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屋久島

屋久島 鹿児島県 太古の森で深呼吸

朝もやがかかった縄文杉は、荘厳で幻想的な雰囲気を漂わせていた=鹿児島県屋久島で

朝もやがかかった縄文杉は、荘厳で幻想的な雰囲気を漂わせていた=鹿児島県屋久島で

 屋久島空港に降り立つと、むせ返るほどの濃い新緑の香りが出迎えてくれた。1800メートルを超える山々が連なり、「洋上のアルプス」と呼ばれる屋久島(鹿児島県)。今回の目的は、そのてっぺんに立ち、巨樹に会うこと。九州最高峰の宮之浦岳(1、936メートル)から縄文杉を歩く1泊2日、全長22キロの縦走登山ツアーだ。

 午前7時、淀川(よどごう)登山口(1、370メートル)を出発する。ガイドは屋久島野外活動総合センターの樫村精一さん(35)。登山初心者の記者にとって、頼もしい存在だ。他にそれぞれ一人旅で来た大阪府の女性(27)と三重県の男性(34)が参加した。

 霧が立ちこめる薄暗く深い森の中、むき出しの木の根が絡み合う道を進む。スギやヒメシャラの大木に囲まれ、低木の葉やコケは水を浴びて生き生きと輝いている。みずみずしい空気が気持ち良くて深呼吸が止まらない。

 屋久島は水の島とも呼ばれる。年間降水量は平地で約4500ミリ、山間部で1万ミリ前後に達し、日本屈指の多雨地帯だ。林芙美子の小説「浮雲」では「月のうち、35日は雨」とうたわれるほど。常に新鮮な水が島全体を循環し、飲み水や電気として人々の暮らしを支えている。

 森を歩いてしばらくすると、突然、視界が開け湿原に出た。日本最南端の高層湿原「小花之江河(こはなのえごう)」と「花之江河」。木道を進んだ。昼ごろ、森林が生える限界を超えると、辺りはササの草原に変わった。緑の尾根を望むと、所々巨大な岩が顔を出し、翁岳(1、860メートル)や安房岳(1、847メートル)が目の前にそびえ立つ。

 宮之浦岳の山頂に近づくにつれ、急な登りが続く。きつくて立ち止まる。振り返り見る壮大な景色に背中を押され、呼吸を整えてまた一歩ずつ踏み出す。ようやくたどり着いた島のてっぺんは、曇り空でも大きな達成感があった。

 夕方、避難小屋の「新高塚小屋」に到着。樫村さんに作ってもらった料理で冷えた体が温まった。夜はこの小屋の中にテントを張って就寝。森のざわめきや激しい雨音で、なかなか寝付けなかった。

 
宮之浦岳を目指す途中、森林限界を超えると視界が開け、1800メートル級の翁岳(左)や安房岳が現れた

宮之浦岳を目指す途中、森林限界を超えると視界が開け、1800メートル級の翁岳(左)や安房岳が現れた

 2日目は、早朝に小屋を出発した。縄文杉との対面を演出するかのように、ひときわ大きな杉が3本、次々と目に飛び込んでくる。「これで直径が2メートル。十分立派な屋久杉です」と樫村さん。

 屋久島では、樹齢1000年以上の杉を屋久杉と呼ぶ。その育つ環境は過酷だ。雨が多すぎて土が流れ、根から十分な栄養が吸収できない。日光は少なく、毎年台風や雪にさらされる。「屋久杉の成長スピードは遅い。だからこそ、強くて長生きするんです」。それが太古の昔から姿を変えない森を生み、日本初の世界自然遺産になった。

 午前8時すぎ、まだ誰もいない縄文杉にたどり着いた。直径5メートル、推定樹齢2170~7200年。幹の太さも、存在感も他の屋久杉を圧倒する迫力がある。説明を聞いて、そこに立っているだけで奇跡だと思えた。

 下山後、温泉につかり疲れを癒やした。参加者全員で「頑張って、歩きました!」と乾杯。何度来ても、屋久島には元気をもらえる。また、島に呼ばれる日を楽しみにしたい。

 文・写真 発知恵理子

 (2012年6月8日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
空路は羽田、中部国際空港などから鹿児島空港で乗り継ぎ、35分で屋久島空港へ。
船は鹿児島本港から屋久島(宮之浦港、安房港)まで高速船で1時間45分~3時間、フェリーで約4時間。

◆問い合わせ
屋久島観光協会=電0997(49)4010

おすすめ

高層湿原

高層湿原

★エコツアー
屋久島野外活動総合センター(YNAC)は屋久島でエコツアーガイドを始めた草分け的存在。
高層湿原などを歩く宮之浦岳登山、縄文杉トレッキングやダイビング、沢登りなど自然を丸ごと楽しめるツアーを提供している。
料金は大人の場合、1日1万5000円、1泊2日3万5000円など。HPは「YNAC」で検索。電0997(42)0944

★ナカガワスポーツ
登山用品一式のレンタル可。
記者は寝袋、マット、ヘッドライトなど5点を3400円で借りた。
電0997(42)0341

★大川(おおこ)の滝
「日本の滝百選」に入る屋久島最大の滝。
高さ88メートルの断崖から清流がなだれ落ちる。
雨上がりはさらに迫力が増す。

★尾之間(おのあいだ)温泉
地元の公衆浴場。
単純硫黄泉。
湯は約46度と熱め。
料金大人200円、小学生100円。
午前7時~午後9時。電0997(47)2872

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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