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「ブルタバ」生んだ音楽の都

「ブルタバ」生んだ音楽の都 チェコ・プラハ 古城仰ぎ名曲口ずさむ

ブルタバ川にかかるカレル橋は、プラハで一番の観光スポット。後ろ中央に見えるのはプラハ城

ブルタバ川にかかるカレル橋は、プラハで一番の観光スポット。後ろ中央に見えるのはプラハ城

 プラハ市街地の真ん中をゆったりと流れるブルタバ川。チェコの国民的作曲家スメタナ(1824~84年)の代表作が、その雄姿を描いた交響詩「ブルタバ」だ。悲しげだが力強い旋律が多くの人の琴線に触れるのか、日本でも古くから親しまれている。名曲を生んだ川の流れを見たくなり、足を運んだ。

 ところで、一般にはドイツ語名の「モルダウ」の方が通りがよいかもしれない。第一次世界大戦後までオーストリア・ハプスブルク家の支配下にあった名残だ。国を代表する川の名前が外国語で知られているのは、小国の悲哀と言うべきか。

 ブルタバ川にかかるカレル橋に行ってみた。この街が最も栄えた14世紀の王カレル4世が造った橋。彼の居城だったプラハ城も仰ぎ見ることができる。欄干にもたれて川面を眺めていると、無意識に「ブルタバ」の旋律を口ずさんでいた。

 「お安くしますよ」。似顔絵描きのアカイ・アカエフさんが声をかけてきた。「日本人の顔は描きにくいでしょう?」「そんなことはない。とても美しい」。ブルタバ川の真上でしばらく座っているのも悪くないと思い、依頼してしまった。

モーツァルトがプラハ滞在中に過ごした屋敷

モーツァルトがプラハ滞在中に過ごした屋敷

 チェコ人以外でプラハとゆかりの深い音楽家は、何といってもモーツァルト(1756~91年)だろう。この街で「プラハ」の愛称を持つ交響曲第38番やオペラ「ドン・ジョバンニ」を初演している。

 モーツァルトがプラハで過ごしたという屋敷に出掛けた。オフィス街から近いが、緑が多く別世界の静けさ。庭のベンチでのんびり読書する人もいて、18世紀にタイムスリップした気分になる。「ドン・ジョバンニ」はここで作曲された。

人形劇が盛んなプラハでは、壁一面にマリオネットを並べた土産物店が多い=いずれもプラハで

人形劇が盛んなプラハでは、壁一面にマリオネットを並べた土産物店が多い=いずれもプラハで

 さて、プラハに来たからには、その「ドン・ジョバンニ」を見なければ。市内に3つあるオペラ劇場では定番の演目だが、地元ではマリオネットの人形劇による舞台も人気と聞いた。せっかくの機会なので、そちらを試してみることにした。

 チェコでは人形劇がとても盛んで、プロの劇団も多い。プラハだけで50以上の人形劇場があり、公立の劇場には年に4000万~5000万円ほどの助成金が出るという。日本の物価水準だと1億5000万~2億円くらい。手厚い支援ぶりに驚かされる。

 繁華街の一角にある「国立マリオネット劇場」へ。入り口の階段を地下に下りると、ひと昔前のアングラ劇場のような雰囲気。狭い場内はほぼ満席だ。

 「ドン・ジョバンニ」は、女好きの主人公が女性を次々と誘惑し、最後は地獄に落ちる-という筋。ドロドロした話だが、人形劇だと素朴な味わいがある。指揮者(もちろん人形)が髪を振り乱して指揮棒を振る演出もユーモラスで楽しめた。

 話をスメタナに戻そう。「ブルタバ」と同じ曲集に「ビシェフラド」という曲がある。吟遊詩人が奏でるハープの独奏で始まる印象的な音楽だ。題名は、伝説上の建国者である王妃リブシェが住んだ城。ブルタバ川を少しさかのぼった河畔に城跡が残っている。最寄りの地下鉄の駅から歩いて上ると、遠目にプラハ市街地が見渡せた。

 敷地内には、チェコが生んだ文化人が多く眠る墓地がある。スメタナやドボルザーク(1841~1904年)の墓をお参りしている時に、隣の教会の鐘が鳴った。「ブルタバ」の旋律だ。ちょうど野外結婚式が始まろうとしていた。間もなく若いカップルが入場。これも何かの縁だろう。家族や友人らの後ろから、そっと拍手を送った。

 文・写真 宮尾幹成

(2012年10月19日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
日本からの直行便はない。
フランクフルト、パリ、アムステルダム、ドバイなど経由で。
ベルリンやウィーンから列車やバスで入国する方法もあるが、便数は少ない。

◆通貨
観光施設や中級以上のホテル、レストランなどではユーロが使えるが、現地通貨コルナ(1コルナ=約4円)に比べ割高。

◆問い合わせ
チェコセンター観光部(チェコ大使館内)=電03(3797)7383

おすすめ

画家ミュシャの大作「スラブ叙事詩」

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★プラハ城
9世紀に建設が始まった世界最大規模の城で、現在は一部が大統領府として使われている。敷地内は自由に入れるが、建物は有料のところも。

★スタボフスケー(エステート)劇場
1787年にモーツァルトが「ドン・ジョバンニ」を初演。
モーツァルトを描いた映画「アマデウス」で撮影に使われるなど、18世紀の雰囲気を今に伝える。プラハには他に「国民劇場」「国立オペラ劇場」と計3つのオペラ劇場があり、
いずれも日本円換算で2500円程度から気軽に楽しめる。

★ベレトゥルジュニー宮殿
国立美術館の近現代美術部門。
2013年9月まで、チェコを代表する画家ミュシャ(チェコ語ではムハ)の大作「スラブ叙事詩」(全20点)を展示している。
普段はプラハから200キロほど南東の地方都市に行かないと見られないので、ぜひ足を運びたい。
市内には「ムハ美術館」もある。

★カフェ・スラビア
ブルタバ川に面した1881年創業の老舗カフェ。
文化人や政治家のたまり場で、劇作家出身の故ハベル前大統領も通った。
春江一也氏の小説「プラハの春」にも登場する。

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