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ワルシャワ

ワルシャワ ポーランド 波乱の歴史語る街並み

 ポーランドが生んだ偉大な作曲家の名前を付けたワルシャワ・フレデリック・ショパン空港から市中心部に近づくと、威圧感のある巨大建築物が見えてきた。高さ237メートル、42階建ての「文化科学宮殿」だ。会社経営のアナさんが「“スターリンの贈り物”と皮肉を込めて呼ばれている」と教えてくれた。

「スターリンの贈り物」とも呼ばれる42階建ての「文化科学宮殿」

「スターリンの贈り物」とも呼ばれる42階建ての「文化科学宮殿」

 宮殿は、旧共産圏時代の1952年に建築が始まり、完成まで4年。旧ソ連が建設した。アナさんによると、91年の旧ソ連崩壊後に「もうスターリンでもあるまいし、民主化が進む中、取り壊すべきだ」という世論が巻き起こったこともあった。この議論1つとっても、周辺の大国に翻弄(ほんろう)されてきたポーランドの歴史の一端を垣間見ることができる。

 ポーランドは、国土を失った過去がある。18世紀末にはロシアなどに3分割された。1917年のロシア革命の翌18年に再び独立を果たしたが、第二次世界大戦ではナチス・ドイツと旧ソ連に占領され、ワルシャワは焦土と化した。
 

 
ナチスに徹底抗戦した兵士像が並ぶ「ワルシャワ蜂起記念碑」=いずれもポーランド・ワルシャワで

ナチスに徹底抗戦した兵士像が並ぶ「ワルシャワ蜂起記念碑」

 まだ肌寒い中、悲劇が繰り返された歴史を振り返りながら宮殿から北へ20分ほど歩くと、中世を思わせる旧市街が広がったが、ここも戦中に破壊しつくされた。しかし、戦後、住民たちが「壁の割れ目にいたるまで元に戻そう」と、強い意志で復元した街並みという。

 ハトが飛び交う旧市街の石畳の市場広場には、人魚像がたたずみ、料理店や貴金属店も並ぶが、周辺には多くの戦災関連施設があった。戦いに向かう兵士像が並ぶ「ワルシャワ蜂起記念碑」もその1つ。ナチス占領下の44年の蜂起では、装備で圧倒的に劣る市民軍が徹底抗戦。一時は解放区をつくったが、最後は鎮圧され、非武装の市民も含め20万人以上が犠牲になったとされる。それから45年後に建てられた兵士像には、悲壮感が漂っていた。

 近くにある18世紀に造られたサスキ公園には、「平和が続くように」との願いが込められた「無名戦士の墓」があった。祖国のために命を落とした戦士が眠る墓前には、2人の衛兵が直立不動で立っていた。

 街のそこかしこに、戦争の歴史が残るワルシャワだが、「ピアノの詩人」とも呼ばれるショパンが育った街として、世界中から観光客が押し寄せる。

 病弱だったショパンは、音楽家として成功しながらも39歳でパリで亡くなった。パリで埋葬されたが、故郷への強い思いを抱いていた本人の遺志から、心臓だけワルシャワに戻され聖十字架教会の柱のひとつに埋められている。教会の分厚い扉を開けて中に入ると、平日午後にもかかわらず、薄暗い中で多くの市民が祈りをささげていた。

戦後、住民たちによって復元された旧市街地の市場広場=いずれもポーランド・ワルシャワで

戦後、住民たちによって復元された旧市街地の市場広場=いずれもポーランド・ワルシャワで

 旧市街地の近くで生活したショパンが通ったカフェ「テリメナ」やポーランド料理店「ホノラトカ」は今も残っており、カフェをのぞいてみた。
 
 大理石や木製の小型テーブルが8つ並び、20人も入れば満員のこぢんまりとした空間。光が差し込む大きな窓越しに行き交う人を眺めながら、コーヒーをすすると創作意欲が湧いてくるような気がした。ウエートレスのクラウディアさんに聞くと「そう言う方、いらっしゃいますが、成功したという話は聞いたことありません」。

 文・写真 鈴木伸幸

(2012年3月23日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
日本からの直行便はなく、コペンハーゲン、ロンドン、フランクフルトなど経由でワルシャワへ。

◆問い合わせ
ポーランド政府観光局=電03(5908)3808。
同局の公式サイト(日本語)も情報が充実している。
ホームページはこちら

おすすめ

カフェ「テリメナ」

カフェ「テリメナ」

★スープ「ジュレック」
発酵したライ麦汁を使った地元料理。白濁していて酸味が特徴。
具材はソーセージとゆで卵が基本。
ほとんどの料理店にあるが、味付けや具材は異なる。
現地ガイドによると「日本人の口に合うようで、はまる人が多い」。

★ショパン博物館
ショパンの生誕200周年の2010年にリニューアルオープン。
ショパンが最後に使ったとされるピアノや自筆の譜面などもある。
月曜休館、午前10時~午後6時。
人数制限があり、ホームページ(館名で検索)から事前予約がお勧め。
カフェ「テリメナ」は博物館から徒歩20分。

★ショパンの生家
ワルシャワから西へ約50キロのジェラゾバボラにある。
ショパンは1810年に生まれ、その年にワルシャワに移ったが、生家をしばしば訪れていたという。

★ユーロ2012
サッカーの第14回UEFA欧州選手権がポーランド、ウクライナ共催で6月8日~7月1日に開催。
両国の各4都市で試合が行われる。
前回の08年大会はスペインが優勝した。

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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