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東尋坊

東尋坊 福井県 絶壁囲む入り江の奥へ

高さ25メートルの崖に囲まれた東尋坊の大池に進む遊覧船=福井県坂井市で

高さ25メートルの崖に囲まれた東尋坊の大池に進む遊覧船=福井県坂井市で

 朝、降っていた雨が上がり、芦原温泉(福井県あわら市)から東尋坊(同県坂井市)を目指す。バスに乗り合わせた若者が「地元の人には悪いけど、灰色の空、鉛色の海が日本海らしいよ」と仲間に話している。三十数年前、粉雪の舞う東尋坊の岩場に立ち、岩に砕ける白い波を見て、記者もそう思った。

 東尋坊に着くと、観光遊覧船がある、という。何組かのカップルや家族連れ、中年の女性のグループが一緒だ。しゃがれ声のおじさんがガイド役。「波が静かで、みなさんは運がいい」と言った途端に、グラッと揺れた。すかさず「変な声を上げずに、隣の彼氏にしがみつきなさい。彼氏のいない人は私に」。綾小路きみまろを思わせる語り口で、船内は笑いが絶えない。

 「ナホトカ号が漂着したのは、あの雄島(おしま)に架かる赤い橋の向こうです。多くのボランティアの人に来てもらいました。ありがとうございました。今はもう、海はきれいになり、海鳥もほら、向こうの岩場に見えますね」。ロシア船籍のタンカーが座礁、重油が流出した事故からもうすぐ15年。地元の人たちが、感謝の気持ちを持ち続けていることに驚く。

 遊覧船の一番の見どころは、大池だ。大池とは小さな入り江で、東尋坊で最も高い25メートルの断崖に囲まれている。断崖は、六角形の太い柱を並べたように見える。火山岩が冷える時にできた割れ目で、柱状節理と呼ばれる。

 遊覧船は入り江に入っていく。前も右も左も、三方が天まで届きそうな壁に閉じ込められたようだ。崖の上から見下ろす人が小さく見える。東尋坊の名は、この崖の上から突き落とされたお坊さんに由来する。

 
越前ガニが並ぶ東尋坊の海産物店

越前ガニが並ぶ東尋坊の海産物店

 船を下り、展望テラスを歩いた後、商店街に。イカやホタテを焼く香ばしいにおいが漂う。発泡スチロールの箱に、冬の日本海の味覚を代表するゆでた赤い甲羅の越前ガニが入っており、カニには黄色いタグが付いている。福井産の印だ。

 茶色っぽいカニがいると思ったら、足が動いた。店の人に聞くと「生きてますよ。初めてなら、ゆでたカニを買った方がいいですよ」と言う。

 荒磯遊歩道を歩いて、雄島に向かう。ツワブキの黄色い花が、お花畑のように咲いている。雄島の海岸に出ると、板を積み重ねたような岩がずっと続く。板状節理というそうだ。人は少ないが、岩の上に背中の青いイソヒヨドリがいた。再訪した東尋坊は、モノトーンの世界ではなく、明るく、おいしいものがいっぱいある、魅力的な観光地だった。

 
芦原温泉の芸妓と簡単なルールで楽しめるお座敷遊び=福井県あわら市で

芦原温泉の芸妓と簡単なルールで楽しめるお座敷遊び=福井県あわら市で

 帰りにJR芦原温泉駅で「越前名物 水羊かん」ののぼりにひかれて、馬面(ばめん)昭栄堂という菓子店に入った。「黒糖を使っているので、よそよりも味が少し濃いかも。11月から3月までの季節限定商品です」と言う。福井県では冬、こたつに入って、冷やした水羊かんを食べるそうだ。1箱550円。名物にしては安いと思ったら「水で作るんだから」と、店の人は笑っていた。

 JR東日本、JR東海、JR西日本の3社は12月1日から福井、石川、富山の北陸3県で「ジャパニーズ・ビューティー・ホクリク」キャンペーンを実施する。「芦原芸妓(げいぎ)とお座敷体験」(あわら市)、ライトアップされた夜の金沢をボランティアガイドが案内するツアー(金沢市)、薬膳料理(富山市)などが楽しめる。

 文・写真 井上能行

 (2011年11月25日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
東海道新幹線・米原駅で北陸線に乗り換えて芦原温泉駅下車。
名古屋からは特急しらさぎが便利。
芦原温泉駅からはバスかタクシーで東尋坊へ。
タクシーなら約20分。

◆問い合わせ
坂井市三国観光協会=電0776(82)5515

おすすめ

木彫りの表札

木彫りの表札

★一乗谷朝倉氏遺跡
戦国大名朝倉氏が築いた城下町で、1967年から発掘され、町並みが復元されている。
中には朝倉義景館跡、諏訪館跡庭園、唐門などがある。
ソフトバンクのCMで、白戸家のお父さんの出身地との設定で紹介され、観光客が急増している。復元町並みは入場料大人210円。住所は福井市城戸ノ内町。

★花ラッキョウ
福井県の砂丘地帯で栽培。
普通のラッキョウは一冬越して収穫するが、花ラッキョウは2度冬を越す。
小粒で歯切れがよい。

★木彫りの表札
富山県南砺市にある瑞泉寺の門前町井波。
約300人の彫刻技術者がいて、寺社彫刻を手掛けている。
「井波彫刻総合会館」ではさまざまなデザインの表札を1枚2万円台から作ってくれる。

★薬膳カフェ
春々堂(ちゅんちゅんどう) JR富山駅近くの老舗薬店「廣貫堂」が経営。
やくぜんきのこカレー735円など。
電076(444)7198

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