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佐渡島

佐渡島 新潟県 金への執念山を割る

山頂からV字形に打ち割られたような「道遊の割戸」は、佐渡金山最古の採掘鉱だ

山頂からV字形に打ち割られたような「道遊の割戸」は、佐渡金山最古の採掘鉱だ

 その異様な光景に、目を奪われた。山が山頂付近から真っ二つに断ち割られている。まるで天から大きな楔(くさび)が降ってきて突き刺さったかのように、深く刻まれたV字形の切れ込み。深さ74メートル、幅30メートル。佐渡金山(新潟県佐渡市)の主要鉱脈の1つで、開山当初から採掘された最古の採掘鉱「道遊(どうゆう)の割戸(われと)」だ。国指定史跡に選ばれ、金山のシンボルになっている。

 新潟港から高速船で約1時間。佐渡島は思いのほか広く、1000メートル級の山もある。人もまばらな離島をイメージしていたので、人口約6万4000人、面積は東京23区の約1.4倍と聞いて驚いた。近年はトキの放鳥や拉致被害者・曽我ひとみさんの故郷としての印象が強く、個人的には金山のイメージが大きかった。

 島の中心部から金山跡を目指し、車を西へ走らせた。まず目に入ったのが、道遊の割戸だ。地表に露出した鉱脈を手掛かりに採掘された露頭掘りの跡だが、実は江戸時代に掘られたもの。重機などがなかった時代、たがねや楔といった道具を頼りに、山を割るまで岩盤を人力で掘り進めたのかと思うと、金を手に入れるために費やされた人間の執念のようなものを感じざるを得なかった。

 
道遊坑内で鉱石運搬用のトロッコを説明する石川さん

道遊坑内で鉱石運搬用のトロッコを説明する石川さん

 鉱山の坑道に石川喜美子さんの案内で入った。かなり寒い。外の気温は30度近かったが、瞬く間に汗が引く。年間を通じて10度程度という。立って歩くのがやっとの低い天井は、ごつごつとした岩肌がむき出し。ぽたり、ぽたりと水が絶え間なく落ちてきて、湧き水との闘いであったという採掘作業を思い起こさせた。

 主要な坑道につながる「道遊坑」には幅の狭い軌道が敷かれ、後年は鉱石を積んだトロッコが走っていた。

 佐渡金山で本格採掘が始まったのは、関ケ原の戦い翌年の1601年。採掘が始まって間もない17世紀初頭、島の人口は推定5万人弱。このころ江戸は80万人、長崎は2万人といわれ、この離島がいかににぎわっていたかが分かる。

 金山に向かう途中、2階部分が1階よりせり出した造りの民家を見かけた。島が活気づいていたころにあった遊郭を、民家としてそのまま利用しているのだという。当時は鍛冶屋から髪結いまで、多種多様な人々が暮らしていたようだ。

 佐渡はちょっとした“能王国”でもあった。かつては約200の能舞台があったといわれ、今も約30が残っている。その1つで県有形民俗文化財に指定されている大膳神社能舞台を見学した。静かな山里に能の幽玄な雰囲気が調和していた。この日は八幡温泉に宿泊した。

青空と日本海をバックに咲き誇るトビシマカンゾウ=いずれも新潟県佐渡市で

青空と日本海をバックに咲き誇るトビシマカンゾウ=いずれも新潟県佐渡市で

 翌日朝から、島北部の大野亀地域に向け車を走らせた。初夏の訪れを告げるトビシマカンゾウの日本一の大群生地を見るためだ。

 トビシマカンゾウは北向きの海辺に自生し、例年、5月下旬~6月上旬が見ごろ。真っ青な日本海と空を背景に、色鮮やかな黄色い花が咲き誇っていた。この日は観光客でにぎわい、熱心にカメラを構える写真愛好家や親子連れを多く見かけた。

 「東京から来たんですか? きれいな場所でしょう」。誇らしげに話す地元のお年寄りが印象的だった。

 文・写真 竹内章

 (2011年6月24日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
佐渡島へは、新潟、寺泊、直江津の各港から定期船が出ている。「史跡佐渡金山」までは、両津から車で約60分、小木から約80分。

◆問い合わせ
佐渡観光協会=電0259(27)5000。HPは協会名で検索。

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大膳神社能舞台

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★大膳神社能舞台
竹田地区にあるかやぶきの能舞台。江戸時代末期の1846年に再建されたもので、佐渡に現存する能舞台の中では最古。

★大佐渡石名天然杉・遊歩道
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★伊藤赤水作品展示館
陶芸家で人間国宝の伊藤赤水の作品群を紹介。酸化鉄を含む赤土「無名異」を原料に用いたもので非常に硬く、たたくと金属のような音がするのが特徴。

★坑道見学
本文中の坑道見学は年中無休、午前8~午後5時半(4~10月)。当時の採掘の様子を楽しめる「宗太夫坑」コースで大人800円、小中学生400円。ゴールデン佐渡=電0259(74)2389

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