【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 昇仙峡
昇仙峡

昇仙峡 甲府市 奇岩を仰ぎ冬の道行き

僧侶の覚円が修行したと伝えられる覚円峰(中央)

僧侶の覚円が修行したと伝えられる覚円峰(中央)

 点々とした日だまりを縫うようにして冬枯れの渓谷をゆっくり歩く-。新緑や紅葉の時季に観光客でにぎわう昇仙峡(甲府市)だが、枯れ木に包まれてひっそりとある大きな岩と清流のたたずまいも悪くない。長潭(ながとろ)橋から仙娥滝(せんがたき)までのなだらかな約5キロの散歩道は、たまった都市生活の疲れや悩みを吹き飛ばすにはちょうどいい距離でもある。

 昇仙峡は富士川支流の荒川上流にある。江戸後期、百姓代の長田円右衛門(えんえもん)が生活道路として渓谷沿いの新道を開拓。今は遊歩道になっている。

 花こう岩が深く浸食されてできた渓谷には、さまざまな形の岩がごろごろ。変わった形の石には、亀石、オットセイ石、ハマグリ石、猫石などという名前が付けられている。視線を上に向けると、大仏が印を結んでいるような大仏岩、たくあんを広めたといわれる沢庵禅師の弟子、覚円がその岩頭で座禅を組んだと伝えられる覚円峰などという岩が見られる。

 道案内をしてくれた昇仙峡マイスター(ボランティアガイド)の雨宮洋一さん(69)は「江戸末期の文人墨客が岩への名付け親。当時、地元の村人たちはオットセイなんて知らなかったでしょう」と話す。

 長田円右衛門は新道を9年かかって開通させた後は、わらじを売ったり、湯茶で接待する「お助け小屋」を沿道につくるなど、新道の保全と地域振興に尽くした。昇仙峡の恩人として遊歩道に石碑がある。

冬枯れの遊歩道に架かる愛のかけ橋

冬枯れの遊歩道に架かる愛のかけ橋

 遊歩道の途中にカップルで渡ると結ばれるという「愛のかけ橋」がある。スチール製の欄干は「もうすぐ会えるね」「由美子大好き」「来年けっこんするのだ」などの落書きでいっぱい。「なぜここを渡ると結ばれるのか」と雨宮さんに聞くと、「分かりません」と笑った。

 かけ橋の近くには「天鼓林(てんこりん)」という不思議なアカマツ林がある。木の根が大きく張ってウロが広がり、その上で足を踏みならすとポンポンと音がするという。雨宮さんは「私が小学生のころはよく鳴ったのですが、今は土が落ちてほとんど鳴りません」という。1カ所だけ鳴る場所を教えてもらい、その上で跳びはねた。かすかにポンと鳴った気がした。

 遊歩道の最後は仙娥滝。この滝を過ぎると、水晶などのお土産店、そばやほうとうなどを出す食堂、喫茶店、他に「昇仙峡影絵の森美術館」「ほうとう会館」「山梨ワイン王国」などの施設がある。ロープウエーはここから出る。チケット販売窓口に掲げられた「ワンちゃん往復300円」が何となくおかしい。

 
水晶細工が盛んな山梨県では、至るところで結晶を見かける=いずれも甲府市で

水晶細工が盛んな山梨県では、至るところで結晶を見かける=いずれも甲府市で

 ロープウエー終点のパノラマ台駅からは富士山、甲府盆地、荒川ダム、南アルプス連山が一望できるはずなのだが、残念、この日は雲の中だった。

 ここ一帯は羅漢寺山(らかんじやま)だが、山頂は弥三郎岳とも呼ばれる。弥三郎という酒造り名人が、ここから天狗(てんぐ)となって消えたとの言い伝えがあるからだ。

 パノラマ台駅から歩いて十数分で山頂。山頂はつるつるとした半球で、周囲に安全柵もチェーンもない。ちょっと足を滑らせたら、そのまま数10メートル真っ逆さまに落ちそうで正直怖い。360度の素晴らしい景色だが、折からの強い風などで、ついついへっぴり腰となった。

 一方、雨宮さんは半球のてっぺんで背筋を真っすぐ伸ばし、何てことないという表情。子どもやお年寄り、高所恐怖症の人は絶対に近寄らない方がいいと思った。

 文・写真 引野肇

 (2012年12月21日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
昇仙峡へはJR甲府駅からバスで、昇仙峡入口まで約30分。
東京方面から甲府駅へは「スーパーあずさ」など新宿発のJR特急で。
名古屋方面からは身延線を経由する静岡発の特急「ワイドビューふじかわ」が便利。

◆問い合わせ 
昇仙峡観光協会=電090(8648)0243、甲府市観光協会=電055(226)6550

おすすめ

ほうとう

ほうとう

★昇仙峡ロープウェイ
仙娥滝駅-パノラマ台駅を約5分で結ぶ。パノラマ台駅の山頂サンテラス(標高1058メートル)は富士山の絶景ポイント。12月~3月は上り始発午前9時~下り終発午後4時30分。大人往復1000円、子ども同500円。ペットもケージ利用で同伴可。
電055(287)2111

★ほうとう
小麦粉を練って切った麺を野菜と一緒に煮込んだ、みそ仕立ての郷土料理。昇仙峡近辺のレストランなどで食べられる。毎年秋には「昇仙峡 ほうとう味くらべ真剣勝負」が開かれ、その年のグランプリが決まる。

★昇仙峡マイスター
ガイド1人を交通費などの諸経費(3000円)のみで頼める。
同事務局=電055(287)2158

★昇仙峡影絵の森美術館
影絵の巨匠といわれる藤城清治氏の作品などを展示。午前9時~午後5時、大人800円、中高生500円など。電055(287)2511

自然・絶景の宿泊情報

一覧

    現在この情報はありません。

自然・絶景のツアー情報

一覧

    現在この情報はありません。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外