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熊本城

熊本城 熊本県 石垣、外壁 圧倒的美しさ

国内外から観光客が訪れる、「日本三名城」の熊本城

国内外から観光客が訪れる、「日本三名城」の熊本城

 「武者返し」と呼ばれる熊本城の石垣を見上げると、そびえ立つ岩壁のような迫力に圧倒された。石と石がジグソーパズルのようにぴたりと重なり合い、きつい傾斜が侵入を阻んでいる。築城の名手と称された加藤清正が築いただけのことはある。その後、城は細川家の居城となり、「日本三名城」として今も威容を誇っている。

 訪れた時は、秋の行楽日和も手伝ってか、遠足の子どもたちや、団体客らでにぎわっていた。アジアからの観光客も多く、中国語や韓国語が飛び交う。城を訪れる人は昨年度、約145万人に上った。シックな黒色の外壁にもしばらくうっとり。一度は訪れてみたいと言われる理由が分かってきた。

 天守閣は、残念ながら当時のものではない。1877(明治10)年の西南戦争の3日前、原因不明の出火で焼失してしまった。明治の写真家・富重利平が撮影した焼ける前の写真が残されており、それを参考に1960(昭和35)年に復元された。撮影されていたのは不幸中の幸いか。利平の店は、熊本市内に富重写真館として今も営業している。

水前寺成趣園の「古今伝授の間」。お茶を飲みながら庭園が楽しめる

水前寺成趣園の「古今伝授の間」。お茶を飲みながら庭園が楽しめる

 昼食は城内の本丸御殿で、いただくことにした。料理は、当時の熊本藩士の食事を再現。お膳に上った品は、タイの昆布じめ、エビの田楽やタコの軟らか煮-豪華そのもの。パエリアを模したとされる、くちなし飯が出てきたのには驚かされた。ハイカラな細川家の一面を見た。

 これらの献立は、熊本藩の料理頭が書き残したレシピを基に、地元の郷土料理店が作っている。接客してくれた若おかみの倉橋恭加(やすか)さん(38)は「難読な文献を理解し、手探りで調味料の一つ一つから作り出すことが大変だった」と話す。熊本藩士は、こんなにおいしいものを食べていたのか。

 
斜面に等間隔で並ぶ五百羅漢像の一部=いずれも熊本市で

斜面に等間隔で並ぶ五百羅漢像の一部=いずれも熊本市で

 城を出て、細川家の菩提寺(ぼだいじ)があった立田自然公園の「四つ御廟(ごびょう)」へ向かった。静寂な緑の中に整然と並ぶ。墓は近世細川家の祖、藤孝夫妻と長男忠興夫妻のもの。忠興の妻ガラシャの廟の脇には、愛用の丸みを帯びた手水鉢(ちょうずばち)が寄り添っていた。父の明智光秀の謀反により、波乱に満ちた生涯を送ることになった彼女に合掌。水前寺成趣園にも足を運んだ。

 さらに、細川家に招かれた宮本武蔵が「五輪書」をこもって書いたという「霊巌洞(れいがんどう)」へ。洞窟がある「雲巌禅寺」の門をくぐると、斜面一面に等間隔で並ぶ五百羅漢が出迎えてくれた。羅漢の表情豊かな顔は、見ていて飽きない。ただ、中には頭部のないものもある。これは地震と廃仏毀釈(きしゃく)で失ったものだという。

 坂道の奥に、大きく口を開けた霊巌洞はあった。洞窟の中は20畳ほどの広さ。闇夜の中、ろうそくをともし、座禅を組む晩年の武蔵の姿を思い浮かべ、少し哀愁を感じた。

 宿に戻り、ライトアップで闇に浮かび上がる熊本城を窓から見上げて振り返った。細川家と、そのゆかりの人々。武芸や芸術、学問に力を入れた国づくりの精神は、ジグソーパズルのように今も、熊本にぴったり根付いていた。

 文・写真 青木孝行

 (2011年11月11日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
東京(羽田)、愛知(中部、小牧)の各空港から熊本空港(阿蘇くまもと空港)へ定期便がある。
熊本城は同空港からバスで約40分。
九州新幹線は博多駅から熊本駅まで約40分。

◆問い合わせ
熊本県観光課=電096(333)2335、熊本市観光振興課=電096(328)2393

おすすめ

本丸御膳

本丸御膳

★水前寺成趣園
細川家3代、約80年かけて造られた桃山様式の回遊式庭園。
東海道五十三次の名所を園内に再現した。
近世細川家の祖、細川藤孝(幽斎)ゆかりの建物「古今伝授の間」が移築されている。
11~2月は午前8時30分~午後5時、入園料大人400円、子ども200円。

★熊本城本丸御殿での昼食
本丸御膳は3000円、3日前までに要予約。
郷土料理・青柳=予約専用・電096(325)0092

★五高記念館
熊本大学内にある。
第3代校長の嘉納治五郎、英語教師のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)や夏目漱石らの足取りをたどることができる。
入場無料、開館は午前10時~午後4時。電096(342)2050

★朝鮮飴(あめ)
もち米と水飴、砂糖でつくられたもち菓子。
保存食として優れ、腹持ちがよいため、加藤清正が文禄・慶長の役の際に携行した。
200グラム入り630円。
老舗の園田屋は創業400余年。電096(352)0030

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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