【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 会津
会津

会津 福島県 気概と優しさが脈々と

戊辰戦争の舞台になった鶴ケ城。白壁と赤瓦が美しく、威風堂々とした姿がりりしい=福島県会津若松市で

戊辰戦争の舞台になった鶴ケ城。白壁と赤瓦が美しく、威風堂々とした姿がりりしい=福島県会津若松市で

 福島県会津若松市の中心部にそびえる鶴ケ城。白壁に赤瓦が美しく、威風堂々とした姿に目を奪われる。城は幕末から明治維新にかけ、戊辰(ぼしん)戦争の舞台になった。

 城の中に入ると、同市観光公社の星絵里子さん(41)が紙芝居「新島八重物語」を熱演していた。八重(1845~1932年)は戊辰戦争時、鶴ケ城にこもり、最後まで戦い抜いた。八重は敵に明け渡した鶴ケ城を眺め、「明日の夜はいづこの誰かながむらん、慣れし御城に残す月影」と詠んだ。

 八重はその後、京都へ移り、同志社英学校(現同志社大)を開いた新島襄と結婚。新時代の女性を志し、日清、日露戦争で看護師として従軍している。

 来年の大河ドラマに八重の人生を描いた「八重の桜」が決まり、地元では観光PRが盛り上がっている。

 名調子で八重の人生を語った星さんは「激動の時代に家族や屋敷を失っても、会津の誇りを胸に力強く生き抜いた八重の人生を知ってもらえれば幸い」。さらに、「東日本大震災の被災者の方々とともに頑張っていきたい」と力を込めた。

みそ造り教室を開いている目黒正博さん=福島県会津坂下町で

みそ造り教室を開いている目黒正博さん=福島県会津坂下町で

 震災後、観光客が激減した会津。今も震災前の水準に戻っていないという。鶴ケ城ボランティアガイドの小椋孝さん(68)は「会津にぜひ足を運んでほしい。観光を楽しんでもらうことが、何よりの支援です」と呼び掛ける。

 市内を回ると、福島第一原発事故で避難している同県大熊町の臨時庁舎や仮設住宅が目に留まるが、市中心部には明治以降、海産物の流通で栄えた「渋川問屋」など歴史的な建物も健在。感性豊かな若者らが開く、おしゃれなカフェなども目立つ。

 伝統工芸も元気だ。会津塗の漆器作りを続ける「御蒔絵(まきえ)やまうち」の山内泰次さん(56)は「伝統の技法を守り、若い人たちに伝えていきたい」と熱い。会津地方は伏流水を使った醸造業も盛ん。会津若松市と隣接する会津坂下町の「目黒麹店」では、みそ造りが体験できる。同店の目黒正博代表(39)は「素材のうまみを多くの人に知ってもらいたい」と力を込める。

かやぶき屋根の建物が並び、下野街道の宿場町として栄えた大内宿=福島県下郷町で

かやぶき屋根の建物が並び、下野街道の宿場町として栄えた大内宿=福島県下郷町で

 江戸時代、会津若松と日光を結ぶ下野街道の宿場町として栄えた南会津の大内宿(下郷町)に足を延ばした。かやぶき屋根の建物が並び、江戸時代にタイムスリップしたようなたたずまい。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

 「会津の三泣き」と「ならぬことはならぬ」-。会津の気風を表す言葉が印象的だ。「会津の三泣き」は情の深さ、「ならぬことはならぬ」は会津藩の教えで、社会規範を守る正義感と潔さを意味する言葉だという。

 日々に流され、自分勝手に生きていないか。大切なことを見失っていないか。そんな自戒が去来する。

 震災と原発事故で深刻な被害を受けた福島だが、会津で出会った人たちからは、伝統を受け継ぎながら、逆境を乗り越えようとする気概と優しさを分けてもらった。

文・写真 土門哲雄

(2012年10月26日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
会津若松へは、JR東京駅から東北新幹線・郡山駅で磐越西線に乗り換えるか、
東京・浅草駅から東武鉄道、野岩鉄道、会津鉄道を乗り継ぐ。
車は東京から東北自動車道と磐越自動車道で。

◆問い合わせ
会津若松市役所観光課=電0242(39)1251、
喜多方市観光交流課=電0241(24)5200

おすすめ

蒸気機関車

蒸気機関車

★蒸気機関車(SL)
JRのSLばんえつ物語号は会津若松駅と新潟駅を結ぶ。
喜多方駅などにも停車。全席指定。
JR東日本お問い合わせセンター=電050(2016)1600

★喜多方ラーメン
喜多方市内にはラーメン店多数。
太めの平打ち縮れ麺が特徴で、朝食として「朝ラー」も人気という。
会津喜多方ラーメン館=電0241(21)1414=は試食の屋台、工場、お土産店がある。

★みそ、酒
会津坂下町の目黒麹店=電0242(83)3723=でみそ造りが体験できる。
大人5人以上で事前に申し込む。1人3500円~。
喜多方市の大和川酒造北方風土館=電0241(22)2233=は酒蔵見学と試飲を楽しめる。

★温泉
東山温泉は会津若松市中心部から車で10分ほど。
原瀧(はらたき)=電0242(26)4126=は清流と緑に囲まれ、ゆったりした客室と露天風呂などでくつろげる。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外