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スラウェシ島

スラウェシ島 インドネシア 希少種の宝庫 熱帯の森

火山から噴き出る白煙を背景に、天気によって3色に見えるリノウ湖畔で食事をする観光客=ミナハサ県で

火山から噴き出る白煙を背景に、天気によって3色に見えるリノウ湖畔で食事をする観光客=ミナハサ県で

 前夜に降ったスコールでぬかるみ、空気中の水分がまとわりつくような高湿度のジャングルを黙々と進む。「ジージー」「クルックー」。どこからともなく響く鳴き声。秘境にいることを強く実感させられる。

 インドネシアの中央、赤道直下に位置するスラウェシ島。西隣のカリマンタン島とを隔てるマカッサル海峡が、生態系をアジア区とオーストラリア区に大きく分ける。スラウェシ島北部先端のタンココ自然保護区には、有袋類の「クスクス」や世界最小級のサル「タルシウス」などが生息し、多彩な生態系をなしている。

 「静かに」。レンジャーのヘローさん(29)が、人さし指で口を押さえ、足を止めるように促した。うっそうとした木々や葉の少しの変化も逃さぬよう、目を凝らし耳を澄ませる。

 深夜3時に起床し、北スラウェシ州都のマナドからデコボコ道などを車で1時間半。たどり着いた保護区の入り口から、道なき道を5キロほど歩き始めて3時間半ほどたっている。出発の際、「動物と必ず出合えると保証はできない」と伝えられたヘローさんの言葉が重みを増す。

 突然、熱帯雨林に不釣り合いな電子音が響いた。ヘローさんがポケットから取り出した携帯電話で話し始めると、興奮気味に叫んだ。「マカカ、アダ(サルいたか)」。ドイツ人夫婦を連れ、別行動をとっていたレンジャーからの報告だった。

森の中で落ち葉の上にちょこんと座り、くつろいでいるようなしぐさを見せるクロザル=インドネシア・タンココ自然保護区で

森の中で落ち葉の上にちょこんと座り、くつろいでいるようなしぐさを見せるクロザル=インドネシア・タンココ自然保護区で

 それまでの“敗戦ムード”は一気に吹き飛び、現場へ急ぐ。軽やかな跳躍で倒木を超えると、体長50~60センチほどのクロザルの群れが目の前に現れた。落ち葉が降り積もった地面にちょこんと座ったり、丸太に腰掛けたりしている。全部で15匹ぐらいだろうか。子どももいる。レッドデータブックに絶滅危惧種として記載され、インドネシア国内の2島にしかいない。ハルマヘラ島にすむのは、スラウェシ島から移されたクロザルだ。

 モヒカンヘアをなびかせた、いかつい顔を前に緊張が走る。だが、性格はいたって温厚。じっとしていると、そばまで寄ってきた。静かに写真を撮っていると、警戒を解いてくつろぎ始めた。その愛らしい姿に癒やされること10分前後。後ろ髪を引かれる思いで山を下りる。

 入り口に戻ったのは、スタートから4時間を超えていた。「さあ森に別れを告げよう」と話していた直後、ヘローさんが再び声を上げた。

 「あっ。別の群れがいる」

 これまでの苦労は何だったのか。しばらくすると、群れは近づいてきたヘビを警戒してか「キーキー」と声を上げながら、雨水のしたたる森の奥深くへと消えていった。

 
2頭立ての牛車がレースを繰り広げる「競牛」は迫力満点だ=カワンコアン村で

2頭立ての牛車がレースを繰り広げる「競牛」は迫力満点だ=カワンコアン村で

 マナドから車で約1時間半南下すると、硫黄濃度が高く天候で湖面が鮮やかに変色するリノウ湖(ミナハサ県)が、静寂の中で神秘的な雰囲気をたたえていた。同湖近くのカワンコアン村では、競馬ならぬ「競牛」を観戦した。騎手を乗せた2頭立ての牛車2組が、ヤシの木を背景に250メートルのコースを17秒前後で疾走する。レース専用牛の荒々しい鼻息が聞こえ、迫力満点だ。

 会場では、男たち50人が賭けレースの成り行きに声を張り上げていた。主催者のタンリンさん(41)は「農作業で疲れても、みんな(競牛で)元気が出る。3カ月に一度の楽しみなんだ」と勝利の牛をなでた。

 小学校時代の3年間、首都ジャカルタに住んだことがあり、19年ぶりに訪れたインドネシア。スラウェシ島では、ジャカルタやバリとは異なる野性味にあふれた自然に感動を覚え、インドネシアへの愛着がさらに強くなった。

 文・写真 矢嶋宏明

 (2011年7月15日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
北スラウェシ州への直行便はなく、バリからスラウェシ島南部のマカッサルを経由し、
州都マナドに入る。
バリへは中部空港、成田空港、関西空港からガルーダ・インドネシア航空の定期便が運航。
成田空港のみ、バリではなくジャカルタ経由が可能。

◆問い合わせ
ガルーダ・インドネシア航空名古屋支店=電052(222)4771、
同東京支店=電03(3240)6161

★ツアー
中日旅行会が、マナドやタンココ自然保護区など、スラウェシ島北部を巡るツアーを企画中。
10月下旬ごろの予定。中日旅行会=電052(231)0800

おすすめ

マナド料理

マナド料理

★リノウ湖
個人所有の火山湖。標高600メートルほどで、約30ヘクタールの広さがあり、硫黄のにおいが漂う。天候によってエメラルドグリーンや赤、青など3色の表情を見せる景勝地。湖畔のカフェでは、活火山から噴き上げる白煙や深緑の森など、絵画の一部を切り取ったような景観を背景にボックスランチが楽しめる。

★マナド料理
魚やエビなどの魚介類、卵とじなどのスープは日本人の舌に合いそう。トマトやショウガ、唐辛子など9種類を使った独特の調味料が煮魚などによく効いている。焼き魚にはトマトやキュウリなどをみじん切りにし、唐辛子をあえたダブダブソースをかける。ピリ辛でビールが進む。

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