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デイゴとサンゴ

デイゴとサンゴ 沖縄県 自然の再生に熱い絆

満開のデイゴの下で、「これからも元気でいてほしい」と祈る与那国光子さん=沖縄県竹富町で

満開のデイゴの下で、「これからも元気でいてほしい」と祈る与那国光子さん=沖縄県竹富町で

 「これからも元気で咲き続けてほしい」。沖縄本島から南西に約400キロ離れた八重山諸島の玄関口、石垣島の沖に浮かぶ竹富島。東桟橋近くの道路を歩いていると、鮮やかな深紅の花を見上げながら、女性が祈り始めた。

 花は沖縄で最も過ごしやすい「うりずん」(潤い初め)の季節(2~4月)到来を告げる沖縄県花のデイゴ。県内では5月中ごろまでが開花シーズンという。竹富島中央の集落につながる道沿いには、約800メートルにわたり60本余りの並木が続く。灰緑色でゾウの脚のような幹から絡み合うように伸びる枝に葉はほとんどなく、枯れ木のようにも見えたが、並木の真ん中まで来ると満開の木を見つけた。

 「ここは沖縄でまとまったデイゴが見られる場所」。豊かな自然に魅せられ38歳で脱サラし、フリー写真家として沖縄の原風景や島の暮らしを撮り続ける大阪市出身の大塚勝久さん(70)=那覇市在住=が案内してくれた。

 初めて見る花は大人の手のひらより一回り大きく、細身の花びらは鳥の羽のよう。南国の情熱的な姿に見とれていると、目の前に止まったマイクロバスの運転席から降りてきたのは与那国光子さんだ。毎秋、五穀豊穣(ごこくほうじょう)と子孫繁栄を祈る島最大の祭事「種子取祭(タナドゥイ)」で天と集落を取り持つ「神司(かんつかさ)」を務めているといい、デイゴに両手を合わせると「今年も咲いてくれてありがとう」と、いとおしんだ。

 与那国さんが祈りをささげたのには、訳があった。2005年に石垣島でデイゴの花が咲かなくなり、木が枯れる被害が確認されて以来、瞬く間に沖縄全域に被害が広がった。原因は、台湾で03年に大量発生した害虫。竹富島でもほとんどが開花せず、石垣島の観光名所、川平湾に面した公園では数10本のうち駐車場の1本を残しすべて枯れた。

写真

 両島ではデイゴの再生に取り組む市民団体が立ち上がり、高価な駆除剤購入費の募金や薬剤注入の活動を始めた。「琉球漆器や舞踊のお面の材料になるデイゴの木は、琉球文化の一端を支えてきただけに再生への機運が盛り上がった」と、NPO花と緑の石垣島の東浜妃敏(あいはまひとし)事務局長。

 駆除剤の効果もあり昨春、6年ぶりに開花した竹富島では、東日本大震災で自粛した感謝祭をこの春、種子取祭の会場である拝所の世持御嶽(ユームチオン)で催した。竹富島のデイゴを救おう!実行委員会委員長の上勢頭芳徳さん(68)は「卒業式や入学式シーズンに咲くデイゴは島人の心象風景。なくてはならない花」と力を込める。

 
水槽で生き生きと育つ色とりどりのサンゴ=沖縄県読谷村で

水槽で生き生きと育つ色とりどりのサンゴ=沖縄県読谷村で

 沖縄の自然を象徴するサンゴも、リゾート開発や温暖化などで死滅が進み深刻だ。そのサンゴを沖縄本島中部の陸上で育て、海に戻している「さんご畑」(読谷村)を訪ねた。海沿いに白いサンゴをイメージしたいくつもの水槽が、日当たりを均等にと棚田のように並ぶ。目の前には、瑠璃色の海と潮が引いた浅瀬に黄緑色のレースを敷き詰めたようなアオサが輝く海岸が広がっている。

 周囲30メートルのいけすやドーナツ形の水槽は、ろ過器を使わない人工のサンゴ礁。株分けした色とりどりのサンゴ120種類が育ち、スズメダイやクマノミなどのカラフルな熱帯魚が泳ぎ回る。施設を運営する「海の種」代表の金城浩二さん(41)は1998年、海水温が高くなるエルニーニョ現象で、サンゴの白化現象が広がったのをきっかけに、沖縄市街地の建物内で養殖を始め、2年前から現在地で事業を本格化させた。

 これまでに移植したサンゴは4万株を超えた。「生きものがあふれていた子どものころの海を取り戻したい」。少年時代、海遊びに夢中だった金城さんの目に、果てしなき挑戦への決意がにじむ。デイゴの花言葉「夢」をあきらめない人たちの思いは、自然との絆でつながっている。

 文・写真 奥田啓二

 (2012年4月27日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
交通 那覇空港へは中部国際空港から約2時間20分、羽田空港から約2時間35分。
石垣空港への直行便は羽田から約3時間15分。
中部国際からは那覇で乗り継ぎ約1時間。
竹富島には石垣港離島ターミナルから高速船で約10分。

◆問い合わせ
沖縄観光コンベンションビューロー(月~金、午前8時半~午後5時15分)=電098(859)6123
▽竹富島のデイゴを救おう!実行委員会=電0980(85)2202
▽NPO花と緑の石垣島事務局=電0980(88)8739

おすすめ

ワラの結び目数や長さなどで収穫量や島の人口などを記録しておくのに考案した「藁算(わらさん)」

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★さんご畑
那覇から車で約1時間。残波岬手前の塩造り体験施設「Gala青い海」が目印。
夏季は午前10時~午後6時で、12月31日~1月3日休み。
見学は大人900円、学生(高校生以上、専門学校生含む)600円、中学生以下無料。
電098(982)9988

★喜宝院蒐集(しゅうしゅう)館
日本最南端の浄土真宗「喜宝院」に併設された竹富島の歴史民俗資料館。
儀礼用具など4000点を展示。文字の読み書きができない農民が、ワラの結び目数や長さなどで収穫量や島の人口などを記録しておくのに考案した「藁算(わらさん)」は国の登録有形民俗文化財。
午前9時~午後5時(種子取祭休み)。大人300円、小人150円。電0980(85)2202

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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