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幸せの国

幸せの国 ブータン王国 懐かしさ漂う別世界

首都の交差点では、警官が手信号で交通整理に当たる=ティンプーで
首都の交差点では、警官が手信号で交通整理に当たる=ティンプーで

 ヒマラヤ山麓にあって「幸せの国」と称されるブータン王国は、記者にとってあこがれの地である。バンコク経由で空港のあるパロに降り立った瞬間、別世界に入ったよう。空気は澄み渡り、真っ青な天空が広がっていた。標高2000メートルを超えているため空気が薄い。階段を上ると、息が切れた。ゆっくり歩くと、時間までゆっくり流れているように思えてきた。

 首都ティンプーで、最もにぎやかな繁華街に行ってみた。東京でいえば、銀座にあたるだろう。古い町並みに車が列をなしているが、信号機は1基もない。警察官が交差点の真ん中で交通整理をする姿がユーモラス。ガイドは「車が急激に増え、駐車場が足りない状態」と説明した。

 街を歩く人々は、男性はゴ、女性はキラと呼ばれる民族衣装を身につけていることが多い。日本の着物に似ているので、江戸時代にタイムスリップしたようで楽しい。顔立ちも日本人に何となく似ている。商店をのぞくと、日本とそっくりのそばやマツタケがあるのも驚きだった。

断崖絶壁にへばりつくように立つ「タクツァン僧院」。別名「虎の巣」とも呼ばれる=ブータン・パロで
断崖絶壁にへばりつくように立つ「タクツァン僧院」。別名「虎の巣」とも呼ばれる=ブータン・パロで

 ブータンは、1971年の国連加盟まで鎖国に近い状態だった。徐々に国を開放し、最近は外国人旅行者も本格的に受け入れ始めた。ただし、外国人旅行者の自由行動は制限され、必ずガイドが付く。

 パロ郊外にある外国人観光客の人気スポット、断崖絶壁の岩山にある「タクツァン僧院」を訪ねた。8世紀、ブータンに仏教を広めた高僧が瞑想(めいそう)した地とされ、標高は3120メートル、別名「虎の巣」とも呼ばれる。

 山道を約1時間半、馬の背にゆられ、僧院手前の見晴らしのよい場所にたどり着いた。霧が時々、視界を遮り、僧院が見え隠れし、幻想的な雰囲気を醸し出す。ここから先は登山の備えが必要だと聞かされ、僧院まで行くのを諦めた。峠の茶店ならぬカフェテリアで、ブータン料理を満喫しながら、景色をながめた。

 

 地方の生活が見たくて、首都から車で西へ約3時間。水田が広がる「ハ」という町の農家に泊めてもらった。ブータンは九州とほぼ同じ面積で、人口は約70万人。大半の国民は地方に住み、農村を見ればこの国を理解するのに役立つと思った。

 農家はかつて自給自足の生活だったという。夜明けとともに起き、牛の乳搾りから始まる。のどかな風景が心を安らげてくれる。幹線道路まで歩いて2時間もかかる山奥。そんな村に電気が通ったのは、1年前だ。

ウゲンドージさん(左から2人目)宅には、携帯電話や炊飯器、テレビも備わっていた=ハで
ウゲンドージさん(左から2人目)宅には、携帯電話や炊飯器、テレビも備わっていた=ハで

 主人のウゲンドージさん(41)は、「まず炊飯器を買い、携帯電話、テレビ、車を買った」と自慢げ。ここにも近代化が押し寄せている。生活はがらりと変わったはずだが、家族の表情は穏やか。田舎の親戚を訪ねた時のように、懐かしい気分になった。

 ブータンでは、国中どこに行っても野良犬がいる。ブータンの人々は虫や動物も含め、できるだけ殺生をしないという。増える一方の野良犬に危険ではないかとガイドに尋ねると、「政府が野良犬に予防注射と避妊手術をしているから大丈夫」との答え。ブータンは、犬まで幸福。もちろん、旅行者も幸せな気分にさせてくれる。

 文・写真 吉岡逸夫

(2012年8月31日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
日本からの直行便はなく、バンコクなど経由で。

◆入国手続き
外国人は政府のルールに従った観光しかできない。
ホテル、ガイド、車などのパッケージは原則1日250米ドル。
ビザも必要。日本で渡航手配ができるのは「風の旅行社」「西遊旅行」など十数社。

おすすめ

近衛兵が国旗を片付ける姿
近衛兵が国旗を片付ける姿
石風呂
石風呂

★タシチョ・ゾン
ティンプーにある国王のオフィス。ブータン仏教界の総本山でもある。
くぎを1本も使わず、木を組んで造った伝統的な建築に圧倒される。
平日午後5時に近衛兵が国旗を片付ける姿は英バッキンガム宮殿を思わせる。

★メモリアル・チョルテン
ティンプーにある1972年に亡くなった第3代国王の廟(びょう)。
参拝す老若男女が絶えない。

★石風呂
野趣あふれるブータンの伝統的な風呂。火で熱した石を投入して風呂を沸かす。
石の中からミネラルが出て、温泉と同じような効果があるとされる。
人間のつかる所と石が入る間にはしきりがあるので、やけどの心配はない。

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