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山鹿市

山鹿市 熊本県 伝統の舞台や老舗、温泉

老舗の店や蔵が立ち並ぶ豊前街道の惣門地区

老舗の店や蔵が立ち並ぶ豊前街道の惣門地区

  ♪山鹿千軒たらいなし よへほ よへほ

 お囃子(はやし)に乗り、踊り手たちが「山鹿灯籠よへほ節」を伝統の芝居小屋「八千代座」の舞台で優美に舞う。頭には和紙でできた金と銀色の「金灯籠」。淡い光が揺れる。金は客人、銀は迎え入れる里人。「よへほ」とは「さあ、酔いなさい」を意味するという。

 熊本県北部の山鹿市は、熊本藩、薩摩藩などの藩主が参勤交代で往来した豊前(ぶぜん)街道の宿場町として発展した。市内の豊前街道の地区を訪ねると、麹(こうじ)屋、造り酒屋などの老舗が軒を連ね、電線は埋設され、地元産石材を生かした歩道を観光客が行き交う。

 街道を北に上ると、江戸時代の芝居小屋の様式を今に伝える国重要文化財・八千代座が鎮座する。幾重にも重なるような屋根瓦と白壁の造りは壮大で、カメラのレンズに収まり切らない。

 明治、大正期の新劇女優・松井須磨子ら往年のスターも上った舞台だが、次第に客足が遠のき昭和40年代、閉鎖された。心を痛めた老人会が「瓦一枚運動」で募金活動を展開。平成の大修復を経て、回り舞台に花道、升席や桟敷席を備えた姿が復活した。2011年、開業100年を迎えた。頭上を開業当時を伝える鮮やかな天井広告やシャンデリアが彩る。

 踊りを披露してくれた山鹿灯籠踊り保存会副会長の石村優子さんは「伝統ある舞台で踊れて身の引き締まる思い。先輩から受け継いだ踊りを、後世に伝えていきたい」と、小中学生の指導にも力を注ぐ。

 
市民の交流の場として親しまれている伝統の温泉「さくら湯」

市民の交流の場として親しまれている伝統の温泉「さくら湯」

 山鹿市は湯の町でもある。十字に交わる瓦屋根と南北玄関の唐破風が特徴の山鹿温泉元湯「さくら湯」も、市民が再建に尽力した。370年の歴史を有し、江戸時代の建築様式を残す浴場としては九州最大級である。地域の交流の場となっていたが、再開発が進み1973(昭和48)年に閉鎖、解体された。

 しかし、解体を惜しんだ市民らが「一口湯主」として募金に協力、昨年再開にこぎつけた。施設を所有する山鹿市の観光課職員、飽本勝徳さんは「50年、100年後を見据え、木材や土壁など極力建て方にこだわった」と話し、文化財登録をも見据えていた。

 山鹿から南下して、熊本県の新水俣駅から肥薩おれんじ鉄道の観光列車「おれんじ食堂」に川内駅(鹿児島県)まで乗車した。沿線の食材で彩られた12の品書きからなる昼御膳をいただいた。

 車体は海を表す青。車内は木のぬくもり。椅子、テーブルは地元産材が使われている。景勝地ではスロー運転。椅子を海側のカウンターに寄せ、車窓の景色を楽しんだ。車内はシャッター音と歓声が響いた。

SL人吉をバックに記念撮影する親子=いずれも熊本県内で

SL人吉をバックに記念撮影する親子=いずれも熊本県内で

 このあと北上。人吉駅(熊本県人吉市)でJR九州の観光列車「SL人吉」に乗り換え、熊本駅へ。白煙を背景に駅ごとに乗客らが記念撮影する。最後尾は過ぎ行く景色を一望できる。客室乗務員の緒方優香さんから「球磨川第一橋梁(きょうりょう)の眺めは格別です」と見どころを教えてもらった。沿線からは手を振る人たちがやまず、思わず表情を緩めて手を振り返した。

 文・写真 保立真克

(2013年4月19日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
山鹿市へは九州新幹線で新玉名駅下車、そこから山鹿バスセンター行きのバスで約50分。熊本空港からもバス便があり約120分。

◆問い合わせ
山鹿温泉観光協会=電0968(43)2952(午前9時から午後6時まで)

おすすめ

ダイニング・カー

ダイニング・カー

★八千代座
見学可。詳細は公式ホームページで。近くには八千代座資料館「夢小蔵」もある。
電0968(44)4004

★さくら湯
午前6時~午前0時、第3水曜休、中学生以上300円など。
電0968(43)3326

★米米惣門ツアー
豊前街道の惣門地区が米で栄えた歴史を今に伝える酒蔵・みそ蔵、米蔵などを約1時間かけ案内する。水曜休み。電0968(43)2952

★おれんじ食堂
肥薩おれんじ鉄道が新八代-川内間で運行。2両編成で全席指定。1号車は「ダイニング・カー」。
新八代-川内の片道は乗車券、座席指定料、飲食代で大人1万2800~1万4600円。
2号車は「リビングカー」で、乗車券に加え座席指定料1400円が必要。
詳細はHPで検索。

★SL人吉
JR九州が熊本-人吉間を金土休日を中心に1日1往復運行。全席指定。
乗車券プラス指定席券800円(子ども半額)。車内販売の「おごっつぉ(ごちそう)弁当」は500円。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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