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食と自然…

食と自然… 香川県 絶景と新鮮な地元食材

絶景ポイントである豊島の最高峰・壇山から高松方面を一望する=香川県土庄町で

絶景ポイントである豊島の最高峰・壇山から高松方面を一望する=香川県土庄町で

 今や全国区の「讃岐うどん」。日本一面積が小さい香川県には約900店もある。昨秋からは、知名度抜群の地域ブランドにあやかり、しゃれっ気たっぷりに同県が架空の「うどん県」に改名宣言したとの観光キャンペーンを立ち上げ、うどん以外の自然、食、アートもアピールする。

 高松空港に近い、高松市内の行列のできるうどん店「もり家」へ。ランチタイムを過ぎても客足が絶えない。店の中央にはおでんがぐつぐつ。うどんができるまでおでんをつまみながら待つのが流儀だ。

 頼んだのは、店の一番人気「かき揚げおろしうどん」。手のひら大もあるかき揚げの上からつゆをたっぷり。歯を押し返すような麺の弾力。かむほどにうま味が広がった。

 「うどんは天気次第で“顔”が変わるので、表情を見ながらゆで時間を変えるのがミソ」と店主の森田真司さん(55)。毎朝5時から午前10時半の開店まで、生地を丹念に足踏みし、熟成させる。機械は一切使わずすべて手打ち。客の笑顔を見れば、そのこだわりが本物であることがわかる。

 
時代を超えて息づく国の特別名勝・栗林公園=高松市で

時代を超えて息づく国の特別名勝・栗林公園=高松市で

 満たされたおなかを抱えながら、同市内にある国の特別名勝・栗林(りつりん)公園へ。江戸時代初期から100年以上の歳月をかけ造られた回遊式大名庭園だ。2009年版「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では最高評価の三つ星を獲得した。広さは東京ドーム16個分。紫雲山を背に6つの池と13の築山、1400本の松が凜(りん)とたたずみ、歩くたびに景色が変わる一歩一景に心が躍った。

 思わず足を止めたのは、箱松やびょうぶ松の見事な枝ぶり。職人たちが伝統の技で、300年以上継承してきた造形美でもある。歩き疲れたら、藩政時代の歴代藩主も愛したという茶室「掬月亭(きくげつてい)」で抹茶を頂く。静寂に浸り、ゆるやかな時間に身をゆだねると、心が自然とほぐれた。

 伝統に親しんだあとは、フェリーで瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)へ。10年の瀬戸内国際芸術祭では中心になっただけに、アート好きの若者らに人気。島の絶景ポイントは中央にある壇山(標高340メートル、土庄町(とのしょうちょう))。太陽の光が瀬戸内海に反射して島々を照らす。さわやかな風に吹かれると疲れも吹き飛んだ。

瀬戸内海の食材で「島キッチン」のお母さんたちが作る料理は絶品=土庄町で

瀬戸内海の食材で「島キッチン」のお母さんたちが作る料理は絶品=土庄町で

 壇山のふもとには清らかで豊かな水が流れ、田畑を潤す。新鮮な魚介類も豊富。古民家レストラン「島キッチン」では、地元産の食材をふんだんに使った料理を味わうことができる。作っているのは、香川の食材に興味を持つ東京都内のホテルのシェフから指導を受ける地元のお母さんたち。藤崎令子さん(66)は「お客さんに喜んでもらえることが生きがいにもつながっている」と笑顔を見せた。

 再びフェリーに乗り、オリーブの国内栽培発祥の地、小豆島に渡った。散策していると、香ばしいもろみの香りが漂ってきた。醤油(しょうゆ)の産地でもあり、昔ながらの杉たるでこだわりの醤油をつくる明治元年創業のヤマロク醤油(小豆島町)を訪ねた。酵母菌などで黒くなった土塀などが歴史を物語る。5代目の山本康夫さん(39)は「原料の高騰で厳しい時代だが、本物を子や孫に受け継がせるために頑張りたい」と話す。

 地元では、香川県善通寺市生まれの弘法大師空海が唐の都・長安に留学中に麺作りを習得し、帰国後うどんを広めたと伝わる。が、うどんの“聖地”には、空海がもたらした遺産だけではない歴史と文化、人情が根付いていた。

 文・写真 佐藤あい子

(2012年5月25日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
高松空港から高松市内までは車、リムジンバスなどで約40分。
豊島、小豆島へは岡山・宇野港、香川・高松港などからフェリーの定期便がある。

◆問い合わせ
香川県観光協会=電087(832)3377

おすすめ

★栗林公園
高松空港から車で30分。JR栗林公園北口駅から徒歩3分。
入園料は大人400円、中学生まで170円。
今月の開園時間は午前5時半~午後6時半(日照時間に合わせ変動)。

かき揚げおろしうどん

かき揚げおろしうどん

★もり家
高松空港から車で10分。午前10時半~午後8時。木曜定休。
祝日は営業。お薦めの「かき揚げおろしうどん」は580円。
通信販売あり。電087(879)8815

★島キッチン
港からシャトルバスで清水前または唐櫃(からと)岡集会所前で下車、徒歩3分。
土日祝日のみ営業だが季節により変動。
午前10時半~午後4時半。電0879(68)3771

★ヤマロク醤油
約2年の熟成期間を経て完成した生醤油をもう一度たるに戻し、再び塩以外の原料を加えて2年ほど仕込む再仕込み製法の「鶴醤」と丹波黒豆で造る「菊醤」の2種類。蔵の見学可。無休。
午前9時~午後5時。通販あり。電0879(82)0666

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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