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徳島市

徳島市 徳島県 地元が愛し守る水都

藍色をたたえた流れの水都を見守る「眉山」(正面)。新町川河口付近から望む=徳島市で

藍色をたたえた流れの水都を見守る「眉山」(正面)。新町川河口付近から望む=徳島市で

 「四国三郎」と呼ばれ、かつて日本3大暴れ川と恐れられた吉野川。四国一の大河を筆頭に、大小138もの川が流れる徳島市は、藩政時代から明治30年代にかけ、母なる川の恵みで、藍染め染料の集散地として全国に名をはせた。その「阿波藍」が莫大(ばくだい)な富をもたらし、人形浄瑠璃などの文化をはぐくんだ水都。阿波の風土を映し出す水辺で、欧風のしゃれた青空市場に生まれ変わろうとしている。

 旧盆の4日間、町じゅうが躍動する阿波おどりを年間通して楽しめる「阿波おどり会館」からロープウエーで、水都を見守る「眉山(びざん)」(290メートル)に上った。「眉(まよ)のごと 雲居に見ゆる阿波の山 懸けて漕(こ)ぐ舟 泊り知らずも」(船王(ふねのおおきみ))。万葉集にも詠まれた秀峰から北を望むと、幅約1.3キロの河口が紀伊水道へ注ぐ雄大な吉野川の流れ。同川から少し南の中州に広がる徳島平野の中心は、新町川と助任(すけとう)川に挟まれひょうたんの形をした島。蜂須賀家が藩主を務めた徳島城跡の城山が緑をたたえる、島のとりでだ。

 山を下り、新町川に架かる両国橋のたもとから、ひょうたん島を周遊する小型遊覧船に乗り込んだ。周囲約6キロの島を約30分で巡る。運航するNPO法人の中村英雄さん(73)が、自分の庭でも見回るように船を操る。護岸は、庭石などに重用される徳島産「青石」で手厚く化粧が施されている。多彩な石積みが変化に富んだ幾何学模様を描き出し、アートを見ている気分。藍色をたたえた河口から新町川をさかのぼると、市中心部にせり出した眉山が正面に。川沿いには昭和初めまで藍倉が軒を連ね、「藍場浜」の地名が当時の名残を伝える。

 遊覧船は保険料の100円のみ。どうしてボランティアなのか尋ねると、20年以上前、汚れた川の浄化に立ち上がった中村さんは、「市民に川への愛情を取り戻してもらう1番の早道でした。1人の100歩より100人の1歩ですけん」。年間5万人が乗船するうち6割が地元。観光客にとっては、願ってもない“もてなし”になっている。

 
こだわりの品が並び、買い物客でにぎわう欧風の産直市「とくしまマルシェ」=徳島市で

こだわりの品が並び、買い物客でにぎわう欧風の産直市「とくしまマルシェ」=徳島市で

 新町川右岸沿いの両国橋から新町橋までの板張り遊歩道には、白いパラソルが林立し、人波ができていた。毎月最後の日曜日、フランスの市場(マルシェ)を手本にした産直市「とくしまマルシェ」のにぎわいだ。

 1周年のこの日は、1店舗1本のパラソルが約50本。トマト、イチゴ、マッシュルーム、ダイコン、シイタケ、ゆずジャム、バラ、県産米を飼料にした黄身が白い卵…。地元農家らが、こだわり抜いた農産物や加工品が並ぶおそろいの木箱は、キラキラした宝石箱にも見える。市場の仕掛け人、徳島経済研究所専務理事の田村耕一さんは、隆盛を誇った阿波藍のように「農産県の底力で、全国進出できるブランドに育ってほしい」と期待を込めた。

藍の葉の加工作業を再現した「藍の館」の展示像=藍住町で

藍の葉の加工作業を再現した「藍の館」の展示像=藍住町で

 「徳島藩25万石、藍50万石」といわれた阿波藍。一大栽培地だった藍の里を、同市と隣り合う吉野川左岸の藍住町に訪ねた。稲刈りの9月ごろになると、毎年のように台風で洪水に見舞われ、7~8月下旬に刈り取る藍栽培が定着した。洪水は肥沃(ひよく)な土を運び、連作を嫌う藍にとって適地だった。

 真夏に収穫した藍の葉を染料にするため、徹夜で加工作業に明け暮れた藍作人たち。過酷さ故に「『青は藍より出(い)でて藍より青し』といわれる色を『地獄の色』とも呼んだ」と町歴史館「藍の館」館長の阿部利雄さん(66)。深く鮮やかな日本の色として世界に知られる「ジャパン・ブルー」は、先人たちの魂がこもった色でもある。

 文・写真 奥田啓二

 (2012年1月20日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
徳島市へは新幹線岡山駅で下車、特急列車で約2時間。
高速バスは大阪駅から徳島駅まで約3時間、神姫三ノ宮から1時間50分。
空路は羽田空港から徳島阿波おどり空港まで約1時間10分、
リムジンバスで徳島駅まで約30分。

◆問い合わせ
徳島県観光協会=電088(652)8777、
とくしまマルシェ事務局=電080(4030)7140、
HPは「とくしまネットマルシェ」で検索。

おすすめ

弁天山

弁天山

★阿波おどり会館
JR徳島駅近くにあり、「連(れん)」と呼ばれるおどりの団体による公演、体験コーナーがある。昼の部は大人500円、小中生250円、夜の部は同700円、同350円。
2、6、10月の第2水曜休み。電088(611)1611

★日本一低い山
とくしま動物園近くの「弁天山」で標高6.1メートル。国土地理院も認定。
鳥居をくぐると、25歩ほどで登頂できる。2009年9月、当地でコンサートを開いたシンガー・ソングライター福山雅治さんが訪れたのが口コミなどで伝わり人気スポットに。
鳥居前の産直販売所で登頂証明書(1枚10円)を発行している。

★大塚国際美術館
国内最大級の陶板名画美術館。世界25カ国、190余の美術館などが所蔵するモナリザ、ビーナスの誕生など1000余点を特殊技術で原画と同寸に複製して展示。
一般3150円、大学生2100円、小中高生520円。
月曜休み。電088(687)3737

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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