

 9月20日ごろから「極早生(わせ)ミカン」の収穫が始まり、ポンカン、アマナツミカン、バレンシアオレンジなど、収穫は間断なく続く。収穫がないのは1年のうち、8月のお盆すぎから極早生(わせ)収穫までの約1カ月間だけという。

 「かんきつ類は接ぎ木で容易に新品種を栽培できる。例えば、温州(うんしゅう)ミカンの枝にバレンシアオレンジを接ぎ木するとちゃんとバレンシアオレンジの実がなる」と原さん。「新しいことをやるのが好き。この年になっても畑に行くのが楽しい」と意気盛んだ。5月上旬、ミカンは一斉に開花し、里山一帯を白い花で埋めるという。

 
繁華街の路面に埋め込まれたカラフルなフットライト

繁華街の路面に埋め込まれたカラフルなフットライト

 初めての田辺の夜。紀伊田辺駅近くの飲食街「味光路(あじこうじ)」に行った。かつて「親不孝通り」といわれた約3.5ヘクタールの飲食街には、スナックや居酒屋をはじめとした約300店が軒を並べる。人口約8万人の都市としては不釣り合いなほどの規模だ。メーンの入り口の路面には波形の電飾ライン6本が、飲食街を縦横無尽に走る小路の路面には計61基のフットライトがそれぞれ埋め込まれ、カラフルな光の点滅で客を誘っていた。

 「味とサービスが良いことはもちろん、明朗かつリーズナブルな価格が味光路の特長」。ある居酒屋のご主人は胸を張った。常連客の男性は「若い人が安心して飲める印象があるから、飲食街の通り名としては親不孝通りの方が風情があったかもしれない」とビールグラスを傾けた。田辺港にこの日水揚げされたばかりで、もちもちした食感から「もちガツオ」と呼ばれるカツオの刺し身で地酒を飲んだ。うまかった。

 文・写真 松本芳孝

 (2011年4月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
JR(阪和線・紀勢線)は新大阪駅から紀伊田辺駅まで特急で約2時間。車は阪和自動車道・南紀田辺IC下車。

◆問い合わせ
田辺観光協会=電0739(26)9929、南紀田辺観光案内センター=電0739(25)4919、田辺市熊野ツーリズムビューロー=電0739(26)9025

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