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日光市

日光市 栃木県 知恵と技きらめく建築

東京スカイツリーの制振システムに応用された「心柱」を備えた日光東照宮五重塔

東京スカイツリーの制振システムに応用された「心柱」を備えた日光東照宮五重塔

 東京スカイツリーがオープンして、にぎわいを見せる東京の下町。その浅草から特急電車で2時間弱。世界一の高さを誇る自立式鉄塔と共通点を持つ世界遺産の町、栃木県日光市に足を延ばした。

 あいにくの雨だった。日光は、年間の3分の2以上が雨、雪、霧といわれ、雨天が似合わないわけでもない。

 世界文化遺産・日光東照宮前の参道に小さな看板が立っていた。「東京スカイツリー頂上の高さ634m」。地面に向かって矢印が付いている。東照宮の標高は、スカイツリーの高さと同じだという。

 スカイツリーとの縁は、もう1つある。東照宮境内の国指定重要文化財・五重塔(高さ約36メートル)の地震に強いとされる伝統工法を用いた耐震システムが、スカイツリーの制振システムに応用されているのだ。

 五重塔が建てられたのは1650(慶安3)年。1815年に焼失し、3年後に再建された。吹き抜けになっている塔内部の4層部分から、直径約60センチの心柱が鎖でつり下げられ、礎石から数センチ浮いている。地震発生時、塔本体と心柱が別々に揺れることで揺れを軽減させ、木材の伸縮などで生じるひずみにも対応するという。先人の知恵には、脱帽するしかない。

 スカイツリーの人気にあやかり、日光への観光客誘致の呼び水にと、1層目に当たる初重(しょじゅう)内部が初めて一般公開されている。4体の仏像に囲まれた中央に金箔(きんぱく)を施した心柱が、どーんと見えた。大勢の観光客が見にきている。千葉県成田市から訪れたという元機械設計士の小林建治さん(68)は「スカイツリーの原型になった技法を垣間見られてうれしかった」と話した。

 
初めて一般公開された五重塔の初重内部。左奥に見えるのが心柱

初めて一般公開された五重塔の初重内部。左奥に見えるのが心柱

 日光東照宮は、徳川家康を祭神としてまつる。3代家光が5173の彫刻で飾るなど、当時の技術の粋を集めて大改修した。最も華麗な陽明門前に立つと、ガイドが「門の真上には北極星が輝きます。北極星は動きません。その周りを北斗七星が回ります。家康公は、自分が中心に世界が回るようにと考えたそうです」と教えてくれた。

 拝殿では、別のガイドが「江戸時代、身分や格式が大変重んじられ、大名でなければお参りもできなかった。一番前にお座りの方は90万石の大名様の場所。その後ろは80万石。当時は、畳1畳下がるにつきまして10万石の開きがありました」。ここでは家康公が神。人間を神にまで高めるため、当時の技術を駆使したのだろうか。その工法が今、東京スカイツリーに生かされ、人々を魅了している。

 
戦場ケ原を湯川に沿って歩く。後方には、男体山(中央奥)も望める=いずれも栃木県日光市で

戦場ケ原を湯川に沿って歩く。後方には、男体山(中央奥)も望める=いずれも栃木県日光市で

 よく晴れた翌朝、奥日光の戦場ケ原を歩いた。中禅寺湖の奥に位置する高層湿原。つづら折りの道で知られる「いろは坂」より上を奥日光と呼ぶ。

 戦場ケ原には、いくつかのハイキングコースがある。湯ノ湖から湯川に沿って赤沼まで歩く約2時間コースを選んだ。起伏が少なく歩きやすい。ミズナラ、カラマツ、シラカバなどの林間に木道が延びている。写真を撮る人、スケッチブックに写生する人らとすれ違う。「戦場ケ原」といういかめしい名前とは裏腹に、平和でのどかな風景が広がっていた。

 歴史と文化、大自然に恵まれた日光の魅力をあらためて感じた。

 文・写真 吉岡逸夫

 (2012年6月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
日光市へは、東武鉄道の特急スペーシアが便利。
東京都内の浅草駅とJR新宿駅から東武日光駅を結ぶ。
東北新幹線なら宇都宮駅でJR日光線に乗り換え日光駅で下車。

◆問い合わせ
日光観光協会=電0288(54)2496

おすすめ

イワナの骨酒(右)

イワナの骨酒(右)

★日光東照宮・五重塔初重内部特別公開
来年3月31日までの予定。
観覧料は中学生以上300円、子ども200円。
初重外回りの十二支彫刻も見もの。
東照宮は拝観料が別途必要。

★戦場ケ原
山の神が湿原を舞台に争いを繰り広げたという伝説に由来。
標高約1400メートル、面積400ヘクタールに300種にも及ぶ高山・湿原植物が生息。

★休暇村日光湯元
奥日光の湯ノ湖畔にある公共の宿。
源泉から引いた白濁の湯が肌に優しく、イワナの骨酒もお薦め。
電0288(62)2421

★イタリア大使館別荘記念公園
中禅寺湖畔にたたずむ和の建材を多用した洋風建築。
本邸は1928年から97年まで、大使館別荘として使用。
栃木県が購入し、修復して公開した。
建築家で外交官のアントニン・レーモンドが設計。
入園無料。6~10月無休。電0288(55)0388

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