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タリン

タリン エストニア 中世そのままの旧市街

城壁に沿って立ち並ぶ丸い尖塔が、中世からの歴史を物語る

城壁に沿って立ち並ぶ丸い尖塔が、中世からの歴史を物語る

 曲がりくねった石畳の小道。街を見下ろす赤い屋根の尖塔(せんとう)。2.4キロにわたって築かれた城壁の中に、中世で時が止まったような街並みが広がっていた。

 バルト三国の最北にあるエストニア。首都タリンの旧市街は歴史地区として世界遺産に登録され、欧州各地から観光客が集まる。

 少し歩いただけでも、街はさまざまな表情を見せる。レストランの前で中世の黒い衣装を着た男性が声を張り上げて客を呼び込み、屋台では赤いマントの女性が甘く味付けしたアーモンドの菓子を薦めている。

 小道を抜けると、旧市街の中心、ラエコヤ広場に出た。広場のシンボルは、中世のゴシック式建築物では北欧に唯一残った旧市庁舎だ。1422年から営業を続ける北欧最古の薬局に入ると、ハリネズミやミイラの手といった中世の薬を見ることができる。今では信じられないが、煎じて使ったのだろうか。街じゅうが歴史博物館のようだ。

 にぎやかな通りをそれて、「名工の中庭」という看板が掛かった通路をくぐると、落ち着いた雰囲気の空間にたどり着いた。木工、陶芸、ジュエリーといった職人たちの店が中庭を取り囲み、テラスでは女性らがホットチョコレートを飲んでくつろいでいた。

中世の衣装を着て、観光客にアーモンドの菓子を薦める女性(右から2人目)

中世の衣装を着て、観光客にアーモンドの菓子を薦める女性(右から2人目)

 バルト海のフィンランド湾に面した港町タリンは、北ドイツを中心に欧州北部の経済圏を支配したハンザ同盟の一員として発展した。庶民が生活した下町には、13~16世紀ごろにかけて造られたドイツ商人たちの建物が数多く残り、現在は博物館や劇場、ホテルなどとして使われている。

 
15世紀の商家を改装したホテル「三人姉妹」=いずれもエストニア・タリンで

15世紀の商家を改装したホテル「三人姉妹」=いずれもエストニア・タリンで

 3棟続きの商家を利用したホテル「三人姉妹」は、きゃしゃな女性たちが寄り添っているようにも見える。客室は、250年前の火事で改装された当時の柱や梁(はり)がむき出しになっていた。このホテルで働くヨーナス・ウーレヒさん(25)は「昔の雰囲気が好きな人は、みな喜んでくれます」と胸を張った。

 「短い足通り」と名付けられた坂道と、急な階段を上っていく。下町との境を意味する門の向こうは、かつての支配階級が住んだ山の手だ。

 権力者たちが下町を監視した展望台に立つと、タリンの旧市街が城壁に守られていたことがよく分かる。デンマーク、ドイツ、スウェーデンといった外国勢力の支配を常に受け、戦いに明け暮れてきた小国エストニア。1991年に崩壊直前の旧ソ連から独立を宣言して、ようやく20年たった。

 「お店の棚はいつも空っぽ。お母さんはジャガイモや野菜を買うのに、1~2キロの行列に並んでいました」。タリン生まれで日本人男性と結婚したガイドの園部カットレさん(34)が、独立前の子どものころを振り返った。「独立宣言に大人たちは喜んでいたけど、私にはどんな意味なのか分からなかった」

 兵士たちが駆け抜けた城壁の下は、市民に開放されて衣料品のマーケットになり、厳しい冬を前にセーターやマフラーを品定めする人たちでにぎわっていた。外敵に備えた尖塔の周りには静かな公園が整備され、老夫婦がゆったりと散歩していた。

 城壁から一歩外に出ると、高層ビルやショッピングセンターが立ち並ぶ新市街だ。路面電車やトロリーバスが大通りを走り抜け、大勢の市民がせわしなく行き交うさまは、北欧のほかの都市と変わらない。中世の街が見せる近代都市の顔。これも多くの観光客を引きつけるタリンの一面になっている。

 文・写真 渡辺道彦

 (2011年11月4日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
フィンランド湾対岸のヘルシンキ経由が早い。
フィンランド航空のヘルシンキ直行便は中部国際空港から週5便、成田空港から毎日、関西空港から週5便(12月29日から週6便)運航し、いずれも約9時間30分。
ヘルシンキからタリンへは同航空の乗り継ぎで約30分、フェリーで2~4時間、高速船(冬は休航)で約1時間30分。

◆問い合わせ
エストニア観光局のホームページ(「エストニア観光局」で検索可)に問い合わせフォームがある。

おすすめ

バロック調の宮殿

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★イベント
タリンは2011年の欧州文化首都に選定され、さまざまな文化行事が年内展開される。
ラエコヤ広場では数週間にわたってクリスマスマーケットが開かれ、コンサートやサンタクロース訪問などがある。

★カドリオルグ公園
旧市街の約3キロ東。
18世紀初めにバルト地域を征服したロシアのピョートル大帝が、妻エカテリーナのために造らせた。
美術館になったバロック調の宮殿を中心に、池や噴水、花壇が配置された緑の多いエリアで、市民の憩いの場になっている。

★IT立国
「バルト海のシリコンバレー」と呼ばれるほど情報技術(IT)産業が盛ん。
インターネット電話のスカイプはタリンで開発された。
スカイプに不可欠な無線LANは空港、駅、ホテル、カフェなど市内の多くの場所で無料で利用できる。

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