【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. チトワン国立公園
チトワン国立公園

チトワン国立公園 ネパール 野生動物たちが間近に

野生のインドサイを見つけ、ゾウの上から観察する観光客たち=ネパール・チトワン国立公園で

野生のインドサイを見つけ、ゾウの上から観察する観光客たち=ネパール・チトワン国立公園で

 ネパールといえば、エベレストをはじめとする山々を思い描くが、ヒマラヤ山脈に背を向け、首都カトマンズから南西へ80キロ。インドと国境を接するチトワン国立公園に向かった。

 1984年、世界遺産になった公園は、広大な森と草原が広がる。インドゾウやベンガルトラ、インドサイといった希少な野生動物の宝庫で、かつてはネパール王室の狩猟場だった。近年は欧米や中国、インドからの観光客が増え、最寄りのソウラハ村ではリゾートホテルが急増している。

 観光の目玉は、インドゾウに乗って森林の中を巡る「エレファントサファリ」。29歳の雌ゾウは、ネパール語で「いたずら娘」という意味。振り落とされないよう、道中の無事を祈る。

 木々の間をゆっくり進んでいたゾウの歩みが、ゾウ使いの合図で急に速まる。と、前方に大きな動物。近づくと、体長3メートル以上はありそうなインドサイだ。初めて見る野生のサイの迫力に緊張する。サイは悠然と草を食べていたが、後続のゾウたちが追いついて取り囲むと、危険を感じたのか、顔を上げて肩を震わせる突進の構えに。慌てて先を急いでもらった。

 その後も「いたずら娘」のコース取りが良かったせいか、クジャクやイノシシ、大きなトカゲなどを見つけられた。途中で渡った川では、水面から鼻先を出すワニの姿も。約1時間半の道中で、豊かな自然とスリルを満喫できた。

 唯一残念なのは、ベンガルトラを見られなかったことだ。雪辱を期し、より広い範囲を車で回る「ジープサファリ」に臨んだが、4時間近くかかって見つけたのはトラのフンどまり。現地ガイドによると、トラは警戒心が強くて森の奥深くに潜むため、よほど運が良くないと人前に現れないらしい。

 
広場の夕市に新鮮な野菜や果物を並べる女性たち=カトマンズで

広場の夕市に新鮮な野菜や果物を並べる女性たち=カトマンズで

 カトマンズに戻ると、そこは人口500万人超の大都会。幹線道は車の排ガスと、舞い上がるほこりがすさまじい。ただ、大通りを少し離れれば、ヒンズー教の寺院を中心とする歴史的な町並みが残る。市内で旅行会社を営むニルマニ・シュレスタさん(44)は「ネパール人はみんな穏やかで、伝統を大切にするんだ」と誇らしげに話す。「家族と楽しく暮らせれば、ほかに何が必要? 国の経済発展は進まないけど、ちっとも構わない」とも。生まれ育った旧市街地を案内してもらうと、人々の落ち着いた暮らしが広がっていた。

 広場には、鮮やかな野菜や果物、香辛料などの露天商が並び、女性たちは延々と井戸端会議を続ける。おそらく何百年も前から変わらない光景なのだろう。

 生き神として市民の信仰を集める「クマリ」も見ることができた。クマリは旧市街地の仏教徒の家庭から選ばれる初潮前の少女。家族と離れて専用の館で暮らし、人々の願いの成就を祈る。館の窓からひょこっと顔を出したクマリを現地の作法通り、両手を合わせて拝む。なんとなく敬虔(けいけん)な気持ちになる。

 
エベレスト(中央奥)が見えると、神々しい姿に機内で一斉に歓声が上がった=ネパールで

エベレスト(中央奥)が見えると、神々しい姿に機内で一斉に歓声が上がった=ネパールで

 やはり世界最高峰の山は見ておきたいと、小型機で高度6000メートルからエベレストを望む「マウンテンフライト」にも参加した。空港をたって30分。キャビンアテンダントが指し示す方向を目で追うと、まごうことなきエベレストが見えた。天を突くような姿は、神々しいのひと言。熱い思いが込み上げ、思わず目頭を押さえた。

 空港で待っていたシュレスタさんに感動を伝えると「素晴らしかったでしょう。同じように涙を流す人は多いよ」。機上で目に焼き付けた威容を思い返し、深くうなずいた。

 文・写真 字井章人

(2012年6月1日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
日本からの直行便はない。
バンコク、香港や中国・広州などを経由してカトマンズへ。

◆問い合わせ
ネパール大使館=電03(3713)6241

おすすめ

ダルバート・タルカリ

ダルバート・タルカリ

★タルー族の村
チトワン国立公園の近くに住む先住民族タルーは、水牛や羊などの家畜を飼い、手製の漁具で川魚を捕って暮らす素朴な人々。
ソウラハ村から牛車や馬車に乗って見学できる。

★ダルバール広場
カトマンズ旧市街の中心部。複数の寺院が立ち、クマリの館や旧王宮に面している。
外国人は500ルピー(約500円)の入場料が必要。

★ダルバート・タルカリ
コメに豆のスープをかけ、野菜いためや漬物を混ぜて食べるネパールの定番メニュー。
コメとスープはおかわり自由が基本。
香辛料がたくさん使われて、カレーに近い味。70ルピー(約70円)。

★ツアー
中日ツアーズが11月9日出発で8日間のツアーを企画。
チトワン国立公園でエレファントサファリやカヌーでのバードウオッチングなどを体験。
カトマンズではネパールで2番目に大きい祭り「ティハール祭」を見学する。
問い合わせは中日ツアーズ=電052(231)0799=へ。

自然・絶景の宿泊情報

一覧

    現在この情報はありません。

自然・絶景のツアー情報

一覧

    現在この情報はありません。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外