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尾道市

尾道市 広島県 郷愁誘う石畳と坂の街

情緒漂う石畳の先に見えるのは尾道水道

情緒漂う石畳の先に見えるのは尾道水道

 「転校生」「さびしんぼう」など、大林宣彦監督の映画の舞台になったことで知られる広島県尾道市。街は商店街の延びる海側と、寺社が連なる山側に分けられる。海岸にほど近いJR尾道駅を起点に古刹(こさつ)やロケ地を巡り、山の中腹にしがみつくように立つ尾道のシンボルといわれる「千光寺」を目指した。

 石畳の続く坂道を上りながら、「持光寺」「光明寺」「宝土寺」などを見て、千光寺新道との交差点へ。このあたりが「転校生」のロケ地。近くには6畳間と3畳間に台所という、志賀直哉の旧居も当時のままの姿で残されていた。

 歩いてきた坂道を振り返ると、船が行き交う海が見え、疲れた足が癒やされた。街並みはレトロな雰囲気を残し、車の通れない小道を歩いていると郷愁に誘われた。

 千光寺は806(大同元)年、弘法大師の開基といわれ、赤い本堂が特徴。西行もここに立ち寄り歌を詠んでいる。頭上をロープウエーが通り、乗客が手を振るのが見える。さらに坂道を上り、標高140メートルほどの千光寺山(大宝山)山頂に。この山には、同市出身の日本画家、平山郁夫氏(1930~2009年)の描いた「しまなみ海道五十三次」のスケッチポイントがいくつもある。

 
尾道水道に分け隔てられた尾道市街を眺めながら上る千光寺山ロープウェイ

尾道水道に分け隔てられた尾道市街を眺めながら上る千光寺山ロープウェイ

 山頂の展望台からは尾道の街が一望でき、一幅の絵かジオラマのよう。「海が見えた。海が見える。5年ぶりに見る、尾道の海はなつかしい」。下山途中、高等女学校時代を尾道で過ごした「放浪記」で知られる林芙美子の文学碑が目に留まった。

 「猫の細道」と名付けられた小道を歩いた。街のいたるところに福を招くといわれる、石に猫を描いた「福石猫」が置かれている。町おこしで始まったが、人気女優がカメラのCM撮影で訪れたことがきっかけで注目度を増しているという。

 今度は、ロープウエーで千光寺山に上った。わずか3分ほどの空中散歩だった。

 尾道は「西瀬戸自動車道」(しまなみ海道)の起点でもある。瀬戸内海の大小9つの島をつないで愛媛県今治市まで約60キロ。自動車道だけではなく、自転車道、歩行者道が併設されている。14のレンタサイクルターミナルがあり、料金は大人1日500円、追加料金でどこのターミナルでも乗り捨て自由だ。記者も自転車にチャレンジした。

サイクリングの途中で出会った野村謙次さん(左)ら。後方は多々羅大橋=いずれも広島県尾道市で

サイクリングの途中で出会った野村謙次さん(左)ら。後方は多々羅大橋=いずれも広島県尾道市で

 車で大三島(愛媛県今治市)まで行き、尾道にサイクリングで戻ることにした。「多々羅大橋」のターミナルで自転車を借り、踏み出した。今治市レンタサイクル支配人の越智通勝さん(53)が「橋の上から海を見てね。それが一番の見ものだから」と教えてくれた。

 橋の上で止まってみた。瀬戸内海は静かだ。好きな場所で自転車を止めながら、海風のサイクリングを楽しんだ。

 途中で出会った滋賀県栗東市の野村謙次さん(70)は「もう何回も自分の自転車を持って来ている。車では味わえない匂いや景色が自転車なら味わえるからね」と、爽やかな笑顔を浮かべた。

 島の畑には、色とりどりのかんきつ類がたわわになっている。来年初めまで、ハッサクが実をつける景色を楽しめると聞いた。

  文・写真 加藤大介

 (2011年12月9日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
新幹線・福山駅で下車し、在来線で尾道駅まで約20分。
または、新幹線・新尾道駅で下車し、バスで尾道市街へ。

◆問い合わせ
尾道観光協会=電0848(37)9736。
同協会の観光HPも。

おすすめ

瀬戸内のかんきつ類や天然素材を使った手作りジェラート

瀬戸内のかんきつ類や天然素材を使った手作りジェラート

★千光寺山ロープウェイ
全長361メートル、高低差115メートル。
大人往復440円、子ども半額。
通常は午前9時~午後5時15分。

★ドルチェ
瀬戸内のかんきつ類や天然素材を使った手作りジェラートを製造、販売。
広島県はレモンの生産量日本一。
尾道市瀬戸田町林。電0845(26)4046

★平山郁夫美術館
平山郁夫氏の「仏教伝来」、素描画「しまなみ海道五十三次」や美術学校在学中のスケッチなどを展示。
入館料は大人700円など。電0845(27)3800

★志賀直哉旧居
半年ほど暮らした長屋。
尾道水道の向こうに造船所や石切り場跡が見える長屋からの眺望を「暗夜行路」の中で記している。
近くには林芙美子の書斎を再現した文学記念室、歌人の中村憲吉の旧居がある。
共通入場券300円。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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