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ヤンゴン環状鉄道

ヤンゴン環状鉄道 ミャンマー 野菜も恋も運んで巡る

暗闇の中でひときわまぶしく輝く黄金の仏塔「シュエダゴン・パゴダ」=ヤンゴンで

暗闇の中でひときわまぶしく輝く黄金の仏塔「シュエダゴン・パゴダ」=ヤンゴンで

 長らく欧米から経済制裁を科され、鎖国状態だったミャンマー。民主化や経済開放が進み、観光客にも親しみやすくなった。

 同国最大の都市ヤンゴン。とりあえずガイドブックにならって巨大な黄金の仏塔「シュエダゴン・パゴダ」に向かった。米国のオバマ大統領もミャンマー訪問時に参拝した観光名所だ。夜のライトアップで暗闇に浮かび上がる姿は、クリスマスイルミネーションのようにまばゆく美しい。魅了された。

 ヤンゴン中心部を車で移動すると、英国植民地の名残か、沿道の植樹も多く取り澄ました雰囲気がある。経済自由化で輸入が増え、日本の小ぎれいな中古車が幅を利かせていた。アジアの諸都市でおなじみのオートバイの群れは見られない。かつて軍政が「二輪車はテロリストの機動力となる」との理由で禁止してしまったからだという。が、郊外に行くとたくさん走っているらしい。

 現地の日系商社で「変わらない日常も見ていってください」と勧められたのが、ヤンゴン環状鉄道だ。東京の山手線のように、ヤンゴンをぐるりと回る。総延長約45キロで39駅あり、3時間ほどで一周する。運賃は外国人料金でも1ドル。時間のないビジネス客でも手軽に楽しめそうだ。

環状鉄道の駅では、生活の活気が線路上にまであふれ出す=ヤンゴン郊外で

環状鉄道の駅では、生活の活気が線路上にまであふれ出す=ヤンゴン郊外で

 出発地はヤンゴン中央駅。外国人用の切符売り場があるが、駅入り口でなくホーム上の小部屋のため探しにくい。パスポートを見せ手書きの切符をもらう。列車は頻繁に出ているが、一周する列車は時計回りと反時計回りを合わせ1日15本程度だそうだ。

 午前10時45分発の反時計回りに乗った。ディーゼル車が引っ張る5両編成。日本の中古車両が使われることが多いらしいが、出入り口の扉もなければ窓ガラスもなく開放的だ。ガタンゴトンと、振動を素朴に伝えて動きだした。

 速度は自転車ほど。車内に冷房はないが、開けっぴろげの窓からは心地良い風が入ってくる。大きなカメラを持った欧州からの観光客も目立つ。

 

 ヤンゴンでは、庶民生活のど真ん中を列車が突き抜ける。かやぶき屋根の家がところ狭しとひしめき、突如として鉄条網で囲まれた豪邸が現れたりする。

野菜や日用品などで足の踏み場もない環状鉄道の車内。混雑の中には若いカップルの姿も=ミャンマー・ヤンゴン郊外で

野菜や日用品などで足の踏み場もない環状鉄道の車内。混雑の中には若いカップルの姿も=ミャンマー・ヤンゴン郊外で

  列車は、物資の重要な輸送手段である。駅に止まるたび、ありとあらゆる物が持ち込まれる。女性の物売りは通路に座り込み、春雨のような麺に香辛料入りの調味料を混ぜて売り始めた。ゆで卵を売る男性もいる。

 そのうち、市場から大量の野菜を仕入れた女性の集団が、けたたましい叫び声とともに乗り込んできた。通路は瞬く間に野菜をぎゅうぎゅう詰めにした袋で埋まった。

 女性たちは座席につくと、コマツナのような野菜を手際良く束ね始めた。ヤンゴン中心部まで運んで売るのだろうか。その横では、若いカップルが周囲の喧騒(けんそう)を気にするでもなく、手を握り合いながら自分たちの世界に浸っている。

 列車は、生活物資もロマンスも運びながら40分も走ると、ヤシの木と水田が広がるのどかな郊外に。乗車から2時間。車内は野菜で足の踏み場もなくなりインセイン駅で下車。ミャンマーの人たちのエネルギッシュな日常生活を目の当たりにした後、同駅前の食堂に入ると、ミャンマー風カレーが旅の疲れを癒やしてくれた。

 文・写真 阿部伸哉

(2013年2月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
中部国際空港からはバンコク経由で。
成田からは月、水、土曜に全日空のヤンゴン定期便がある。観光ビザが必要。

◆通貨
米ドルが両替可能で便利。
ドル紙幣でもしわのない新札しか受け取らない風習が根強いが、
政府は「古い札も受け取るように」と広報中。円やクレジットカードはほとんど使えない。

◆問い合わせ
ミャンマー大使館=電03(3441)9291

おすすめ

ピョンヤン・コリョ・レストラン

ピョンヤン・コリョ・レストラン

★シュエダゴン・パゴダ
ヤンゴン市街にある、仏教国ミャンマーを代表する金色の巨大仏塔。
14世紀から歴代君主が増改築を繰り返し、高さ100メートルにもなった。
午後9時まで開いており、夜間のライトアップも美しい。入場料5ドル。

★ピョンヤン・コリョ・レストラン
一昨年、ヤンゴンにできたばかりの話題の北朝鮮系レストラン。
ウエートレスは全員、胸に北朝鮮国旗のバッジを着け政治色が強い。
平壌名物の冷麺は日本円で約800円。
午後8時からステージで歌や踊りのショーがある。
店内は撮影禁止だが、歌手にチップ(テーブル上の花束で、後で2000円程度請求される)を渡すとなぜか撮影OKになる。

★国民民主連盟(NLD)本部
アウン・サン・スー・チー氏率いる最大野党の事務所はヤンゴン市内にあり、マグカップやTシャツも販売するお土産スポット。

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