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首里城

首里城 沖縄県 琉球王国の歴史を今に

「御庭」と呼ばれる広場は、正面の正殿と記念撮影する観光客でにぎわっていた

「御庭」と呼ばれる広場は、正面の正殿と記念撮影する観光客でにぎわっていた

 琉球王朝の役人の衣装を身につけた男が3人、首里城奉神門(那覇市)の前に姿を現し、中央の1人がドラをたたきながら「うけーじょー(御開門)」と厳かに告げる。毎朝午前8時半に繰り広げられる開門の儀式。芝居がかった男たちの動きにカメラを向けていた観光客が、勇んで開け放たれたばかりの門へ向かう。

 奉神門をくぐると、正面に色鮮やかな正殿が姿を現した。「御庭(うなー)」と呼ばれる正殿前の広場は、各地の豪族を倒して15世紀に琉球全土を統一した尚王家が、中国皇帝の使者、冊封使(さっぽうし)をさまざまな芸能でもてなしたという。琉球王国で最も重要で厳粛な式典が催された場所だったはずだが、みなさんリラックスして記念撮影に興じている。昔なら高圧的に叱りつけていたはずの“役人”までが、にこやかに撮影を手伝っている。

 正殿の内部まで公開されていた。須弥壇(しゅみだん)を思わせる玉座に座ることこそできないが、玉座を囲む柱のきらびやかな竜の彫刻を至近距離で眺め陶然となる。上部には「輯瑞球陽(しゅうずいきゅうよう)」「中山(ちゅうざん)世土(せいど)」「永祚瀛●(えいそえいぜん)」。朱の地に金文字で描かれた3枚の扁額(へんがく)が並んでいる。

 清の康熙帝(こうきてい)ら中国皇帝からの贈り物を復元した扁額は、それぞれ「琉球が幸せであることを祈っている」「中山(沖縄)は代々琉球国王の国である」「海の向こうにある琉球を永く幸いに治めよ」という意味だという。王朝なき今、「輯瑞-」以外はすでに意味をなさない言葉だけに、威風堂々たる文字が逆にあわれを誘う。

 
琉球王朝の尚氏一族が眠る玉陵=いずれも那覇市で

琉球王朝の尚氏一族が眠る玉陵=いずれも那覇市で

 城の近くにある尚王家一族が眠る「玉陵(たまうどぅん)」を訪ねてみた。観覧開始の午前9時をとっくに過ぎているのに、フェンスが閉じたまま。「なぜだろう」と金網を揺すっていると、「不発弾」の文字が目に飛び込んできた。向かいの首里高校で見つかった米軍の不発弾を処理するため、開館を午後に延ばすという張り紙。「1945年の沖縄戦で(首里城は)灰燼(かいじん)に帰した」というさっき城内で読んだ説明がずっしり身に迫ってきた。

 高校周辺が一時通行禁止になったので、「首里金城町石畳道」と呼ばれる人気観光スポットへ向かうことにした。尚真王(1465~1526年)の時代に整備された石畳の坂道が300メートルほど残っている。「鉄の暴風」と呼ばれた戦火の激しさをかみしめると、この道が愛される理由がしみじみふに落ちてくる。しばらく道端にたたずんでいると、琉球石灰岩が形づくる石畳の模様が何かを語りかけてくるように思われた。

 夕方、もう一度玉陵を訪ねてみた。石積みの墓は、首里城の正殿とはまったく趣が異なるモノトーン。内部は、東室、中室、西室の3つに分かれていて、中室で棺内の遺体を白骨化させた後、東西の室に安置する「洗骨葬」が行われていたという。

 墓から少し離れた場所に線香や果物を供えて祈る年配の人たちがいた。日が傾きかける中、穏やかな声で祈りの言葉を唱え続けている。「この方たちには『中山世土』も『永祚瀛●』も過去の言葉ではないのかもしれない」。そんな思いが脳裏をよぎった。

 文・写真 中山敬三

 (注)●は、土へんに需

 (2011年10月28日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
那覇空港へは、中部空港から約130分、羽田空港から約150分。
那覇空港から首里はゆいレール(沖縄都市モノレール)で約30分。

◆問い合わせ
首里城公園管理センター=電098(886)2020

おすすめ

首里城公園の下之御庭で披露される琉球舞踊

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★「舞への誘い」
冊封使を歓待する宴は7回催されたとされ「七宴」と称される。
宴で披露された古典舞踊や明治以降に登場する雑踊りなどの琉球舞踊を首里城公園の下之御庭で水、金、土、日曜日、祝日に無料で披露。
午前11時、午後2、4時の3回。日曜日は地謡の生演奏が加わる。

★国立劇場おきなわ
那覇市の隣浦添市にあり、冊封使をもてなすために踊奉行玉(たま)城朝薫(ぐすくちょうくん)らが創作した「組踊(くみおどり)」作品を中心に上演している。
上演スケジュールはホームページで。

★識名園
琉球王家の別邸で国王一家の保養や外国からの使者の接待などに使用された。
首里城の南に位置することから「南苑」の異名も。
首里城、玉陵とともに国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されている。

琉球王家の別邸

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★那覇市歴史博物館
ゆいレール「県庁前駅」に隣接する「パレットくもじ」4階。
玉御冠、刀剣「千代金丸」(いずれも国宝)など尚王家にまつわる資料を収蔵、展示している。
11月30日まで那覇市施行90周年記念「琉球国王尚家の人々~海を渡った宝物」を開催中。

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