【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 出雲崎
出雲崎

出雲崎 新潟県 夕日に映える旧宿場町

夕日が空と「妻入りの街並み」をオレンジ色に染めながら日本海に沈んでいく

夕日が空と「妻入りの街並み」をオレンジ色に染めながら日本海に沈んでいく

 小高い丘の上から、日本海に沈む夕日を眺めた。太陽が水平線に近づくにつれ、空は黄金色に染まり、赤みを増していった。冷たい潮風に凍えながらも、目が離せなかった。気が付くと辺りは薄暗くなり、どこからともなく童謡「夕焼小焼」のメロディーが聞こえてきた。

 新潟県沿岸部のほぼ中央に位置する出雲崎町。今は人口5000人足らずだが、江戸時代は幕府直轄の天領。幕府の財政を支えた佐渡島の金銀の荷揚げ港として、北前船の寄港地、北国街道の宿場町としても栄えた。

 最盛期、出雲崎海岸部には約2万人が住んだとされるが、平地は狭い。海岸線から背後の急峻(きゅうしゅん)な丘までは数十メートルほど。この地で多くの人が住むために生まれたのが「妻入りの街並み」だ。

 「妻入り」とは、大棟が、入り口のある壁面に対して直角になっている建築様式。出雲崎では、間口が二間(約3.6メートル)程度と狭く、奥行きの長い2階建て民家が、北国街道を挟み約3.6キロにわたり軒を連ねる。間口が狭いのは江戸時代、間口に応じて税が掛けられていたためという。「隣り家と壁を共有している家もある。隣り合う2棟に13世帯が住んでいたこともあった」と年配の住民が教えてくれた。

 
子ども好きな良寛さん(右)が、童と何かを話している「語らいの像」

子ども好きな良寛さん(右)が、童と何かを話している「語らいの像」

 出雲崎出身の有名人といえば歌人、詩人、書家としても名高い僧の「良寛さん」(1758~1831年)。町内には生家跡に建てられた「良寛堂」をはじめ、「良寛記念館」、良寛さんが子どもたちと語らうブロンズ像がある「良寛と夕日の丘公園」など、良寛さんの名を冠した史跡、施設も多い。

 良寛さんは、出雲崎の名主・橘屋という裕福な家の長男として生まれながら、なぜか18歳で出家した。生涯、寺を持たず、粗末な庵(いおり)で暮らし、托鉢(たくはつ)をして糧を得る生活を続けた。

 歌人の歌は嫌い、詩人の詩は嫌い、書家の書は嫌いと言い放ち、いわゆる“葬式仏教”を痛烈に批判した。戒律の厳しい曹洞宗の寺で修行をしたが、宗派には無頓着。釈迦(しゃか)の弟子という意識が強く、教えを広めるのが役割と思い定めていたようだ。

 気難しい人かと思えば「この里に 手まりつきつつ 子どもらと 遊ぶ春日は 暮れずともよし」と詠むほど大の子ども好き。酒も好み、40歳ほど年下の弟子、貞心尼に向けた真っすぐな思慕の歌もある。知れば知るほど、良寛さんは“多くの顔”を見せてくれる。悩ましい。

夕凪の橋の欄干にカップルが取り付けたチェーンキー=いずれも新潟県出雲崎町で

夕凪の橋の欄干にカップルが取り付けたチェーンキー=いずれも新潟県出雲崎町で

 国道352号沿いにある「道の駅 越後出雲崎天領の里」の日本海に突き出た海上橋・夕凪(ゆうなぎ)の橋(延長102メートル)は、恋愛スポットにもなっている。橋の欄干にチェーンキーを巻くと愛が成就するという。橋の塗装のたびに除かれても、すぐに増え、現在は1000を超える。

 数え切れないほどのチェーンキーを見ていて、JR出雲崎駅で出会った女性を思い出した。「良寛さんにお礼を言いたいの」-。沖縄・宮古島出身で23歳という女性は日本1周の旅行中、新潟市であった良寛発信イベントで素晴らしい人たちと出会えたのだとか。良寛さんのふるさとは、今も出会いと人の和をつくりだしていた。

 文・写真 松本芳孝

(2013年4月12日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
出雲崎町へは上越新幹線・長岡駅からバスで約1時間。関越自動車道・長岡ICから車で約40分、北陸自動車道・西山ICからは約20分。

◆問い合わせ
出雲崎町観光協会事務局=電0258(78)2291

おすすめ

白雪羹(はくせつこう)

白雪羹(はくせつこう)

★白雪羹(はくせつこう)
良寛が好んだ和菓子。出雲崎町の老舗和菓子店「大黒屋」が、1930(昭和5)年、良寛100回忌に合わせ復元した。原材料は、もち米、水あめなど。11個入り600円。大黒屋=電0258(78)2101

★「道の駅 越後出雲崎天領の里」
出雲崎の繁栄の様子を伝える天領出雲崎時代館、日本石油の最初の本社が置かれるなど日本の石油産業発祥の地だったことを伝える出雲崎石油記念館のほか、物産館やレストランなどを備える。休館日は5、8月を除く毎月第1水曜。時代館・記念館の入館料は高校生以上500円、小中学生400円。電0258(78)4000

★良寛さんを知るための施設
「良寛記念館」(出雲崎町)=電0258(78)2370=は遺墨や関連本などを展示。入館料は大人400円、高校生200円、小中学生100円。「五合庵(あん)」(新潟県燕市)は良寛が40代後半から10年余り定住したとされ、多くの詩歌、書が生まれた。現在の建物は1914(大正3)年に再建された。

甲信越の宿泊情報

一覧

    現在この情報はありません。

甲信越のツアー情報

一覧

    現在この情報はありません。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外