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宮島

宮島 広島県廿日市市 海に浮かぶ「神の領域」

ライトアップされた厳島神社の大鳥居の上に、満月がかかっていた=いずれも広島県廿日市市宮島町で
ライトアップされた厳島神社の大鳥居の上に、満月がかかっていた=いずれも広島県廿日市市宮島町で

 大潮の夜だった。満潮の時刻も迫っている。朱塗りの大鳥居の上に、満月が白く浮かんでいる。屋形船はエンジン音を落として、ゆっくりとした船脚で、これから大鳥居をくぐり抜けるのだ。

 海上にそびえ立つ、厳島神社(広島県廿日市市宮島町)のシンボルである。ライトアップされているが、海から接近するときは、逆光になる。船が近づくにつれ、影絵だった大鳥居は、次第に朱色を帯び始めた。

 「わあ、幻想的だわ」「海から世界遺産を眺められるなんていいねえ」-。乗客たちは船の前方まで出てきて、潮風にあたりながら、カメラを向ける。満月を眺めつつ、「神の領域」に接近するのは、ドラマチックな瞬間だ。

 高さ16.59メートル、棟の長さ24.24メートルもある巨大な構造物は、鳥居本体の重みだけで立っている。その古来の建築技術にも驚かされる。

 「潮が引いた昼間は、ここまで歩いて来られたのにねえ」

朱塗りの回廊がめぐる厳島神社は1996年世界遺産に登録された
朱塗りの回廊がめぐる厳島神社は1996年世界遺産に登録された

 干満の差は、4メートルほどあるそうだ。厳島神社を海から眺める利点は、宮島全体が視界に入ることだ。船のアナウンスは「観音様の寝姿がわかるでしょうか」と紹介する。

 夜空に浮かぶ山の稜線(りょうせん)に目を凝らすと、たしかに観音様の横顔に見えるのだ。標高535メートルの弥山(みせん)が額、駒ケ林が鼻にあたる。

 「古くから神の島といわれ、山の原始林は天然記念物に指定されています」と船のアナウンスが続いている。6世紀の推古天皇時代に創建されたといわれる社殿が、現在の姿になったのは、むろん12世紀の平清盛によるものだ。

 
特産品のしゃもじは「今は縁起物として人気です」と話す宮郷彰通さん
特産品のしゃもじは「今は縁起物として人気です」と話す宮郷彰通さん

 歴史を旅する者には、宮島は欠かせまい。島の中を歩くと、しゃもじを土産物として置く店が多い。18世紀の終わりごろ、僧・誓真が琵琶の形から考案した、宮島の特産品なのだと聞いた。

 「甲子園の高校野球でも広島代表にはしゃもじを使って応援します。『敵をめしとる』という意味なんですね」と、専門店「杓子(しゃくし)の家」の代表・宮郷彰通さん(74)はいう。

 「かつて職人は100人ぐらいいたでしょう。でも、戦後にプラスチック製品が出たので、市場は侵食され、現在、島の職人は私の息子1人です。商売繁盛や家内安全を祈願する、新しい用途として喜ばれています」

 携帯電話のストラップなどにもなっていて、「長寿」「脱メタボ」「笑顔」など祈願の言葉は、その時代を映している。

 「戦争の時代には、戦地に行く大勢の人が『必勝』と杓子に書いたのですよ」

 JR線で呉に向かった。「大和ミュージアム」を見学するためだ。かつて呉海軍工廠(こうしょう)があり、戦艦「大和」を建造した。その模型は10分の1の縮尺でも、全長が26.3メートルもある迫力だ。

 沖縄特攻に出撃し、北緯30度43分17秒、東経128度04分00秒の海底に沈んだ。乗組員3332人のうち、生存した者は276人にすぎない。

 「戦死者の名前も展示してありますが、不明者もまだ大勢います」と広報担当の井坂純子さん。「ここの『大和』は、海から帰ってくる『入り船』の状態です。つまり二度と戦場へ行かないという平和への願いも込めているのです」

 展示品には人間魚雷「回天」や、「新爆弾ハ原子核爆弾ト判明ス」との至急電報もあった。平和の祈願には、時代は問わない。

 文・写真 桐山桂一

(2012年8月17日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
宮島へは山陽新幹線で広島駅で下車し、山陽線に乗り換えて宮島口駅へ。
そこからフェリーで渡る。広島港からも船便がある。呉へは広島駅経由で。

◆問い合わせ
宮島観光協会=電0829(44)2011。
同観光協会のHPも充実。

おすすめ

清盛マリンビュー

清盛マリンビュー

★厳島神社
拝観料大人300円、高校生200円、小中学生100円。
昇殿時間は10月14日までは午前6時30分~午後6時(季節によって変更)。
宮島観光協会HPに潮汐表がある。電0829(44)2020

★観光列車「清盛マリンビュー」
8月中の毎日と9月の土日祝日にJR宮島口駅から呉駅、三原駅間を1日1往復する。
船を思わせる丸窓の外観がユニークで、大きく取られた車窓から、
瀬戸内海の島々の風景が望める。
問い合わせは、JR西日本お客様センター=電0570(00)2486

★宮島屋形船
「夜間定期便コース」は宮島第3桟橋から毎日運航。
料金は大人1500円、小人700円。予約必要。
問い合わせはアクアネット広島=電0829(44)0888

★もみじまんじゅう手作り体験
宮島名物のもみじまんじゅうを手焼きする。所要時間は約45分。
料金は1人735円。平日は1日4回、8月中と土日祝日は1日5回。
やまだ屋=電0829(44)0037

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