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クルーガー国立公園

クルーガー国立公園 南アフリカ共和国 野生の息吹が間近に

ブッシュから現れた象。鼻を枝に巻きつけへし折った=南アフリカ・クルーガー国立公園で

ブッシュから現れた象。鼻を枝に巻きつけへし折った=南アフリカ・クルーガー国立公園で

 低い茂みが散らばる草原。日は傾き、吹き付ける風が意外なほど冷たい。南アフリカ共和国は冬。北東部ムプマランガ州のクルーガー国立公園周辺で、動物たちとの出合いを楽しんだ。

 赤土のでこぼこ道を、屋根なしの4輪駆動車で走る。低速だが、高い座面はかなりの揺れだ。草地をゆっくり移動していたのはサイの群れ。車が止まる。

 子サイがキュゥキュゥとしきりに鳴く。サイの鳴き声というのを初めて聞いた。乳をねだっているのだ。母親が足を止めると、すかさず腹の下にもぐりこむ。こちらとの距離は20メートルにも満たない。「シロサイだ。この子は1歳にもならないな」。ハンドルを握るレンジャーのズワイさんが教えてくれた。

 国立公園は隣のリンポポ州にまたがり、哺乳類147種が生息。鳥も500種を超える。隣接して私営の保護区も20以上あり、動物たちは、日本の四国に匹敵する広大な空間を自由に動く。車で移動しながら自然に触れる「ゲームドライブ」が人気だ。乾期(5~10月)であるこの時期が絶好。雨の心配がなく、草が枯れるため動物を見つけやすい。

ライオンの生態について説明するズワイさん

ライオンの生態について説明するズワイさん

 ドライブは、動物が活動する朝夕を狙う。場所を移した翌日の夕刻。茂みから現れた象が、豪快なしぐさを見せた。バキバキと小枝をへし折り、無造作に口に運ぶ。見物人など意に介さず、という構え。駆け去るキリンの姿や、インパラの濁った警戒音。動物園で触れることのできない野生の息遣いを満喫した。2日間での遭遇は、ライオン、ヒョウなど大きいものだけでも20種近くになった。

 もちろん、お目当てに出合えるとは限らない。訪問者と動物を引き合わせるのが、私営保護区のレンジャーだ。ズワイさんはシニアの州免許を持つ30歳。足跡、フン、音などを頼りに茂みに潜むものを探す。「ヒョウの足跡だ。小さいからメス」「キリンは高血圧だからね。首を下げても大丈夫なように、頭の中に調節機関がある」。話題は植物、昆虫、星にまで及ぶ。

 最も大切なことは「安全だ」と言う。万一に備えライフルを携えている。これまで事故はないとのことだが「車上で立ち上がらない」「ストロボはだめ」など、ルールの説明を受けた。人間と動物、双方への配慮だ。

 
ブライデ・リバーは、世界3大渓谷の1つに数えられる=南アフリカ・ムプマランガ州で

ブライデ・リバーは、世界3大渓谷の1つに数えられる=南アフリカ・ムプマランガ州で

 南アフリカの動物保護の歴史は古い。1898年、当時のトランスバール共和国大統領ポール・クルーガーが、狩猟で動物が減っていることを嘆き、この地を保護区に指定した。以来1世紀、動物たちはこの国にとって欠かせぬ存在になった。

 金などの産出で知られる南アフリカだが、観光の躍進も目覚ましい。昨年の訪問客は800万人を超え、ワールドカップに沸いた前年を上回った。観光収入は国内総生産の8%に迫る。中でもムプマランガ州は、クルーガー国立公園やブライデ・リバー渓谷を擁し、人気エリアの1つ。豊かな自然は、国を支える資源そのものでもある。

 私営保護区のロッジは、周囲に溶け込むように造られ、快適の一言。テラスからバファローとサイが見えた。のんびり草を食べる姿は、ここが彼らにとっても快適であることを物語る。車の数や照明を制限したり、池を造るなど動物を招く努力もある。ただ、保護で増えすぎた象が森を荒らす、という副作用もあるというから悩ましい。

 「助けること、管理すること。バランスが難しいが、自然のものをあるがままに守りたい。ちょっとだけのさじ加減で」

 日は落ち、頭上に南半球の星座。たき火を囲んだ夕食で、ズワイさんの言葉が心に残った。

 文・写真 鎌田滋

(2012年7月6日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
南アフリカへは香港などで乗り継ぎ、香港-ヨハネスブルクが13時間余り。
ヨハネスブルクからクルーガー・ムプマランガ空港は国内便で1時間弱。

◆問い合わせ
南アフリカ観光局=電03(3478)7601。
日本語ホームページもある。中日ツアーズ=電052(231)0800=は、今秋と来春にツアーを予定している。

おすすめ

★インパラ
ウシ科の草食動物。クルーガー国立公園には13万頭生息している。南アフリカ国内では食肉用に飼育もされており、料理店でステーキやソーセージなどを味わうことができる。肉は脂身が少なく、淡泊な味わい。臭みもなく軟らかい。

ダチョウの卵

ダチョウの卵

★ダチョウの卵
高さ15センチほどもあり、中身を抜いた殻が土産物として売られている。厚みが2ミリくらいあり丈夫。光沢のある塗料で動物の絵や地図を描いたものや、表面を幾何学模様に削り込んで中に電球を入れ、ランプにしたものなどがある。自分で着色・加工したい向きには、手を加えていないものがお薦め。

★ブライデ・リバー渓谷
クルーガー国立公園の西に位置する自然保護区。長さは26キロにわたり、世界3大渓谷の1つに数えられる。米国のグランド・キャニオンなどと異なり緑に覆われているのが特徴。ドライブルートが西側に走っており、展望スポットからは深さ800メートルに達する谷を眼下に、数々の奇岩の光景に圧倒される。

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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