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親鸞の足跡

親鸞の足跡 新潟県上越市 冬の荒波…極楽を思う

親鸞聖人が上陸したといわれる居多ケ浜の海岸。鉛色の空と海が広がっていた

親鸞聖人が上陸したといわれる居多ケ浜の海岸。鉛色の空と海が広がっていた

 本紙で連載された五木寛之氏の小説「親鸞 激動篇」で描かれた越後での親鸞と妻の恵信(えしん)の足跡をたどるため、かつての越後国府(新潟県上越市)に足を運んだ。日本海の港町・直江津の駅から歩きだすと吹雪。舞う雪が目に入り、痛い。親鸞は鎌倉時代初期の1207年、船で流人としてこの地に入り、居多ケ浜(こたがはま)海岸に上陸した。高さ10メートルほどの崖の上には、「親鸞聖人上陸の地」として、展望台などが整備されていた。

 目の前に広がる海は、冬の日本海特有の鉛色で、荒れていた。吹き付ける北風は激しく、そして冷たく、海鳥もいない。寂しい光景だが、親鸞もこの海を見たのだろうか。近くには「念仏発祥之地」の碑や親鸞の銅像が立っていた。

 35~42歳に越後で過ごした親鸞。上陸後、居多神社に参拝し、五智(ごち)国分寺に入った。最初の1年を境内の「竹之内草庵」で送った後、同寺を出て「竹ケ前(たけがはな)草庵」で暮らしたとされる。竹ケ前草庵跡には、本願寺国府別院が建てられている。

 居多神社では、宮司の花ケ前(はながさき)盛明さん(74)が「親鸞は冬の厳しい越後で過ごしたんですよ。雪のある季節こそ、(訪れるのに)よいのかもしれません」と迎えてくれた。

 親鸞の越後での記録は乏しいが、花ケ前さんは「間違いないのは、親鸞が居多ケ浜から海を見ていたことでしょう」という。親鸞は、その海に何を見たのか。それをうかがわせる“お宝”が同神社に伝わっている。日の丸の中に親鸞が自ら「南无阿弥陀仏」と書いた「日の丸の御名号」。日の丸は夕日を表すといわれる。

 花ケ前さんは「親鸞は居多ケ浜から海に沈む夕日の中に、極楽浄土を思ったのでは…」と解説した。冬の荒波を見ていたからこそ、穏やかな海に沈む夕日に極楽浄土が見えたのかもしれない。他にも海が親鸞の思想に影響を与えたという指摘は多い。ちなみに、同浜から夕日を見るベストシーズンは9月初めごろだという。

 
親鸞の銅像が立つ五智国分寺境内

親鸞の銅像が立つ五智国分寺境内

 続いて、五智国分寺へ向かった。現在の寺は戦国時代にこの地を支配した上杉謙信による再興で、親鸞のころの所在地はわからない。雪で覆われた境内に、親鸞の銅像が立っていた。寺のそばに親鸞が姿を映して座像を彫ったという「鏡ケ池」があった。

 本願寺国府別院を回り、光源寺へ。同寺では流罪を許された知らせを喜んだ親鸞が、自らを描いたとされる「流罪勅免御満悦御真影」を本堂で見ることができる。

 恵信の墓所(恵信尼公廟(えしんにこうびょう)所)がある「ゑ(え)しんの里記念館」(上越市板倉区米増)へも足を延ばした。スタッフが、前夜に30センチは積もったという屋根の雪下ろしをしていた。記念館には恵信の手紙などが展示され、人柄に触れることができる。

 約800年前から伝わる小さな五重塔が墓だといわれており、雪道を歩いて墓所に行ったが、半分は雪の中。わずかな晴れ間から、親鸞夫婦も見たであろう妙高山(小説中は「中山」)が姿を現した。雪の白さが際立ち、青空がすがすがしかった。

恵信尼公廟所では、ゑしんの里記念館スタッフが雪かきに追われていた=いずれも新潟県上越市で

恵信尼公廟所では、ゑしんの里記念館スタッフが雪かきに追われていた=いずれも新潟県上越市で

  文・写真 草間俊介

 (2012年1月27日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
直江津までは上越新幹線・越後湯沢駅からほくほく線、または長野新幹線・長野駅からJR信越線で。
親鸞聖人上陸の地は直江津駅から徒歩30分かタクシー。
居多神社、五智国分寺、本願寺国府別院、光源寺はそれぞれ徒歩5分。

◆問い合わせ
上越観光コンベンション協会=電025(543)2777

おすすめ

光源寺の流罪勅免御満悦御真影

光源寺の流罪勅免御満悦御真影

★居多神社
親鸞が居多神社に参拝し、念仏が盛んになるよう祈願したところ、一夜にして境内の葦(あし)の葉が一方向だけになったという伝説の「片葉の葦」が群生している。
「日の丸の御名号」は10人程度の団体で事前に電話予約=電025(543)4354=が必要。
流罪勅免御満悦御真影のある光源寺=電025(543)4263=などは事前に電話連絡するのがよい。
五智国分寺=電025(543)3069。
本願寺国府別院=電025(543)2742

★五智歴史の里会館
居多神社のそば。午前9時~午後6時。パンフレットなどがもらえる。
事前に頼めばボランティアガイドも可。電025(543)3222 

★ゑしんの里記念館
JR新井駅からタクシーで約10分。無料。
史料展示のほか、館内には売店、喫茶室も。
火曜日休館。午前9時~午後5時。電0255(81)4541

★春日山城跡
上杉謙信が居城とした山城。JR春日山駅から徒歩かタクシー。

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