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大鹿村

大鹿村 長野県 「騒動記」の感動 新たに

映画「大鹿村騒動記」の舞台になった、南アルプスを望む「日本で最も美しい村」

映画「大鹿村騒動記」の舞台になった、南アルプスを望む「日本で最も美しい村」

 南アルプスの麓にある「日本で最も美しい村」、長野県大鹿村が騒がしい。原因は、村に300年前から伝わる歌舞伎を題材にした原田芳雄さんの遺作となった映画「大鹿村騒動記」。映画を見て村を訪ねたくなった人が増えている。単館上映で先月の公開以来、観客数15万人を突破するヒットとなり、今も全国で上映されている。人口1200人ほどの山奥にある小さな村の騒ぎは、さらに大きくなりそうだ。

 長野県名古屋事務所の古畑洋一所長は「長野県で今にぎわっているのは、NHKの連続テレビ小説『おひさま』の舞台の安曇野と大鹿村。大鹿村では映画の反響の大きさに驚いているようです」。大鹿村観光協会が作った映画ロケの地を巡る旅のリーフレットをもらい、歌舞伎と自然が自慢の山里へ向かった。

 中央道の松川インターで路線バスに乗り換え山道を揺られて約1時間。大鹿村は春は桜、夏はヒマラヤ原産の国内では珍しい青いケシの花、夏は川遊びや登山、秋は紅葉、冬は白銀の山々と温泉-。これまで年間およそ3万人の観光客を迎えてきた。ところが今年は映画が公開された7月から異変の兆し。最初に訪ねた観光案内所前には、名古屋、三河、なにわ、多摩などのナンバーをつけた車が並んでいた。

 観光協会事務局の森菊枝さんは「映画で大鹿村を知ったという方が多いですね。10月の第3日曜日に行われる歌舞伎公演への問い合わせも例年は9月から入るのが、今年は映画が公開されてからきています」と対応に追われる。話を聞いている間も、村への交通手段や宿泊場所を尋ねる電話が相次ぎ、歌舞伎公演のある日の混雑が心配になるほどだった。

 
例年、春に歌舞伎が行われる大磧神社

例年、春に歌舞伎が行われる大磧神社

 昼間の夏の日差しは強いが日陰は心地いい。小高い丘に広がる桜の名所、大西公園から村を眺めた。山と川、自然の一部に村落はあった。映画のロケも特別なセットを組まず、村の協力を得て寺や民家で行われた。村を巡ってみると、映画で見覚えのある場所がそのままある。クライマックスの歌舞伎シーンが撮られた大磧(たいせき)神社は、木立の中にあった。1000人近いエキストラで埋まった舞台前の広場は人影がなかった。せみ時雨の中、映画のシーンを回想していると「映画見ましたか」と声を掛けられた。大阪から来たという男性は「感動して、実際はどんなところか興味を持った」と話していた。

 映画は、大鹿歌舞伎を題材に村人たちの生きざまが軽妙に描かれる。原田さんが演じた鹿肉食堂を営む村歌舞伎の花形役者を主人公に、18年前に駆け落ちし記憶障害になった妻(大楠道代さん)、その相手(岸部一徳さん)を中心にした群像劇がおかしくも切ない。

「ディア・イーター」として映画に登場した旧食堂=いずれも長野県大鹿村で

「ディア・イーター」として映画に登場した旧食堂=いずれも長野県大鹿村で

 大磧神社近くには、映画で原田さんが営んでいた鹿肉食堂「ディア・イーター」が看板そのままにあった。文房具店、食堂兼民宿だったという古い建物の前に立っていると、中から元気な原田さんが現れそうな気がしてくる。ほかに赤石岳が望める古いコンクリート製の連続アーチ形の小渋橋、大河原バス停、食料品店とゆかりの場所を歩き回り映画の感動を新たにした。

 宿泊も映画に登場した温泉旅館を選んだ。湯はなめてみると海水と同じくらい塩辛い。映画の会話にあった通りだ。おかみは「原田さんには映画以前のドラマ撮影でお見えのときから何回か泊まっていただきました」と死を悼む。湯につかっていたらなぜか、村歌舞伎「六千両後日文章 重忠館の段」で「仇(あだ)も恨も是(これ)まで是まで」と声を絞っていた原田さんの姿が頭に浮かんだ。

 文・写真 田辺洋子

 (2011年8月26日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
JR飯田線・伊那大島から伊那バスで大鹿村大河原まで約1時間。
車の場合は中央道松川インター(名古屋から約1時間30分、
東京から約3時間)から約40分。

◆問い合わせ
大鹿村観光協会=電0265(39)2929、
長野県名古屋観光情報センター=電052(263)4118

おすすめ

★大鹿歌舞伎
毎年春は大磧神社、秋は市場神社で開催。
今年は10月16日に市場神社で定期公演をするほか、同30日に原田芳雄さんを追悼し、撮影に使った大磧神社で追加公演を催す。
入場無料。

★NPO法人「日本で最も美しい村」連合
自然景観などに恵まれた農山村が自らの町や村に誇りを持って自立し、美しい地域であり続けようと2005年に大鹿村や北海道美瑛町など7町村で設立。
現在は36町村と3地域が加盟。

★宿泊施設
旅館は鹿塩温泉(塩化物強塩冷鉱泉)に3軒、小渋温泉(炭酸水素塩冷鉱泉)に1軒。
ほかに民宿もある。

カルパッチョ

カルパッチョ

★大鹿ジビエ
鹿肉をメーンに村の野菜を使った料理。
鹿ロース肉ステーキ、カルパッチョ、サラミソーセージ・ハム、
ハンバーグなど村内の食堂やレストラン、
宿泊施設がそれぞれ自慢の料理を考案(予約が必要な料理もある)。
手軽な土産としては鹿肉とブルーベリーを使った欧風タイプの「大鹿村カリー」がある。

★ろくべん館
村に古くから伝わる歌舞伎弁当を詰めた重箱がろくべん。
村の歴史と民俗文化を紹介。

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