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なまはげ

なまはげ 秋田県 魂に響く男鹿の伝統

なまはげ行事を体験できる「男鹿真山伝承館」

なまはげ行事を体験できる「男鹿真山伝承館」

 「悪い子はいねがぁ」「怠け者はいねがぁ」。秋田県男鹿地域の伝統行事「なまはげ」。最近では人気グループ嵐のメンバーが出演する自動車のテレビCMでも話題になった。

 男鹿では大みそかの夜、60以上の集落で数百のなまはげが家々を回って暴れる。「なまはげは酒を飲んで刃物を振り回す、野蛮な行事のように言われることがありますが、子どもや怠け者、弱虫の根性を戒めるという意味があります。鬼のような悪者ではありません」。なまはげの衣装が並ぶ展示施設「なまはげ館」で説明を受けたあと、隣接する「男鹿真山(しんざん)伝承館」を訪ねた。

 そこでは、真山地区のなまはげ行事を曲屋(まがりや)の座敷に座り体験できる。激しく戸をたたき登場したなまはげは、しこを踏み雄たけびを上げ家中を動き回り、家長から酒と膳のもてなしを受ける。見学者も巻き込んでの講座は笑いを誘いながらも迫力満点。なまはげが帰った後、座敷のあちこちには衣装の稲わらが落ちていた。「厄よけになりますよ」。スタッフに教えてもらい持ち帰った。

 伝承館を出て坂を上がると、なまはげ行事ゆかりの真山神社がある。毎年正月3日に境内で開かれる柴灯(せど)祭は平安末期に始まったとされる。境内でたき上げた柴灯であぶった餅を山の神様に献上するという行事だが、その餅を受け取りに里に下りてくるのが、なまはげの役目だそうだ。また、2月には観光行事として「なまはげ柴灯まつり」が開かれるが、来年は50回目に当たり、男鹿の各地区から50のなまはげが参加する。

 今も地域で大切にされるなまはげだが、ちょっと方向が違ってきたという声も出始め、伝統の行事を正しく次の世代に伝えることになった。男鹿温泉郷の老舗旅館会長でナマハゲ伝導士認定試験の実行委員長も務める山本次夫さん(77)は「来年のなまはげ柴灯まつりに合わせ、全国の認定試験合格者832人に呼び掛け、シンポジウムを開きます。男鹿の誇る文化、なまはげの歴史や精神とは何かについて徹底的に論争をします」と話す。

 
迫力あふれる舞台で観光客を楽しませる「なまはげ太鼓」=いずれも秋田県男鹿市で

迫力あふれる舞台で観光客を楽しませる「なまはげ太鼓」=いずれも秋田県男鹿市で

 一方、地元を盛り上げ、観光客へのもてなしとして人気を集めるのが若者たちの「なまはげ太鼓」。伝統のなまはげ行事を支えながら、10年ほど前「なまはげ郷(さと)神楽」の名前で、駐車場での路上ライブから出発。今年からは約20人のメンバーで「恩荷(おんが)」という団体を結成した。いずれも会社員や大学生、高校生。仕事や勉強を終えてから、ボランティアで演奏活動をしている。

 会場の男鹿温泉交流会館「五風(ごふう)」には、夕食を終え浴衣に丹前を羽織った宿泊客が午後8時半の開演に合わせ続々と詰めかける。多い日には立ち見客も出るほどの人気だという。この日出演したのは岩沢将志さん(25)ら4人の若者。「ドドーン、ドドーン。ドン、ドン」。腹の底に和太鼓のリズムが響く。青色と赤色の面を付けたなまはげが舞台でばちを振るい、観客席を歩き回り、熱いパフォーマンスが会場を包み込む。舞台が終わるとメンバーに駆け寄りおひねりを手渡す中年女性の姿も。

 岩沢さんは「なまはげ行事の深いところを知ってほしい。なまはげを残したいという気持ちで活動しています」と話す。終演後、会場の出口ではメンバーが最後のお客さんを見送るまで、手を振り頭を下げた。外は冷たい雨だったが、そんな彼らの姿に心の中がじわーっと温かくなった。

 文・写真 竹内啓治

 (2012年12月14日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
秋田空港へは、中部国際空港から1時間25分、羽田国際空港から1時間10分。
秋田空港から男鹿温泉郷まではエアポートライナー(乗り合いタクシー、要予約)で1時間45分。
キングタクシー=電018(867)7444

◆問い合わせ 
男鹿市観光協会=電0185(24)4700、男鹿市観光商工課=電0185(24)9141

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★郷土食
石焼き料理は、漁師が岩のくぼ地で採れたばかりの魚介類に真っ赤に焼いた石を投げ入れ作ったのが発端。具材を入れた杉おけに水を張りみそを入れ、800~1000度近くに熱した石を入れ瞬時に煮る豪快な料理。男鹿温泉郷の旅館、ホテルで味わえる(要予約)。元湯雄山閣では「アンプラ餅」も人気。モチモチした食感はジャガイモが素材とは思えず、しょうゆ味で雑煮のよう。電0185(33)3121

★なまはげ館
展示スペース拡大のため来年1月7日から3月末まで休館。ただし、なまはげ柴灯まつり期間中(来年2月8~10日)は開館予定。電0185(22)5050

★男鹿真山伝承館
冬季は土日祝日のみ開講。電0185(33)3033

★男鹿温泉交流会館「五風」
週末の金、土曜日にはナマハゲふれあい太鼓ライブ(無料)を開催。その他の曜日は不定期だが有料(500円)の五風太鼓ライブがある。公演日程の問い合わせは男鹿温泉郷協同組合=電0185(33)3191。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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