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八戸市 青森県 北の朝市 にぎわい再び

岡本おさみさんが新婚旅行で泊まった蔦温泉旅館別館「66号室」=青森県十和田市で

岡本おさみさんが新婚旅行で泊まった蔦温泉旅館別館「66号室」=青森県十和田市で

 東日本大震災で大津波に見舞われた八戸港(青森県八戸市)が、被災から立ち直り元気だ。イカやサバなどの水揚げに活気づく港、朝市で笑顔を絶やさない「イサバのカッチャ」と呼ばれる魚商のおばちゃんたち。11月下旬、青春時代に口ずさんだフォークソングのモデルになった南八甲田連峰山麓の一軒宿から、青森県南東部の旅を始めた。

 昨年12月、東北新幹線の全線開通に伴い開業した七戸(しちのへ)十和田駅から、車で十和田湖方面へ。小一時間走ると、落葉で森の奥深くまで見通せるブナの原生林越しに、重厚な構えの「蔦(つた)温泉旅館」(十和田市)が姿を見せた。

 本館から60段余の階段を上ると別館。客室係の葛巻彩子さんに案内されたのは「66号室」。シンガー・ソングライター吉田拓郎さんの「旅の宿」を作詞した岡本おさみさんが、1969(昭和44)年10月に新婚旅行で泊まった10畳間だ。

 ♪浴衣のきみは尾花(すすき)の簪(かんざし) 熱燗徳利(あつかんとっくり)の首つまんで-

 歌は山峡の宿でのイメージをもとにつづられた詩に曲がつけられ、72年夏の発売と同時に大ヒットした。当時、客室の火鉢の上で客が好みの燗をしたが、今は防火に配慮して火鉢はない。「(曲に出てくる)『♪上弦の月』をここで眺めたいという問い合わせが、50、60代のファンから年十数件あります」と小笠原正明社長。暖房設備のない別館は11月末から3月末まで休館。「暑くも寒くもない時期がお薦め」と小笠原さん。外は風雪。一番新しい西館で、月見酒ならぬ雪見酒で古き良き時代をしのんだ。

 
約400のテントが並び、早朝から買い物客でごった返す館鼻岸壁の朝市=青森県八戸市で

約400のテントが並び、早朝から買い物客でごった返す館鼻岸壁の朝市=青森県八戸市で

 JR八戸線陸奥湊駅から1キロほど。2004年から冬場を除く日曜の朝、八戸港の館鼻(たてはな)岸壁で開かれている朝市に出掛けた。午前6時。まだ暗がりの中、人混みで思うように進めない。明るくなると、けた外れの人出に度肝を抜かれた。「きょうは1万人ぐらい。9割は地元だが、観光客も徐々に増えてきている」と朝市を運営する団体の1つ、湊日曜朝市会の上村隆雄理事長。天気のいい日は、3万人を超えることも珍しくないという。

 岸壁に沿い2列に並んだテントの数は約400張り。鮮魚、乾物、野菜、そば、パン、植木、骨董(こっとう)、電動工具、アクセサリー、インド料理、韓国料理、衣類、中古自動車…。冗談めかして言えば、ないものは土地と建物、墓ぐらい。イサバのカッチャと客のやりとりがあちこちで見られにぎやか。朝ご飯は、B-1グランプリ発祥の地・八戸の名物「せんべい汁」をすすり、体を温めた。

 今年の初市は3月13日に予定していたが、2日前の大津波で朝市の事務所やトイレなどが流され、数隻のイカ釣り漁船が打ち上げられ横倒しになった。漁船の撤去や施設整備に4カ月かかり7月3日に再開。今月29、30両日の臨時市が今年の止め市になるが、上村さんは「八戸の復興がほかの被災地の励みになれば」と力を込める。

東山魁夷氏が「道」のモチーフにした種差海岸通り=八戸市で

東山魁夷氏が「道」のモチーフにした種差海岸通り=八戸市で

 港の外れに、ウミネコの繁殖地として貴重な蕪島(かぶしま)が見えた。島から南の岩手県境近くまで12キロの種差(たねさし)海岸。リアス式海岸特有の荒々しさと白砂浜、天然芝に覆われ緩やかにうねる海岸縁が入り交じり、500種余の草花が咲き乱れる。葦毛(あしげ)崎展望台から競走馬の最終仕上げをするタイヘイ牧場の前を過ぎると、路肩に道柱が立っていた。東山魁夷氏(1908~99年)が代表作「道」(50年作)のモチーフにした、潮風を受けながら真っすぐに延びる道路だ。

 海岸伝いに青森から岩手、宮城、福島へつながる一筋の道。震災後、東北の絆を強める“希望の道”として、心のよりどころになっているようにも見えた。

 文・写真 奥田啓二

 (2011年12月16日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
東京駅から東北新幹線で七戸十和田駅まで約3時間20分。
飛行機は羽田空港から三沢空港まで約1時間20分、シャトルバスで八戸市中心部まで約50分。
蔦温泉はJR八戸駅から十和田湖駅行きのバスで十和田湖温泉郷下車(約1時間20分)、さらに青森駅行きのバスで蔦温泉下車(約25分)。

◆問い合わせ
八戸市観光課=電0178(46)4040。
蔦温泉旅館=電0176(74)2311=は本館と西館が通年営業。

おすすめ

十和田バラ焼き

十和田バラ焼き

★是川縄文館
八戸市埋蔵文化財センターとして7月に開館。
目玉は2009年、国宝に指定された風張遺跡の竪穴住居跡から見つかった約3500年前の土偶。祈るかのように正面で両手を合わせ、両ひざを立てて座る姿から「合掌土偶」と呼ばれる。
午前9時~午後5時。毎週月曜と年末年始休館。
観覧料は一般250円など。電0178(38)9511

★十和田バラ焼き
牛のバラ肉とタマネギをしょうゆベースの甘ダレで炒める郷土食。
十和田市内では創業45年の焼き肉店「大昌園」など約60店舗で食べられる。
1人前630円。同店は午前10時~午後10時、第2、4水曜休み。
電0176(23)4413

★駅前朝市
陸奥湊駅前の八戸市営魚菜小売市場を中心に魚介類、海藻、青果など200~300店が出店。
好みの食材とご飯、汁物でオリジナル朝食が楽しめる。
午前3時~正午。毎週日曜、第2土曜、1月1、2日休み。電0178(33)7242

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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