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薩摩半島

薩摩半島 鹿児島県 個性派列車が魅力競う

レトロな雰囲気を漂わせるJR嘉例川駅=鹿児島県霧島市で

レトロな雰囲気を漂わせるJR嘉例川駅=鹿児島県霧島市で

 鹿児島空港からタクシーで10分ほど。緑に囲まれた集落の坂を下っていくと、JR肥薩線・嘉例川(かれいがわ)駅(鹿児島県霧島市)のレトロな駅舎が現れた。同駅からJR九州自慢の観光特急「はやとの風」に乗り、ローカル線を乗り継いで日本最南端のJR駅「西大山駅」へ。さらに鹿児島中央駅から、今春、全線開業した九州新幹線で九州縦断を試みた。

 嘉例川駅は、建てられた1903(明治36)年当時の姿をほぼとどめ、国の登録有形文化財に指定されている。待合室の木製ベンチなど、表面の擦り切れ具合が時代をしのばせ、旅の出発点にふさわしい趣に心が弾んだ。

 「はやとの風」がホームに滑り込んできた。漆黒の車体に金色のエンブレムを付け、気品を感じさせる引き締まった表情。木を生かした明るい内装の列車に乗り込み、鹿児島中央駅に向かった。車内では、九州駅弁ランキングで3年連続1位に輝いている「百年の旅物語『かれい川』」を味わった。サツマイモやニンジンなどの野菜を揚げた郷土料理「がね」に、たけのこご飯という素朴さだ。

 「あ、あそこ。背びれが見えた」。車窓の海や桜島を眺めていると、近くの席から突然、歓声が上がった。鹿児島湾には毎年、200~300頭のイルカが入ってくるという。運よく、姿を見ることができた。

 
JR日本最南端の駅「西大山駅」。背後の開聞岳は山頂が雲に隠れていた=鹿児島県指宿市で

JR日本最南端の駅「西大山駅」。背後の開聞岳は山頂が雲に隠れていた=鹿児島県指宿市で

 鹿児島中央駅で、この3月に指宿枕崎線にデビューした観光特急「指宿のたまて箱」に乗り継いだ。車体を正面から見て左右半分ずつ白と黒に塗り分けられた奇抜なデザイン。車名は、地元に伝わる竜宮伝説にちなんで付けられた。列車が到着すると、ドアの上部から玉手箱の煙に見立てた霧が噴き出す粋な仕掛けに驚かされた。

 海沿いを走るこの列車の特徴は、なんといっても車窓からのオーシャンビュー。家族でゆっくり楽しめるよう子ども用のスペースや、竜宮伝説にちなんだ本が読めるコーナーも備えている。週末の指宿駅では、運が良ければ駅長のケヅメリクガメ「小太郎」のお出迎えもある。

 翌日、北緯31度11分の西大山駅へ。1日上下それぞれ8本の列車が停車するだけの無人駅だが、「JR日本最南端の駅」の標柱に感動。頂上は雲で隠れていたが、間近に見える開聞岳の姿がりりしかった。

 さらに薩摩半島南端の長崎鼻へ足を延ばした。岬の手前には、「指宿のたまて箱」の名前の由来になった、浦島太郎がここから竜宮へ旅立ったと言い伝えられている竜宮神社がある。神社には大きな壺(つぼ)が置かれ、中をのぞくと貝殻でいっぱい。願い事を書いた貝殻を入れると成就するのだという。

観光特急「指宿のたまて箱」の名前の由来になった竜宮神社=鹿児島県指宿市で

観光特急「指宿のたまて箱」の名前の由来になった竜宮神社=鹿児島県指宿市で

 次に目指したのは、謎の巨大生物「イッシー」の伝説がある池田湖。周囲約15キロで九州最大。湖には、体長2メートルにもなるというオオウナギがすみ着き、これがイッシーの正体との説も。地元の宮田久美さん(32)は「イッシーはいると信じています。夢があるから」と笑っていた。

 帰路は、3月12日に博多-鹿児島中央がつながった九州新幹線に乗った。新型車両を投入するなど快適。のんびりとした観光列車に揺られた後だけに、あっという間の九州縦断だった。

 文・写真 服部展和

 (2011年9月16日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
東京(羽田)、名古屋(中部国際)から鹿児島空港へは定期便がある。
「はやとの風」で嘉例川-鹿児島中央約50分。
「指宿のたまて箱」で鹿児島中央-指宿約1時間。
指宿-西大山は指宿枕崎線で約20分。

◆問い合わせ
指宿市観光課=電0993(22)2111、鹿児島県観光課=電099(286)2994

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九州新幹線

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★JR九州の観光列車
本文中の2列車のほか、「ゆふいんの森」(博多-大分)、「あそぼーい!」(熊本-宮地)、「海幸山幸」(宮崎-南郷)などが運行中。
九州新幹線の鹿児島中央-博多は最速で1時間19分(写真は鹿児島中央駅で)。

★鰻温泉
西郷隆盛も湯治に訪れた指宿市の温泉街。
温泉の湯気を利用したかまどで卵やサツマイモなどを蒸す「スメ」が楽しめる。
指宿駅からタクシーで20分。

★枚聞(ひらきき)神社
開聞岳の麓にある神社。竜宮伝説があり、宝物殿には国重要文化財の松梅蒔絵櫛(まきえぐし)箱(玉手箱)などを展示。

★知林ケ島、魚見岳
知林ケ島は鹿児島湾に浮かぶ周囲約3キロ、標高約90メートルの島。
大潮の干潮時に陸地と島が砂道でつながり、歩いて渡ることができる。
陸側にある魚見岳は頂上近くまで車で行くことができ、知林ケ島や指宿市が一望できる。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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