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宮古、盛岡市

宮古、盛岡市 岩手県 復興を願い見て、食べて

遊覧船「陸中丸」でウミネコと戯れる観光客。船上からは奇岩も堪能できる=岩手県宮古市で

遊覧船「陸中丸」でウミネコと戯れる観光客。船上からは奇岩も堪能できる=岩手県宮古市で

 岩手県宮古市の駅前を散策してから、老舗のすし店に入った。にぎりずしを頼んだところ、新鮮なネタで口の中がとろけるよう。粋な店主は「大半が地物。間もなく地のウニも入るよ。ここは海の幸が豊富だからね」と胸を張った。

 同市は東日本大震災で大きな被害を受けた。出発前は被災地の“観光”に少し気が引けたが、現地入りしてみると、観光は予想以上に盛り上がっており、地元の人たちの復興にかける熱意が伝わってきて頭が下がる思いがした。

 宮古観光のハイライトの浄土ケ浜遊覧船へ。すでに団体客ら約200人が遊覧船「陸中丸」に乗船していた。陸中丸は地震の大きな揺れを感じた坂本繁行船長(62)が機転をきかせてすぐ沖へ向かい、難を逃れた1隻。そう聞いただけで、この船が特別なものに見えてくる。

 船は海岸線沿いを北に進む。乗客が与えるパンを狙って無数のウミネコが集まってきた。慣れたもので、パンをつまむとさっと離れる。しばらくして再びおねだり。その姿は愛らしく、震災前から遊覧船の名物である。

 神奈川県から来たという女性(63)は「今回が5回目。昨年は震災で来られなかったが、復興してよかった。素晴らしい眺めは変わらないです」。津波の爪痕をマイクで説明するガイドの金沢明美さん(54)に乗客たちは耳を傾けた。金沢さんが「喜びも悲しみも幾歳月」を熱唱すると、乗客からすすり泣きも。

 切り立った岸壁「姉ケ崎」や国の天然記念物「日出島」、浄土ケ浜北側の「ローソク岩」、海水を霧状に噴き上げる「潮吹穴」-などの名所を見ながら、約40分間のクルージングを堪能した。

 
かつての美しい姿がよみがえった「浄土ケ浜」=岩手県宮古市で

かつての美しい姿がよみがえった「浄土ケ浜」=岩手県宮古市で

 下船して20分ほど歩くと、浄土ケ浜。鋭くとがった白色流紋岩、紺ぺきの海のコントラスト。震災前と少しも変わらない。

 「観光客は確実に戻り始めています。大型連休が楽しみ。皆さん、地元の人情にぜひ触れていただきたい」と宮古観光協会の山口惣一事務局長は話す。

 続いて三陸鉄道北リアス線で田老駅へ。宮古駅から約13キロの間にトンネルが11。スピードはゆっくりめ。まるでトロッコのようで情緒がある。

 高台にある田老駅から海側を望むと、スーパー防潮堤を越えてきた津波で被害を受けた田老地区が広がる。地区の建物のほとんどが壊滅し、今も所々に壊れた車の山が見える。

 「鉄道に乗る観光客もいま1日100人ほど。被災地を応援したいという家族連れも多いんです」とスタッフは言う。

 同鉄道の望月正彦社長は「いつも汽笛を多めに鳴らそうな。お客さんに鉄道は健在だと知らせるんだ」と運転士たちに声をかけている。

 同鉄道の全面復旧は2014年4月の予定。その時はもっと大きな汽笛が沿線に響き渡るだろう。そんな思いを抱きながら、バスで盛岡駅へ向かった。

女性店員の掛け声で「わんこそば」に挑戦する観光客=盛岡市で

女性店員の掛け声で「わんこそば」に挑戦する観光客=盛岡市で

 盛岡に来たら、やはりわんこそば。駅前の1軒に入った。ゆでたてのそばを次々と、客のおわんに入れる女性店員が場を盛り上げてくれる。

 「観光で足を運んでいただくのも支援になります」との声があちこちから聞こえてきた。また岩手の食材、自然や文化を楽しもうと思った。

  文・写真 長竹孝夫

 (2012年4月20日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
東北新幹線で盛岡駅へ。
同駅から宮古駅まではJR山田線の快速列車で約2時間。
または、盛岡駅前からの定期バスで。

◆問い合わせ
宮古観光協会=電0193(62)3534

おすすめ

新鮮な魚介類のすし

新鮮な魚介類のすし

★三陸鉄道
北リアス線(宮古-久慈間71キロ)のうち田野畑-小本間10.5キロが不通。
南リアス線(釜石-盛間36.6キロ)は全線不通。
南北とも2014年4月の全線復旧を目指す。

★学ぶ防災
田老地区で3.11の体験を聞くことができる。
有料(話をする体験者の派遣費用)。約1時間。
事前に宮古観光協会の担当者=電0193(77)3305=に申し込む。

★すし店
宮古市内では約10軒のすし店が営業中。
新鮮な魚介類のすしがお薦め。
ランチセットが1000円前後からある。

★宮古市魚菜市場
JR宮古駅から徒歩約8分。
地元で水揚げされた魚介類や地元の野菜が並ぶ。午前6時半~午後5時半、水曜休。

★道の駅「やまびこ館」
国道106号沿い。中のレストラン「もうもう亭」では、辛いみそ味のラーメン「ドラゴン麺」が人気。
特産の黒豆を使った「黒豆ソフトクリーム」も。
午前8時~午後6時半。電0193(85)5011

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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