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バトゥール山

バトゥール山 インドネシア・バリ島 大パノラマ 聖なる山

バトゥール山の火口付近から、火口湖の向こうにアバン山(前)、アグン山を望む

バトゥール山の火口付近から、火口湖の向こうにアバン山(前)、アグン山を望む

 前日の雨は上がった。月は雲に見え隠れし、南十字星は見えない。午前3時半。インドネシアのバリ島の火山・バトゥール山火口を目指す早朝登山の出発地には、30人ほどの外国人観光客の登山者が集まっていた。

 バトゥール山は標高1、717メートル。バリ島の東北部に広がるキンタマーニ高原の中心をなし、広大な火口原を抱える。東側の外輪山は同高原の最高峰、標高2、151メートルのアバン山だ。バリ島最高峰で信仰の対象になっているアグン山(3、124メートル)は、アバン山から15キロほどと近い。

 「出発点が1000メートル近く、実質700メートル登るだけですから」。勧めてくれた知り合いの言葉で参加を決めたが、ショルダーバッグにスニーカーという姿はまずかった。

 女性ガイドのニョマン・ムルニさん(40)の「レッツゴー」で、懐中電灯を手に出発した。

 
テガラランのライステラスは、道路沿いのカフェなどから眺めが楽しめる

テガラランのライステラスは、道路沿いのカフェなどから眺めが楽しめる

 歩きだすと、溶岩がゴロゴロしていて歩きづらい。砂地は滑り、バランスを崩しやすい。足をとられ、時に地面に手をつくと、そこに溶岩があったりする。息が上がる。

 40分が過ぎ、小さい祠(ほこら)で小休止。島の人々にとってバトゥール山は「聖なる山」だ。祭られている神様を尋ねると「(ヒンズー教の)ブラフマー神」と教えてくれた。ムルニさんが登山の無事を願い、祈りをささげた。月の光にぼんやり見える峰は、出発時と変わらない高さだ。

 何度目かの小休止。一緒にいた白人系の男性が嘔吐(おうと)した。ガイドに緊張が走り、下山を言い渡された。記者も疲れていたが、ここでやめさせられてはたまらない。ことさら、元気を装い、「さあ、行くか」。夜が白んで足場が見え始めたのがよかったのか、勾配はきつくなっているのに歩きやすくなってきた。

 「フィーニッシュ」。ムルニさんの声とともに午前6時、目的地に到着した。

 雲の切れ目から太陽がのぞいている。眼下には、薄墨色の世界に溶け込んでいた世界遺産バトゥール湖の湖面があらわに。草も生えない黒い溶岩地と、緑の植林地の対比が鮮やかだ。

 湖の向こうにはアバン山、その奥にアグン山が見える。大パノラマが広がる。深い火口からはうっすらと噴煙が立ち上っていた。何十年ぶりかで砂糖を入れて飲んだコーヒーがうまかった。

バリ島中央部にあるティルタウンプル寺院。この日は大勢の人が沐浴に訪れていた=いずれもインドネシア・バリ島で

バリ島中央部にあるティルタウンプル寺院。この日は大勢の人が沐浴に訪れていた=いずれもインドネシア・バリ島で

 ここよりもまだ高い峰があるのだが、たいがいの観光客はここで引き返すという。記者も「たいがい・・・」を選んだ。

 アグン山からの聖なる水が湧き出るといわれる「ティルタウンプル寺院」へも足を運ぶ。バリ島の中でも由緒ある寺院で、大きな沐浴場(もくよくじょう)で有名である。

 途中、タクシーの中から傾斜地に段々畑に似た光景が見えた。島の各地にあるライステラスの1つで、「神・自然・人」の調和を目指すヒンズーの哲学が生み出したものだという。水耕に適したとはいえない環境を克服していく人知に思いをはせる。

 この寺院は観光客が増えたといわれるが、訪れた時には100人を超える人々の姿があり、バリ島が「神々の島」と呼ばれるわけが分かった気がした。

 文・写真 仁賀奈雅行

(2013年3月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
成田・羽田・関西空港からバリ島(デンパサール)へ直行便がある。
所要約7時間。またはシンガポールなど経由で。

◆問い合わせ
インドネシア共和国観光クリエイティブエコノミー省ビジットインドネシア日本地区事務所=電03(5363)0158。HPも観光情報が充実。

おすすめ

植林活動

植林活動

★バトゥール山登山
ガイド料、交通費、軽食代などを含み1人1万円程度。グループで申し込むと安くなる。
健脚なら火口まで約1時間、頂上まで約2時間。旅行会社で相談を。

★ティルタウンプル寺院
10世紀から14世紀に栄えたワルマデワ王朝時代の建築といわれる。
周辺には何十軒もの土産物屋が軒を連ねる。

★植林活動
東京都西東京市に拠点をおくNPO法人「アジア植林友好協会」が、バリ島で現地の人に協力して植林活動を行っている。詳細はHPで。

★ライステラス
流水を利用するスバックと呼ばれる水利システムは、ヒンズー教の哲学を具現化したものといわれる。
バリ島中央部にあるジャティルイのライステラスは、バトゥール湖や周辺の寺院などとともに世界文化遺産に登録された。
島内には他にもライステラスは多く、島の中心地ウブドに近いテガラランは観光客も多い。

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