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仏教遺跡群

仏教遺跡群 スリランカ 美しい眺めに巡礼の列

スリー・マハ菩提樹の下で、手を合わせる巡礼者たち=アヌラーダプラで
スリー・マハ菩提樹の下で、手を合わせる巡礼者たち=アヌラーダプラで

 2200年以上も前から、仏教信仰の中心地として栄えたスリランカのアヌラーダプラ。「スリー・マハ菩提(ぼだい)樹」の下、白い巡礼服に身を包んだ人たちが静かに経を唱える。お年寄りが手を合わせると、子どもがまねる。この国の世界遺産は観光地であるよりも前に、あつい信仰を集める聖地だ。

 「ここは私たちの『心臓』みたいな場所。病気のとき、子どもが生まれたとき、受験の前。いつでも来ます」と、参拝に来ていた写真館経営のランジさん(65)。ブッダがその下で悟りを開いたインド・ブッダガヤの菩提樹の分け木が紀元前3世紀に植えられ、立派な枝ぶりに成長した。

 かつて「セイロン」と呼ばれたスリランカは、北海道の0.8倍の広さ。仏教遺跡群と豊かな自然が残り、8つの世界遺産を誇る。30年近く続いた内戦がようやく終わり、安心して訪れることができた。

 
高さ約200メートルの巨岩「シーギリヤ・ロック」の上に築かれた「天空の王宮」跡=スリランカ・シーギリヤで
高さ約200メートルの巨岩「シーギリヤ・ロック」の上に築かれた「天空の王宮」跡=スリランカ・シーギリヤで

 古代都市・シーギリヤは、5世紀に11年間だけ都が置かれた。森にそそり立つ高さ約200メートルの巨大な岩「シーギリヤ・ロック」の上に宮殿の遺構や貯水池が残る。父を殺害して王位に就き、弟の復讐(ふくしゅう)を恐れた若き王は、岩の上に移り住むという非常識をやってのけた。急な階段を上った中腹の洞窟で、当時の貴重なフレスコ画「シーギリヤ・レディ」を鑑賞できる。繊細な線で生き生きと描かれた美女の目には、不思議な魅力が宿る。

 頂上に立つと、そこは「天空の王宮」と呼びたくなる眺め。息が上がった記者に、遠足の子どもたちが「全然疲れなかったよ」と笑いかける。心地良い風。鳥になれそうだ。

 
巡礼に訪れた仏歯寺の本堂で、花を供えて祈りをささげる子どもら=キャンディで
巡礼に訪れた仏歯寺の本堂で、花を供えて祈りをささげる子どもら=キャンディで

 「菩薩(ぼさつ)様や如来(にょらい)様。日本にはさまざまな仏像がありますが、この国はほとんどお釈迦(しゃか)様だけです」。日本僧侶の知人を頼り、京都市で暮らした経験があるというガイドのダルマさん(57)に両国の違いを問うと、こんな答えが返ってきた。インドまで約50キロ。日本と比べ、ブッダの存在が強く意識されているようだ。その象徴がキャンディにある。

 ブッダの遺骨はインド各地の国に分散された。4世紀、インドでヒンズー教が勢いを増すと、左の犬歯をまつる国の王は危機感を抱き、娘夫婦に歯を託しアヌラーダプラに亡命させた。以降、遷都のたびに歯も移され、英国植民地となる1815年まで都だったキャンディの仏歯寺(ぶっしじ)が終着点に。仏歯が安置されている本堂では、巡礼者たちが次々とハスの花を供えていた。

 毎年夏には、国内最大の祭り「キャンディのペラヘラ祭」でにぎわう。仏歯を収めた仏舎利が、きらびやかな衣装のゾウの背中に載せられて市街地を練り歩き、悪霊払いの踊り「キャンディアン・ダンス」も披露される。

 内戦は、人口の多数を占めるシンハラ人の政府に、東北部を拠点とするタミル人の組織が独立を求めたもので、2009年5月に終結した。これまで政府の手が回らず、傷んで穴だらけになっていた幹線道路で、修復工事が急ピッチで進む。

 自然石に彫られた14メートルの涅槃仏(ねはんぶつ)や荘厳な天井画が残るダンブッラの石窟「黄金寺院」。家族親戚9人で参拝に来ていた会計士スジーワさん(45)は「内戦が終わり、安心して旅行できる」と喜ぶ。「これまで欧州系の観光客が多かったけれど、同じ仏教国の日本人は、美しい仏像と遺跡の国をもっと好きになってくれると思うな」

 日本に親近感を抱いてくれている人々。心安らげる国を再発見した。

 文・写真 太田鉄弥

(2012年2月3日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
シンガポール航空は、中部国際空港と成田空港からシンガポール経由でコロンボへ毎日運航。
問い合わせは、東京予約センター=電03(3213)3431。
スリランカ航空は、成田空港からコロンボへ土日曜に直行便。
3月26日からは月木曜にも直行便が就航する。
問い合わせは、東京事務所予約案内=電03(3431)6600

◆ツアー
中日旅行会が7月27日出発で8日間のツアーを企画。
ペラヘラ祭やゾウの孤児院、5つの世界遺産を巡る。
問い合わせは同旅行会=電052(231)0800

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★ピンナワラのゾウの孤児院
キャンディから西へ車で約2時間の町キャーガッラ郊外にある国営施設。
開発による森林伐採の影響で、群れからはぐれた子ゾウ、障害のあるゾウなど70頭を保護。
午前と午後の2回、水浴びのため川との間を小走りで往復する群れの迫力は圧巻。
1日3回のミルクの授乳も見どころ。

★マータレー
キャンディから北へ車で1~1時間半の町。
ハーブとスパイスの一大産地で、観光客向けのハーブ園では、
収穫前の実や葉を見ながら説明を聞くことができ、土産品の即売も。

★アーユルベーダ
インドから仏教とともに持ち込まれた伝統医術で、リゾートホテルなどでエステとして体験できる。
ハーブとオイルを使ったマッサージで、癒やしを求める観光客に人気。

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